(8:45頃開場,9:00- Opening)
9:20- 9:40 大薗 博記(鹿児島大学) 「正常性バイアスによる説明」の“正しさ”を疑う
9:40-10:00 長谷 和久(山口大学) 損失回避は実験室でつくられたアーティファクトなのか?損失回避の実在性を問う
10:00-10:20 松井 大 (大阪大学人間科学研究科) 刺激-反応型の行動なんてあるんだろうか
10:30-10:50 国里 愛彦(専修大学) 計算論的個性記述学
10:50-11:10 岩田 和也(関西学院大学) 見かけ上の分断発生メカニズム:エージェント・シミュレーションによる検討(共同研究者:清水 裕士(関西学院大学))
11:10-11:30 東 叶世(奈良女子大学) 人は他者の助言を割り引くのか:ベイジアン統計モデルを用いた分析(共同研究者:竹澤 正哲(北海道大学))
11:30-12:00 矢羽田 歩(九州大学 五感応用デバイス研究開発センター) 風味デジタル化技術を駆使したコーヒーのおいしさの可視化に向けた試み(共同研究者:外山 友美子(九州大学五感応用デバイス研究開発センター),木村 俊輔(中村学園大学栄養科学部),吉水 請子・堺 武司・安藤 芳行・秋本 紘昴・秋本 修治(極東ファディ株式会社),山田 祐樹(九州大学基幹教育院),力武 知嗣(九州大学五感応用デバイス研究開発センター),田中 充(九州大学大学院農学研究院),松井 利郎(九州大学大学院農学研究院・五感応用デバイス研究開発センター),志堂寺 和則(九州大学大学院システム情報科学研究院・五感応用デバイス研究開発センター))
13:30-13:50 田﨑 希実(奈良女子大学) 固定的知能観は、なぜ形成されるのか?―信念更新プロセスの検証手法の提案― (共同研究者:竹橋 洋毅(奈良女子大学))
13:50-14:10 篠原 美里(奈良女子大学) 対立を乗り越えるにはどうしたらよいか?-非ゼロサム信念に着目して-(共同研究者:竹橋 洋毅(奈良女子大学))
14:10-14:30 残華 雅子(京都橘大学) 他者観察を通じた幼児のジェンダー規範学習:大人のフィードバックの性差に着目して
14:45-15:05 清水 裕士(関西学院大学) 心理学と因果推論
15:05-15:25 工藤 大介(東北学院大学) お前も生成AIで心理尺度を作らないか?(共同研究者:李楊(東北学院大学))
15:25-15:45 橘 亮輔(産業技術総合研究所) 小鳥研究者、人のリズム能力研究に挑む
15:45-16:05 原田 悦子(筑波大学/(株)イデアラボ) 空間が人にもたらすもの,あるいは情報技術が我々に課していること
16:20-16:40 山本 仁志(立正大学経営学部) 寛容な統合互恵がノイズ環境下で協力を持続させる
16:40-17:00 七條 花恋(九州大学芸術工学府) 共創時音声コミュニケーションの特徴の分析(共同研究者:Quentin Ehkirch(北海道大学)・松前あかね(九州大学))
17:00-17:20 荷方 邦夫(金沢美術工芸大学) 編集委員長うお〜!左往
18:00-20:00 交流会
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正常性バイアスは、災害時の避難の遅れを説明する要因としてしばしば言及されている。しかし、災害後のポストホックな説明にとどまっている場合が多く、また、リスクの過大視という逆の傾向との境界条件が曖昧であるなど、科学的な“正しさ”には疑問がある。一方で、「一般に理解されやすい説明によって避難が促されるならば有用である」と、実践的な“正しさ”が主張されるかもしれない。本研究では、「エラー管理(たとえ発生確率が低くても、起きた場合の被害が甚大なら避難すべき)」という代替説明と比較して、どちらの方が避難を促すかを、シナリオ実験により検証した。その結果、「警報が外れた経験による、その後の避難行動の減衰(いわゆる「オオカミ少年効果」)」は、正常性バイアスによる説明の方がエラー管理による説明よりも生じやすいことがわかった。これらを踏まえて、安易に正常性バイアスによる説明を用いることの問題性を議論したい。
