Program

9:40~ Zoom開場,発表は質疑込み1件20分(厳守)

発表概要はプログラム最下部から展開できます.

第1セッション 10:00~12:00

🐾深層学習は心理学に革新をもたらすか?

池田 功毅(明治学院大学 産業経済研究所)・上島 淳史(東北大学)・齋藤 慈子(上智大学)・仲間 大輔(東京大学)・平石 界(慶應義塾大学)

🐾ネットスーパーと実店舗における商品探索過程の比較

岩根 榛花(筑波大学)・原田 悦子(筑波大学)

🐾Eat the Rude: 心理学から見たフードファディズム

工藤 大介(東海学院大学)・中川 翔貴・熊﨑 汐音・岩井 勇樹・加藤 善輝・青木 珠美(以上,東海学院大学)・李 楊(名古屋大学)

🐾私たちはなぜ自動人形でないのか?

畑 佑美(専修大学大学院)・井口 善生(福島県立医科大学)・松井 大(北海道大学)・鮫島 和行(玉川大学)・澤 幸祐(専修大学)

🐾社会的ジレンマ状況における罰の逆効果

水野 景子(関西学院大学社会学研究科・日本学術振興会)・清水 裕士(関西学院大学社会学部)

🐾自己共鳴する脳:大域シナプス場定在波とその機能的意義

宮腰 誠(カリフォルニア大学サンディエゴ校)・Paul Nunez (Emeritus Professor of Tulane University; Owner of Cognitive Dissonance)

ランチトーク 12:00~13:00

(第1セッション発表者ごとのブレイクアウトルームを作って聴講者はランダム割り当て→自由移動+食事休憩込み)

第2セッション 13:00~15:00

🐾マルコフ確率場の明るさ知覚モデルを改良したい

小林 勇輝(立命館大学OIC総合研究機構)

🐾デジタル‐人間融合による精神の超高精細ケア:自然言語処理 × 心理療法のプロセス

竹林 由武(福島県立医科大学)・二瓶 正登(日本学術振興会特別研究員)・伊藤 正哉(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)

🐾小鳥は"顔出し"会話を好むか:社会報酬による鳴禽の発声オペラント条件づけ

橘 亮輔(東京大学 進化認知科学研究センター)

🐾なぜ研究をするとSAN値が下がっていくのか

劉 歓緒(九州大学大学院人間環境学府)・山田 祐樹(九州大学基幹教育院)

🐾インタビューアーの年齢が高齢者の自伝的記憶のバンプに及ぼす影響

坂田 陽子(愛知淑徳大学心理学部)

🐾心理系大学院のコースワークを考える

清水 裕士(関西学院大学 社会学部)

おやつトーク 15:00~16:00

第2セッション発表者ごとのブレイクアウトルームを作って聴講者はランダム割り当て→自由移動+食事休憩込み

第3セッション 16:00~17:40

🐾植物心理学序説

渡辺 茂(慶應義塾大学)

🐾猫派の人間はなぜ猫を称え続けるのか? -飽きない共生ロボットの設計論を求めて-

高橋 英之(大阪大学)・高木 佐保(麻布大学)・石黒 浩(大阪大学)

🐾文理解におけるイメージ想起―色情報の活用に焦点を当てて―

寺井 雅人(名古屋大学大学院)

🐾遺伝子組み換え品種に対して生じる評価の歪みの発生源の検討

長谷 和久(神戸学院大学)

🐾Cognitive & Behavioral Assessment Toolbox for Japanese(CBAT-J)(仮)

国里 愛彦(専修大学)

ディナートーク 17:40~不定

(最初は第3セッション発表者ごとのブレイクアウトルームを作って聴講者はランダム割り当て→自由移動→懇親会の開催形態は未定です)


発表概要

右端∨をクリックすると展開できます.

深層学習は心理学に革新をもたらすか?

心理学には理論がないと言われて久しい。近年の「再現可能性危機」も、そのひとつの帰結だと言われる。その中で近年、深層学習技術を用いた諸モデルが、視覚的物体認識や文章生成などの高次認知課題で、人間に近い成績を示すようになり、新しい心理学研究の方向性として注目を浴びている。そうした成功の原因は、深層学習モデルが、従来心理学で扱われてきたモデルと、根本的に異なる理論構造を持っているためであるとされる。そこで我々は、本発表を通じて「深層学習は心理学にとっての聖杯 Holy Grail である」と提案し、心理学にとっての深層学習モデルの理論的意義と実践的応用方法を多角的に検討するプロジェクトを始動させる。同志諸君の参画を待つ!

ネットスーパーと実店舗における商品探索過程の比較

私たちが日常的に行う「お買い物」は,複数の過程が同時並行的に生じ,様々な認知機能が求められる行為である.特に高齢者の生活にとって,いわゆる「脳トレ」的な認知機能訓練の機会ともなっており,重要な行為とされている.しかし,お買い物では,高齢者を含めたすべてのユーザにとって「使いやすい」デザインが提供されているのであろうか? とりわけコロナ禍を契機とした急速な生活情報化の中でプレゼンスが向上したネットスーパーについては,実店舗におけるお買い物と同じように「活動しやすい」デザインなのであろうか.本研究では,特に目的の商品を店内で探索する商品探索過程を中心として,高齢者と若年成人による実店舗とネットスーパーでの商品探索過程について比較・考察した実験研究について報告する.それらの結果から,実空間で実行される情報の探索過程をUIへ変換することの影響,空間情報を提供するインターフェイスの可能性について議論したい.

