2026年1月6日から9日まで、書字レディネスのアセスメント、WRITIC(Writing Readiness Inventory Tool In Context) 国際共同研究の日本版開発メンバーとして,伊藤祐子、山西葉子、客員研究員のDini Fajariani、助川文子(県立広島大学)、以上4名でオランダ王国のAmsterdam University of Applied Sciences(以下、AUAS)に訪問し、WRITIC開発者であるDr. Margo van Hartingsveldtと言語翻訳プロジェクト指導者のLiesbeth de Vries氏と共に、研究会議を行いました。
会議ではWRITCのアセスメント開発背景、WRTICの概要、他国での翻訳プロセスの説明を受け、ディスカッションを行いました。書字レディネスのアセスメントは、子どもが本格的に書字を学ぶ段階で、書くことの困難さに直面し、自己肯定感が下がることを予防して、個々に適したサポートにつなげるために重要な役割を果たします。
日本語化にあたり、日本語はひらがな、カタカナ、漢字といった3種の文字を扱うため、日本の文脈に応じたWRITIC原版と調整が重要となるため、この点について「Selecting Hiragana Items for WRITIC-JP」として、Dini Fajarianiが中心となり準備した、「日本のひらがなアセスメントに関するスコーピングレビュー」を元に、日本の書字学習の開始年齢について、園や学校の学ぶ環境や文脈について双方の国の状況について情報交換を実施し、ディスカッションも踏まえて、日本版WRITICで用いる模写に用いる文字選択を検討しました。
そして東京都立大学とAUASの学部間教育の共同プロジェクトのため、AUASからDr. Margo van HartingsveldtとDr. Margriet Polが、そして都立大学より伊藤祐子と山西葉子が参加し、学部卒業研究の共同プロジェクトについて、互いの教員の研究領域、テーマ、実施可能な時期について情報交換を実施しました。卒業研究の開始時期をAUASとTMUの卒業研究の時期と重ね、学生交流のための予算の獲得についてはErusmusや他の助成金も含めて検討を続けること。高齢者、地域実践、Assistive technology関連をテーマに都立大学教員の確認・調整を行い、共同する教育実践のシステム作りを今後も継続して検討することになりました。
<隣接する大学病院の見学>
病院に勤務するOTから説明を受けることができました。
病院は外来、入院と大きなビルディングがつながっており、小児専属OTが5名、そのほか10名のOTが大学病院に勤務していました。小児病棟は1名1室での入院となっていました。院内学級の設置や、子どもが遊び親子で過ごせるPlay spaceは、日本の大学病院と似ています。また、寄付を受け付ける専用デスクがあり、様々な寄付を受けていました。地元のサッカーチームが毎年表敬訪問を行っており、サッカーチームにより設置されたスペースなどもありました。
OTからは救急病院であるため、「生活につなげることの困難さ」を感じつつ行っていることが述べられましたが、これは日本も同様で、日本の大学病院でのNICUでのOT実践、リハビリテーションの実際についての情報交換を行いました。
<公立の初等教育学校、Joop en Willy Westerweelschoolの見学>
Heleen Hop氏(Deputy Director and Care Coordination)にご案内いただき、校内を見学しました。オランダはbasis school:初等教育課程が8 年間(4~12歳)であり、日本の幼稚園の2年間、小学校6年間が合わさった教育課程に該当します。同じ敷地内にあり、フロアが異なっていた幼児クラスは、「遊び」を重視していました。また教室内はTEACCHプログラムのように、「遊び」、「学び」など活動ごとに構造化された空間、情報提示がされています。
幼稚園はグループごとに着席して活動する日本の典型的な形態とは異なり、教諭の周りに子どもが集まっていたり、好きな遊びを選択して友達と過ごしたりなど多様な参加スタイルでした。小学校は各クラス18人程度のクラス編成と人数が圧倒的に日本とは異なっています。様々な人種の児童がともに学びあっており、中には全体から離れて本を読んで過ごしている児童もいましたが、それも認めた形で授業が実施されていました。教師の問いかけとともに児童が答え、手を挙げて反応を示すなど、日本と同じ雰囲気もありました。宿題は無く、Artの授業もとても大切にされています。フロアごとには図書コーナーがあり、様々な壁や空間にArt作品が展示されており、子どもの居場所となりえる場所がごく自然な形で設けられていました。
オランダでは初等教育終了を前に試験を受け、その結果を踏まえて3つの道を選択するとのことで、中等教育(voortgezet onderwijs)は、大学進学教育(VWO)、上級一般中等教育(HAVO)、中等職業訓練教育(VMVO)の3つから成るとのことです。
<OT臨床Kinderpraktijk Op Stapの見学>
Nuria Hoogland氏(作業療法士)の案内により、施設見学と実践の説明を受けました。
作業療法士が設置した地域ベースの施設です。0歳から18歳までの子どもたち、その親、保護者、教師に焦点を当て、OTスタッフが6人、心理1名が所属しています。施設での介入以外に家庭訪問、学校での実践を重視しており、様々な学校に訪問されているそうです。支援方略は、地域で子供が生活する場での自立した生活のために、sensory information processing、CO-OP アプローチ、巧緻動作への支援とワーキングメモリへの支援を軸に行っていました。他にアムステルダム市内にもう1施設あり、もう1か所は家庭訪問と学校のみで実施しているそうです。支援をうけるための医療機関の紹介や、医師の診断書は不要で、年間10時間までは保険でカバーされており、それ以上の支援は保護者が支払う制度になっていとのこと。この施設で作成された著書「FIGN‼」を贈っていただきました。この書籍は初等教育1~3の教師向けに書かれており、微細運動、書字の準備スキルなどに関する理論的知識とスキル、様々なアクティビティの例を提供しています。今後日本でも参考になる非常に充実した内容でした。