・深谷 友宏(東京都立大学)粗凸空間とその理想境界
講演者は尾國新一氏(愛媛大)との共同研究にて、単連結な非正曲率リーマン多様体の粗幾何学(空間を遠くから眺めた時に見える構造に着目した幾何学)における類似物である、粗凸空間を導入し、その理想境界(無限遠境界)を構成した。Cartan-Hadamardの定理により、単連結非正曲率リーマン多様体の理想境界は常に球面になるが、粗凸空間の理想境界はより複雑な空間になり得る。さて、しばしば距離空間の粗幾何学的情報は、その境界に織り込まれていることがある。実際に、固有な粗凸空間の粗ホモロジーは、境界のホモロジーと同型になる。この結果にHigson-Roeによる指数定理の研究を適用することにより、粗凸空間上の「Dirac型作用素」の指数を、理想境界のホモロジーを用いて分類することができる。