損失回避(loss aversion)は、行動経済学の礎となったプロスペクト理論の主要な構成要素である。授かり効果や埋没費用効果、現状維持バイアスなど、多様な心理的バイアスの背景メカニズムとして想定される、人間の基本的な価値判断の特徴であるとされてきた。このため心理学および行動経済学では、損失回避が疑う余地のない頑健な現象であるという前提のもと、説得的コミュニケーション研究や意思決定研究が展開されてきた。しかしながら、2010年以降の実証研究では、頑健とされてきた損失回避の実在性に対して疑問を呈する知見が相次いで報告されている。実験手法の精緻化や再現性検証により、損失回避という現象自体が存在しない可能性すら示唆されている。本発表では、これらの最新研究を概観したうえで、発表者自身の実証研究を紹介し、損失回避と呼ばれる現象が本当に存在するのか、その実在性について議論を行う。
心理学者は刺激と反応という言葉をやたらと使う。実験参加者や動物に「刺激-反応」学習を施すこともあれば、「それはただの刺激-反応の行動だよ」と他人の研究を腐す用途にも使う。実に便利な言葉である。しかし実際には、刺激-反応型だと思われている行動の大部分は、単に貧弱な環境に有機体を置いて、行動を刺激-反応型にしているだけなんじゃないか。これはトリビアルな話ではないと思う。従来、機械的で固着的な行動であると見なされてきたものについて、必ずしもそうではないことが報告されているからだ。これらの報告は、いろんな種、いろんな行動現象において見られるが、俺たちが「心」だと思っているものがなんなのかを考える上でもそれなりに重要な意味をもつだろう。そこで今回の発表では、私自身の研究も交えながら、刺激と反応について一度立ち止まって、みんなにも考えてもらうことにする。
私は計算論的精神医学に関心を持って取り組んできたが、自らの関心をさらに深める中で、計算論的アプローチを用いた個性記述に行き着いた。暫定的に計算論的個性記述学と呼びたい。計算論的個性記述学では、Allport(1937, 詫摩他訳,1982)が提唱した「個人の内部で、環境への特有な適応を決定するような、精神物理学的体系の力動的機構」を数理モデルで探求する。これは、多くの人に共通する「ものさし」の上で個性を測るのではなく、その人ならではの個人特性や個人内の心理的な構成要素の相互作用から個性を理解しようとする試みである。本研究では、このアプローチによって個人の独自性を捉えつつ、そこから得られた知見をどのように一般化できるのかを議論したい。
社会的分断が世界各地で深刻化しつつある。その一方で、実際には分断していない場合でも、極の意見(たとえば極右、極左など)がより目立つことで、あたかも分断しているかのように見える「見かけ上の分断」の存在が指摘されている。本研究は、①見かけ上の分断の発生メカニズム、②見かけが本当の分断に移行する条件、③分断を解消する介入法について、エージェント・シミュレーションを用いて検討する。シミュレーションの結果、自分より態度強度が強い相手に対して発言を控える「態度の格差効果」によって見かけ上の分断が生じ、そこで形成された意見分布を認識し意見表明の有無が決定されることで本当の分断が生じることが明らかになった。また、格差効果の緩和によって、見かけ上の分断が緩和されることが示唆された。
私たちは日常生活で、出来事がいつ起きるか、どの程度の影響があるかなど、正確には分からない事柄を推定し判断している。こうした状況では、自身の判断に加え、他者の判断や助言など社会的情報を統合することで、より正確な判断が可能となる。だが人々は、理論的に予測される最適な重みづけよりも、他者の助言を割り引き自身の意見を過度に重視する傾向がある—自己中心的割引(egocentric discounting)と呼ばれる現象である(Yaniv & Kleinberger, 2000)。本研究では、数量的判断課題における情報統合のモデルとして、社会的判断スキームモデル(Social Judgment Scheme Model)に着目する。そして、情報統合における自己中心的割引を表現するために、SJSモデルを改変した新たなモデルを構築した(SW-SJSモデル)。実験データにSW-SJSモデルをフィッティングすることで、複数の社会的情報の統合過程と判断への影響を検討した。
