晩秋の候,皆様におかれましては,益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度,光栄にも第25回認知行動療法コロキウムの実行委員長を拝命いたしました。25年度のコロキウムは,新潟の歴史ある弥彦温泉を会場とし,対面形式とWeb配信によるハイブリッド形式にて開催させていただく運びとなりました。開催にあたり,多大なご支援を賜りました学会役員の先生方,そして鋭意準備にご尽力いただいております運営スタッフの皆様に,この場を借りて心より感謝申し上げる次第でございます 。
過去数年間にわたり,国内外でCOVID-19の感染拡大は予断を許さない状況が続き,我々の学術活動も制約を受けざるを得ませんでした。その制約を経て,本年は久しぶりに宿泊を伴うコロキウムを実施できることを,実行委員会一同,心から喜んでおります。コロキウムの伝統である温泉地という非日常的で心身をリラックスさせる環境で交流を深めることは,オンラインでは得難い,偶発的で連続的な対話の機会を生み出します。この共同体の熱量こそが,CBT臨床の深い内省を可能にする土壌となるものと確信しております。
本コロキウムの醍醐味は,皆様が持ち寄る具体的な事例を,多角的なレンズを通して,時に厳しく,時に温かく,見つめ直す共同的なリフレクションのプロセスにあります。我々の目指す学びは,単に事例検討のセッションの時間内に留まるものではありません。宿泊を伴うコロキウム全体,すなわち非形式的な交流の時間も含めたすべてのプロセスが,参加者皆様の臨床実践を深化させる機会として機能するよう準備を行っております。
臨床家が直面する困難は,教科書的な知識では解決できない複雑な現実に潜んでいます。皆様にはぜひ,“スマートな臨床実践“だけでなく,ご自身の実践において行き詰まりを感じている部分,理論と現実の間に生じた「摩擦や齟齬」を,勇気をもって「問い」として言語化し,この場に持ち込んでいただきたいと存じます。自己の臨床的バイアスを意識的に露呈させ,多角的な検討を受けるこのプロセスこそが,プロフェッショナルとしての成長を促す責任と特権であると信じます。
参加されるすべての皆様にとって,このコロキウムが,今後の実践の指針となるような有意義な会であったと振り返っていただけるよう,運営側は鋭意準備を進めております 。
皆様のご参加を準備委員会一同,こころよりお待ちしております。
新潟大学 田中恒彦