ご挨拶

第65回 日本脂質生化学会を開催するにあたって


実行委員長 杉本 幸彦


このたび、第65回日本脂質生化学会の実行委員長を仰せつかりました熊本大学・生命科学研究部(薬学系)の杉本です。202368日(木)、9日(金)の両日、熊本市中央区のKKRホテル熊本で開催させていただきます。歴史ある日本脂質生化学会を主催させていただくのはたいへん光栄なことで、その重責を感じています。昨年に引き続き、本大会もオンサイトで開催し、脂質研究の魅力・醍醐味を肌で感じていただけるような会にしたいと考えています。


 熊本での開催は、2004年に堀内正公先生が第46回大会を開催されて以来、19年ぶりとなります。熊本は、海の幸・山の幸に加え、米焼酎や日本酒も美味しいところですので、多くの皆様に是非ご参加いただき、脂質@熊本を満喫いただきたく思います。会場となるKKRホテルは、熊本の中心繁華街にも近く、熊本城を間近に望むことができますので、セッションの合間に勇壮なお城の姿を眺めて疲れた脳を癒していただければと思います。また熊本の玄関口・熊本駅や熊本空港、バスセンターもリニューアルされ、アクセスも良くなりましたので、足を伸ばして初夏の天草や阿蘇を散策されるのもお奨めです。


 さて、本大会の特別講演は、誌上開催となった第62回大会でご講演いただく予定でした梅田眞郷先生(ホロバイオ株式会社・京都大学名誉教授/現会長)にお願いいたしました。「脂質はすごい!脂質研究のこれから–」というタイトルでご講演いただきます。アカデミアから少し離れた立場から、脂質が生命を下支えしている様を壮大なスケールで説き起こしていただけるものと期待しております。また、初日の午後と2日目の午前にそれぞれシンポジウム1と2を企画しました。初日のシンポジウム1は有田誠先生(慶應大・理研)と青木淳賢先生(東大)に「脂質多様性の生物学とリピドームアトラス」というタイトルで企画いただきました。最先端の質量イメージングを用いて脂質分子群の局在を詳らかにすることで、脂質多様性の意義を個体や臓器、細胞レベルから読み解こうとする挑戦的な研究の進歩をご紹介いただきます。シンポジウム2は田口友彦先生(東北大)と末次志郎先生(奈良先端大)に「生体膜脂質組成が規定するタンパク質動態・生理機能」というタイトルで企画いただきました。一分子イメージングや脂質可視化プローブを駆使し、各オルガネラ膜に特異的な脂質分子の偏在がタンパク質の機能発現に果たす役割を解き明かそうとするもので、こちらも先駆的な研究の一端をご紹介いただきます。いずれのシンポジウムも、脂質多様性の役割に対する我々の視野を拡げてくれるものと確信しています。一般演題は15分枠の口頭発表を基本としますが、10分枠のショートトークも設定しますので、是非学生の皆さんも積極的に対面での発表に挑戦してください。また、株式会社島津製作所と株式会社エービー・サイエックスのご支援をいただき、二つのランチョンセミナーを予定しております。


 脂質生化学研究は、世界をリードする日本の得意分野です。実際、脂質メディエーターの産生・受容系や生体膜脂質ダイナミクスに関する研究、リピドミクスや脂質イメージングの解析技術で先駆的な成果を挙げてきました。その結果、疾患との関連性や創薬標的の可能性、機能性食品への応用など新たな展開が期待されています。本学会は、これら脂質研究の基盤を下支えしてきたのみならず、絶えず新しい概念・技術に眼を向け積極的にこれを取り込む役割を果たしてきたものと理解しております。第65回日本脂質生化学会においても、こうした「新しい創造の潮流」を淀みなく未来へと繋げることで生命科学の発展に寄与したいと考えています。

 

多くの学会員の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。