本研究では、食品の風味を味や香りの情報としてデジタル化し、ヒトの官能評価をAIで再現・代替する「AI官能評価技術」を構築する。発表者らが開発した新しい分析技術により、食品中の多様な成分を一度に検出し、風味を数値情報として記録できる。従来、プロによる官能評価はおいしさの判断に不可欠であるが、評価者の感度や経験に依存し、おいしさの客観評価・数値化・可視化は現状不可能であった。そこで本研究では、これまでにない網羅性をもつ風味デジタル化技術とAIを組み合わせ、官能評価を代替し、個人のおいしさ知覚に対する心理的・生理的・社会的因子の影響の解析と予測アルゴリズムの構築を目指す。まず嗜好品の一つであるコーヒーを対象に、おいしさの要因の一つ「クリーンさ」に着目し、AIによる識別モデルを通して、感性と化学情報を結ぶ新たな食嗜好評価の理解へ挑戦する。
人は様々な場面で困難に直面する。困難へのしなやかな対処を支える心理の解明として、能力の可変性についての信念である「暗黙の知能観」についての研究が蓄積されてきた。能力を生得的とする固定的知能観は、困難への無力感に影響を及ぼすことが示されている。しかし、そもそも固定的知能観がどのように形成されるのかについては明らかにされていない。そこで、本研究では固定的知能観の形成過程について検証が進まなかった背景を多角的に考察する。そしてそれらを踏まえ、自由記述調査(研究1)、「繰り返される失敗」「失敗時の他者の存在」に着目した場面想定法による質問紙実験(研究2)を用いた新たな信念変容プロセスの検証手法を提案する。
「ある人が得をしたら、他の人は損をする」という資源の有限性についての信念はゼロサム信念と呼ばれ、近年、対人・集団の対立に影響を及ぼす先行要因として注目されている。しかし、ゼロサム信念を弱めることで葛藤解消しうるかは未検討であり、ゼロサム信念を弱める要因の検討は重要である。ゼロサム信念は自動的プロセスとして位置づけられ、変化させることが難しいことが指摘されていることも踏まえ、本研究は「非ゼロサム信念」に着目する。先行研究では、資源のゼロサム性をどれほど信じるかの程度が測定されてきたが、それが低い非ゼロサム信念が具体的にどのような認知であるかは捉えていない。非ゼロサムには「双方が得をする」というポジティブサムが想定されるが、非ゼロサムの具体を調べることで、ゼロサム信念低減のためのアプローチの示唆が得られる可能性がある。本研究は、非ゼロサム信念の全容を探ることを目的とし、ゼロサム信念を信じていない状態とは何かを調べる自由記述調査を行い、記述を分類することで、非ゼロサム信念の具体を記述する。
幼児は早期のうちから環境を通し、どの玩具が「男の子向け」か「女の子向け」かを学習する。そして、自分の性別にとって適切とされる玩具を選好し、頻繁に遊ぶようになっていく。このような玩具のジェンダー規範学習を促す環境手掛かりとして、これまでの研究では言語ラベル付けやジェンダーカラーの影響が注目されてきた。これに対して本研究では、他の幼児に対して大人が性別によって異なる反応を示す場面を観察することが、観察者である幼児自身のジェンダー規範学習に影響するか検討することを目的とした。たとえば、ある男児が新奇の玩具で遊んだ際に大人が否定的な反応を示し、同じ玩具で遊ぶ女児に対しては肯定的な反応を示す場面を見た場合、観察者である幼児が「その玩具は女の子だけが遊ぶものだ」と学習するかどうかについて検討を行った。本発表では、オンライン調査を通じて行った一連の研究結果を報告する。
いま社会科学を中心として因果推論が重視されている。もちろん心理学でも実験による因果推論が長く行われてきた。ただ、心理学では単に因果効果の推定だけを目的としているのではなく、その因果関係について心という観点からの説明も同時に行われているという特徴がある。また、因果推論の条件を満たしていない場合でも、とりあえず説明することを目的とした分析(特に調査系の研究)が行われることも少なくない。その研究実践について、心理学者は十分正当化を行えていない可能性がある。本発表では、心理学における因果と説明をどのように理解したらいいのかについて発表者の考えをお話したい。
