サガノミジンツボという「幻の」地下水棲貝類がいます。
記載論文を見てみましょう(黒田徳米, 波部忠重.1956. 日本の洞窟並に地下水産巻貝類. 貝類學雜誌ヴヰナス. 19 (3-4): 183-196.)。
「之等を採集するためには(井戸の)ポンプ数千回の手押しを急速に且つ不休の汲出しと細心の注意を以って行い, 水をプランクトン・ネットで受けて, いよいよ最後的の段階に入り, 水が少くなり, 所謂水あかが上るようになって, 初めてその姿を現わすものだそうで, 要するに之は並大抵の努力では無い. 」
この文章だけでも本種が「幻」たる由縁が分かるのではないでしょうか。
今回はいそこじきメンバーの一人が模式産地近くの井戸を持つ方と知り合いであり、井戸の調査をさせて頂けるとのことで、幻の貝を探すべく嵯峨野へと行ってきました。
井戸です。自動化されているため手で漕ぐ必要はなく、蛇口をひねると井戸水が出てきます。
以前は飲み水として使っていたものの、現在では庭木の水やり程度にしか用いていないとのことでした。しばらく水を流して、プランクトンネットで受けてみることにします。
水を流している間に、他の地点を見てみます。付近に湧水の見られる地点があるとのことで行ってみました。
谷底が林道になっており、細い流れが見られましたが、湧水そのものは見つけられませんでした。
流れの砂中にはマメシジミが見られました。かわいいですね。
谷の斜面にはミジンヤマタニシがたくさんいました。かわいいですね。
朽木にいた生き物。ハナサナギタケの仲間とヒサゴゴミムシダマシの仲間でしょうか。
井戸に戻ります。
うーん...
外から紛れ込んだ生き物の痕跡しか見られませんでした。幻の貝はいずこ...
井戸の持ち主の方にお礼を言って帰りました。
今後は他の井戸水も巡ってみる予定で、既に次の井戸には目星をつけているそうです。
これからの成果に期待ですね。
参加してくださった皆様ありがとうございました。また、井戸の調査を許可してくださった持ち主の方に深謝いたします。
(おまけ)
解散後に時間があったので、知り合いから教えてもらった水路を覗いてきました。
こんな場所です。いい素掘り感。
カタハガイ、ニセマツカサガイがいました。生体も多数見られて、良い場所でした。
おわり