法、消費、医療、メディアなど、社会のさまざまな場面において、人がどのように判断し、他者や人工知能、社会制度と関わるのかに関心を持っています。人の意思決定は、個人の価値観や感情だけでなく、他者との関係、情報の伝えられ方、人工知能との相互作用、社会的な規範や制度によっても形づくられます。こうした視点から、以下のプロジェクトに取り組んでいます。
消費者の選択は、価格や性能だけでなく、企業や製品に対する信頼、倫理的価値、他者との関係によっても左右されます。本プロジェクトでは、消費者が何を重視して意思決定を行い、その選択が他者との関係にどのような影響をもたらすのかを検討しています。
特に、AIアシスタントの性能や透明性、環境負荷が消費者の選好に与える影響(Ioku, Song, & Watamura, 2024)や、贈り物の選択にAIを利用することが贈り手と受け手の心理に及ぼす影響(井奥・綿村, 2026)について研究してきました。また、SNS上で否定的なクチコミを発信する背景にある利他的な動機についても研究しています(Ioku et al., 2027, in press)。最近では、オンライン上の会話において、人々の表現やコミュニケーションの形式が相互作用を通じてどのように近づいていくのかについても、大規模なソーシャルメディアデータとサーベイ実験を用いて研究しています。
人は、犯罪に対する刑罰の重さをどのように決め、その判断をどのような理由によって正当化するのでしょうか。本プロジェクトは人々が犯罪や加害者をどのように認識し、その認識が刑罰や司法制度に対する判断にどのような影響をもたらすのかを検討しています。
例えば、応報、隔離、抑止、更生といった刑罰の目的が量刑判断に与える影響や、裁判官と一般市民の判断の違いについて研究してきました(Watamura, Ioku, & Wakebe, 2022; Watamura, Wakebe, & Ioku, 2022; Watamura & Ioku, 2022)。また、死刑制度に対する態度や冤罪の許容、懲罰的態度の文化差についても検討しています(Watamura, Ioku, & Mukai, 2023; Watamura & Ioku, 2023; Mukai et al., 2025)。さらに、児童虐待の兆候に対する一般市民の認識や通告判断(Ioku et al., 2025; 井奥ほか, 2025)、児童虐待事案における被告人の性別や性役割態度が量刑判断に及ぼす影響についても研究しています(向井ほか, 2024a; 向井ほか, 2024b)。
医療の場面では、将来の治療や人生の最終段階について、本人の価値観をどのように意思決定へ反映するかが重要な課題となります。本プロジェクトの主たる問いは、人々が人生の最終段階における医療やケアについてどのように考え、その意思決定がどのような心理的・社会的要因によって方向づけられるのかです。
これまでの研究では、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に対する人々の準備状態や、将来の医療・ケアについての話し合いを促進・抑制する要因について検討してきました(Watamura et al., 2026)。また、安楽死の合法化がもたらす安心と不安(Watamura, Ioku, & Yamamoto, 2025)や、他者への負担感や死に対する態度が安楽死の選択意向に及ぼす影響についても研究しています(井奥・綿村, 2025)。さらに、文化的な価値観だけでは説明できない、安楽死の態度基盤についても国際的な視点から検討しています(Watamura, Hunt, & Ioku, 2025)。
人々の態度や行動は、他者との関係や、情報がどのように伝えられ、受け止められるかによって左右されます。このプロジェクトは、人々が他者や社会をどのように認識し、その認識が対人関係や社会的判断、コミュニケーションにどのような影響をもたらすのかについて検討しています。
特に、自分たちが相手から理解されているという感覚が、他者への態度、感情、行動に及ぼす影響について研究してきました(Ioku & Watamura, 2022a; Ioku & Watamura, 2022b; Ioku & Watamura, 2024a)。また、少年事件における実名報道への支持や、実名の公表が少年に対する差別や社会的評価に及ぼす影響についても検討しています(Watamura & Ioku, 2023a; Watamura & Ioku, 2023b)。
人工知能は、情報を処理するための技術にとどまらず、人が判断を委ね、信頼し、ときには社会的な相手として関わる存在になりつつあります。本プロジェクトでは、人々がAIの能力や判断をどのように認識し、その認識がAIへの信頼や受容、人間の意思決定にどのような影響をもたらすのかについて検討しています。
例えば、AI裁判官に対する信頼と受容において共感性が果たす役割(Watamura et al., 2023)や、人間の裁判官とAIによる判断が市民の量刑判断に及ぼす影響について研究してきました(Watamura, Liu, & Ioku, 2025)。また、AIの性能、透明性、環境負荷が消費者の選好に与える影響(Ioku, Song, & Watamura, 2024)や、AIに選択を委ねることが人間関係に及ぼす影響についても検討しています(井奥・綿村, 2026)。さらに、高等教育における生成AIの受容と活用にも研究関心を広げています。大学の生成AIガイドラインにおけるAIの位置づけ(Ioku, Kondo, & Watanabe, 2024a)や、AIの能力と限界に対する人々の認識について研究してきました(Ioku, Kondo, & Watanabe, 2024b)。