一般に海洋生物といえば魚やウミウシなど、肉眼で発見・観察が容易な生き物たちのことを思い浮かべる方が多いかと思います。
ですが、海洋の生物多様性はそれだけには留まりません。砂浜や海底の砂泥中には様々な小型の生物が生息しており、彼らは総称してメイオベントス(meiobenthos)と呼ばれます*。メイオベントスには様々な動物門の生物が含まれており、海洋の生物多様性について理解を深めるためには、メイオファウナについて知ることは欠かせないと言えます。
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* 一般的には、1 mmの篩をすり抜け,32–63 μmの篩に留まるサイズのものを指すことが多いようです(山崎 博史, 藤本 心太, 田中 隼人. 2019. 海産メイオベントス(小型底生動物)の採集および抽出方法. タクサ:日本動物分類学会誌 46: 49-53.)。
というわけで、メイオベントスを探すべく我々は白浜へと赴くのでした。
早速海岸の砂をバケツに少しとり、実験所に持って帰って洗い出しを行います。今回はバケツ中で撹拌した海水の上澄みをフィルターで漉しとり、濾過面を洗瓶で洗い流すことで抽出を行いました。
実体顕微鏡で覗いてみると...
貝型虫の一種
ソコミジンコの一種
線形動物の一種
イタチムシの一種
けっこう色々見られました。イタチムシの仲間(腹毛動物門)が見られたのが嬉しい。
今回洗い出しに使った道具を備忘録として。フィルターはコーヒーを淹れるのに使うやつです。洗瓶は先端を切って調整できるタイプのドレッシングボトル。口が曲がってない方が使いやすいかも。漏斗は引っ掛けるところがあるのが便利でした(バケツの縁に引っ掛けられるため)。
やり方は漏斗にフィルターを載せて海水濾過、洗瓶を使ってフィルター内に残ったものを容器内に洗い流す...といった感じ。簡便法ですが、この方法で思いのほか上手く集まりました。
そうこうしているうちに夜になりました。この日のもう一つの目的である夜磯に向かいます。
磯にシラヒゲウニが鎮座していました。カラフルで綺麗。潮間帯で見かけるのは珍しいですね。
ツメナリミヤコドリ。転石裏にたくさんいます。
赤いのは軟体部の色彩であり、殻は白色をしています。
ヒメホウキムシ!寄生性の種が有名な箒虫動物門のなかで、数少ない非寄生性種です。こんな感じで生息しているんですね。
生物を観察しながら、メイオベントスのいそうな砂を集めたり転石の洗い出しをしたりしました。
実験所に戻って砂からメイオベントスを探します。
オビムシの仲間?
扁形動物の一種
多毛類の一種
繊毛虫の一種?
珍無腸動物の一種?
トゲカワムシの一種
門レベルでよく分からない生物がたくさんいます。トゲカワムシ(動吻動物門)や珍無腸が見られたのが嬉しい。
メイオファウナへの理解が深まりますね!!
転石洗い出しの成果です。この中から生物を拾い出していきます。
こんな感じで色々見られました。あまり見かけない種類がいろいろ混じります。カラスキセワタがかわいい。
最後はスズコケムシ。
自分から知ろうとしなければ一生知ることができないような生き物がたくさんいる中で、そんな生き物たちと出会ったり、その生活を垣間見たりできたときは、海の生き物をやっていてよかったと思える瞬間でもあります。
これからもいろいろな海の生き物を追いかけていきたいものです。
おわり