研究概要
研究目的
本研究の目的は、維新政権期(慶応4年=1868戊辰戦争から明治4年=1871廃藩置県まで)の官版日誌類を中心とした木版刊行物を対象とする学際的な共同研究によって史料学を精密化するとともに、当該期の政治および社会文化的な構造を実証的に解明することにある。研究はつぎの観点から進める。
(1)現地合同調査を実施し、あわせて木版刊行物の作成・流通・蓄積の様態を捉える。
(2)慶応4年・明治元年刊行分の『太政官日誌』に同年の官版日誌類、および戊辰戦争終了後の戦後処理期間である明治2年分の『太政官日誌』を加えた本文フルテキスト化横断検索プロジェクトに取り組む。
(3)定例研究会を年2回、オンラインTV研究会を実施して、研究活動を進める。
(4)現地調査報告書および研究論文について研究完了時をまたずにWEB公開(オープンアクセス)し、またアウトリーチ活動をおこない、学術研究に資する研究基盤を提供する。
研究計画
研究は3つの部門を並走させて進める。各部門の本年度の研究実施計画は以下のとおりである。
<現地調査部門>
維新政権期の木版刊行物は日本国内322機関に散在している。これまでの経験から複数の目で観察し議論を重ねることが、本研究では不可欠であると認められる。そのため、年2回の現地合同調査を実施する。
本年度は遠隔地では秋田県公文書館、東京都内では早稲田大学図書館(中御門家史料)を優先して調査する。それは東北諸藩を重視するためである。また中御門経之は維新政府の中枢にいた人物であり、政体書官制時代は会計官知事を務めているためである。なお、どちらも昨年度中に事前調査を終えている。現地調査の実施後は、速やかに報告書を作成して、コミュニケーション・ツールによって検証し、のち定期的にWEB上で公開する。
<官版日誌類フルテキスト化横断検索プロジェクト部門>
慶応4年・明治元年刊行文の『太政官日誌』については内部検証ののちオープンデータ化を終了していることから、同年の官版日誌(『江城日誌』『鎮台日誌』『鎮将府日誌』『東京城日誌』)、明治2年刊行分の『太政官日誌』(京都版)の本文のフルテキスト化横断検索プロジェクトを推進する。明治2年を加えるのは同年5月に終結する戊辰戦争の情報は同年末まで収載され、戦況情報の提供、新秩序の形成という木版刊行物のメディア機能の第一段階に位置づけられるためである。なお、この作業は集中的に進める必要があるため、基礎データ作成は業者に委託し、3カ年で完了する。再校作業は本科研メンバー7名で分担する。
<研究共有部門>
研究会を東京でおこない、討論の場を設けて、研究の進捗をはかる。第1回夏は研究計画と分担の確定、第2回春は研究結果の評価と次年度研究計画の策定をおこなう。研究協力者山田英明のために旅費を用意する。またクラウドサービスを利用してオンラインTV研究会を実施し、研究の中間評価や史料講読会をおこなう。
3部門すべてに関わるオープンサイエンス・オープンデータと推進のためのネットワーク構築のため、マネジメントや科研用報告サイト構築管理に関する専門的な知識を有する研究者に総括を依頼する。
データマネジメントプランについて
英国芸術・人文リサーチカウンシル:データマネジメントプラン(Arts and Humanities Research Council(AHRC)Data Management Plan
https://ahrc.ukri.org/documents/guides/data-management-plan/(2020年7月10日参照、下記p4以下) をもとにして、本研究のデータマネジメントプランを作成しています。