皆さんは心理尺度を作成したことはあるだろうか?自分は実験系だとか,新しい構成概念作ってんじゃねえタコが!といった意見は一旦横に置かせてもらいたい。心理尺度を一から作成するとなると,文献調査や今(2025年)炎上している質的調査,そしてブレーンストーミング等やたらめったら手間がかかって仕方のないものである。そこで一つの光明となりうるのが生成AIである。生成AIに構成概念を概説する論文を学習させ,尺度項目を作成させるという算段である。実際作成してみると100個の項目案など3分もかからず作成される。妥当性についても,構成概念妥当性,基準関連妥当性,再検査妥当性と良好なものであった。以上より,本発表では生成AIと研究の新しい可能性について議論していく。
小鳥の歌のリズム制御を研究してきた立場から、人間の発話とリズム能力の関係に取り組んでいる。小鳥は呼吸や発声筋の精密なタイミング制御によって歌をつくるが、人も同様に、発話のテンポや抑揚を精密に制御している。そのリズム的側面を調べる中で、発話と指によるリズムタッピングが互いに干渉し合う現象を見つけた。現在は、この干渉の仕組みを利用して、運動制御と音声生成に共通するタイミング機構を探ることを目指している。実験では、発話リズムがタッピング精度に及ぼす影響をリズムパターン条件ごとに検討している。本研究は、鳥とヒトに共通するリズム生成原理や、コミュニケーションにおける協調のメカニズム解明につながる…と思う。
電子情報技術は人に時空間的な制約を乗り越えさせてくれた.しかしその結果,今,人が情報技術基盤の人工物を使うとき,人は処理対象が持つ空間(とおそらくは時間も)を失ってしまう.そのとき,人の認知過程はどのような新たな負荷を背負っているのだろうか.物理的存在のない,リアルな場/空間を有しないシステム利用をすることで,人が「容易さを失う」様子から,人の認知にとっての負荷のあり様について考えたい.
人間の協力は直接的互恵性と間接的互恵性の両方に依存している。これらのメカニズムはしばしば別個のものとして扱われるが、現実世界の意思決定ではこの2つを統合することが頻繁に行われている。しかし、多くの既存研究では直接的互恵性と間接的互恵性の共存を支えるメカニズムについてはほとんど注目されてこなかった。本研究では、個人の経験と評判情報を統合した相互扶助モデルを提案・分析する。エージェントベースシミュレーションを用いて社会規範を体系的かつ包括的に評価した結果、相手の過去の行動と評判を組み込んだ寛容な統合的相互扶助は、直接的・間接的相互扶助のみに基づく戦略よりも強固に協力を維持できることを実証した。特に、寛容な統合的互恵性とStanding規範を組み合わせることで、評価や実行の誤りが生じるノイズの多い環境においても高い協力水準を維持できる。これらの知見は、寛容さと複数の情報源の利用が、協力の持続において適応的優位性をもたらすことを示唆している。
本研究は、複数の人が対話を通じて新しいアイデアや概念を構築していく共創的な思考過程における音声コミュニケーションの特徴を探ること目的とする。こうした場では、参加者が互いの意見や理解、経験、感覚を共有し合いながら、思考の方向性を見出し、新たな概念や意味づけを共同で形成していく。こうした動的な対話においては、発話は単なる情報伝達ではなく、他者の発言を踏まえてその場で次の展開を形づくる認知的行為として機能しうる。本研究では、共創的なペア対話を対象に、発話内容や流れを時系列的に分析し、共創場面における認知プロセスや相互作用の特徴を捉えることを目指す。
比較的小規模な学会(会員数500人程度)の学会誌編集委員長になった熟年男。毎日のように届き処理する作業に苦心惨憺し、オンライン投稿・査読サービスに翻弄される。学会誌とは、査読とは何かについて悩む日の中で、ついには問題の解決へ向けて査読規程の新設など制度・システムの改善(のはず)に取り組んだ3年間の軌跡。学会執行部による発表許諾済。