日本列島は今から1500万年以上前(古第三紀~新第三紀)に.日本海拡大(日本海の形成)と共にアジア大陸から分断しました.
その時,今の日本列島では一体何が起こっていたのか?
なぜ日本海拡大が起こり,大陸から離れて今の島国になったのか?
大地の移動とともに発生した活発な火山活動,劇的な大地の沈降と隆起など,激変の時代の歴史を紐解いています.
その時代の地層・堆積物を調べることで,その土地の詳細な地史(大地の歴史),具体的には火山活動,堆積環境,応力などを復元,推定することができ,その変遷を知ることができます.
「野外地質調査」「地質図の作成」を基本として,主に以下のような研究に取り組んでいます.
火成岩・堆積岩の複合層の層序構築
いわゆるグリーンタフと呼ばれる日本海拡大期の地層は火成岩と堆積岩が複雑に入り組んで分布しており,層序構築のためにはその両方をきちんと調べる必要があります.岩相の側方変化も激しく,その上変質作用を被っていることから,層序構築は簡単ではありません.(最近の成果:Hosoi et al., 2020; 細井ほか, 2019など)
古火山体・火山活動の復元
日本海拡大時には主に海底下で活発な火山活動が生じていました.その火山活動はどのような火山活動だったのか.火山体の規模や噴火メカニズム,マグマの変遷を検討しています.特に海底火山活動は現世の火山活動でも観察が困難なため,過去の海底火山活動の推定はその手がかりになります.(最近の成果:Hosoi and Amano, 2017; 細井ほか,2017など)
堆積盆の復元
盆地の形成・発達史を検討しています.日本海拡大時には地表付近で様々な堆積盆が形成されたと考えられていますが,その実体(いつ,どこに,どの規模で,どのように形成・発達したか)は殆ど分かっていません.地表地質調査でその実体解明を目指しています.(最近の成果:Hosoi et al., 2023; 細井・天野, 2013など)
日本海拡大時の回転運動の検討
日本海拡大時には大地が回転したことが知られています.しかしそのメカニズムには諸説あります.いつ,どこで,どの程度回転が起こったのかを調べ,その回転運動の要因について検討しています.(最近の成果:Hosoi et al., 2023; Hosoi et al, 2015など)
古応力変遷史
大地には力が加わっており,その応力によって地表の断層運動や隆起沈降運動,火山活動,テクトニクスは左右されます.日本海拡大時には大地にどのような力が加わっていたのかを検討しています.古応力を調べることはテクトニクス解明の手がかりになります.(最近の成果:Hosoi et al., 2021; 細井ほか, 2021など)
グリーンタフの岩相と物性の関係調査
(工事中)
↑日本三名瀑の一つ,袋田の滝.この滝は実は1600万年前頃の海底火山の断面.
野外地質調査をベースに,以下のような手法を駆使しています.
堆積相(岩相)解析 岩石の特徴から形成(堆積)メカニズムを検討.その分布から古火山活動や堆積環境を推定.
古地磁気・岩石磁気測定 大地の回転運動の調査.古流向の推定,年代層序構築などに役立つ.
火山岩化学組成分析 マグマ組成に基づいて対比のツールとして.また,マグマの起源についても検討.
古応力解析 日本海拡大に伴った当時の古応力変遷を推定.
放射年代測定 岩石の形成年代と被熱履歴を検討.
岩石物性測定 空隙率や透水率などの物性を調査.岩相毎の差異を検討.
岩手県西和賀町周辺…卒論,修論のフィールド.火山活動と堆積環境の変遷,また回転運動を検出し,テクトニクスを議論.
山形県酒田市周辺…博士後期課程の新たなフィールド.苦鉄質火山活動の噴火スタイルを解明.古応力を解析中.
茨城県大子町周辺...中新世の棚倉断層の運動と火山活動,回転運動,古応力の関係を検討中.5万分の1地質図幅作成中
秋田県角館町周辺…層序再構築,5万分の1地質図幅を作成.