Eat the Rude: 心理学から見たフードファディズム

特定の食品・栄養の健康への影響を誇大に信奉する現象であるフードファディズム(Kanarek, 1991)は,これまで社会学や家政学の観点から事例検討が行われてきた。近年では心理学からもその発生につながる心理的メカニズムの検討が行われ始めてきている(e.g., 井上ら, 2018; 工藤, 2020)。しかしながら,その数はまだ十分ではない。本発表では,二重過程理論(e.g., Stanovich & West, 2000)とその周辺理論に着目し,意思決定過程とフードファディズムとの関連性を検討した一連の研究を報告する。

私たちはなぜ自動人形でないのか?

あなたは自動人形だろうか?誰もが迷いなく「NO」と答えるだろう。しかし、注意を払わずに部屋の電気を点けることができるように、私たちの行動は「緩やか」に自動化されているといえる。発表者は、この習慣行動が行動間の構造変化によって引き起こされていると考えた。本研究では、習慣行動に特有な行動の構造から、私たちが「緩やか」に自動化される意味について考察していく。

社会的ジレンマ状況における罰の逆効果

社会的ジレンマ状況において、長期の相互協力の維持は介入なしには達成困難である。そこで多くの社会でとられる方策が、非協力者への罰制度の導入である。例えば、COVID-19感染拡大時には「もうお願いベースでは無理」という言葉がよく聞かれ、時短営業に従わない店舗への過料が導入された。実験室実験でも罰が協力を維持させることが示されている。一方で、罰が様々な弊害をもたらすことも明らかになってきた。なかでも、罰を経験したあと罰が取り除かれた実験群のほうが罰を経験していない統制群と比べて協力水準が低かったという知見 (Chen et al., 2009 study1) は、コスト等の面から罰制度を廃止せざるを得なくなったときに元の水準より協力が低下してしまう危険を示す極めて重要な知見である。本研究ではこれを「罰の逆効果」と呼ぶ。本発表では、罰の逆効果が安定して起こるのかについて先行研究の概念的追試を行った実験結果について報告する。

自己共鳴する脳:大域シナプス場定在波とその機能的意義

私は脳波研究の聖地サンディエゴを十年さまよった。そしてめちゃくちゃコアな脳波屋さんの間でだけ共有されている、神経科学者の99%は耳を疑う、あるぶっ壊れた科学的事実に行き当たった。すなわち、脳は活動するたびに、そのシナプス活動密度場が脳にとって「不随意な」時空間周波数分布に逢着するらしい。つまり、脳がある処理をするとき、意図しない別の処理が不可避に伴うのである。そんなアホな話があるかと思うかもしれないが、脳波のグローバルセオリーとして何度も検証されてきたのである(理解するには骨が折れるが)。したがって問題はそれが事実かではもはやなく、むしろ我々の理解がどう変わるべきかである。特に、脳がその現象を学習し、ある機能のために活用しているとしたら(というか、してないわけないのだが)、それが導く新しい洞察とは何か。ポール・ヌニェス名誉教授の私邸に2年にわたって週末通いつめた発表者が、その集大成となるびっくりな認識をフレッシュにお届けします。

マルコフ確率場の明るさ知覚モデルを改良したい

これまでに明るさ(物体の白黒濃淡)に関する数多くの錯視が発見・報告されてきた。明るさ知覚研究においてはこれらの錯視現象を統一的に説明することのできる知覚モデルの構築が目指されている。従来は画像の空間周波数に対する処理をベースとしたモデルが広く支持を受けてきたが(e.g., Blakeslee & McCourt, 1999),近年,マルコフ確率場と呼ばれる確率モデルを用いた全く新しい明るさ知覚モデルが提案された(Murray, 2020)。このモデルは従来のモデルが正しく予測することのできなかった錯視に対してもよい予測パフォーマンスを示し,当該分野に新たな道を拓きつつある。発表者はこのモデルのより一層の改良を目指し,モデルコードの編集に取り組んでいる。本発表ではここまでの成果と,今後の課題について報告する。本発表と議論を通して,画像処理や確率的情報処理に関しての(主に発表者自身による)理解を深めることができれば幸いである。

デジタル‐人間融合による精神の超高精細ケア:自然言語処理 × 心理療法のプロセス

認知行動療法は、うつ病や不安症の第一治療選択とされる心理療法であるが、介入効果や作用プロセスの解明は依然として発展途上である。近年、工学や情報学分野では、機械学習等のデータ駆動型の人工知能技術が飛躍的に向上し、多種・大量・精密データを扱う基盤技術が実用化されつつある。加えて、エキスパート型の人工知能と呼ばれるオントロジー工学も発展を見せている。オントロジー工学では、概念(行為を含む)を計算機と人間が理解できる形で表現し、体系化する。文科省学術変革領域 (B)にて採択された「デジタル‐人間融合による精神の超高精細ケア」の研究班では、それらデータ駆動型およびエキスパート型の両者のの人知能技術を活用し、複雑な心理療法場面のやりとりや臨床試験を通じて収集された精神症状の多種・大量・精密データを解析することで、精神状態の識別や治療アウトカムを高精度に予測する研究プロジェクトを展開している。本発表では、プロジェクトの概要と心理療法のプロセスを自然言語処理により検討する枠組みを紹介する。

小鳥は"顔出し"会話を好むか:社会報酬による鳴禽の発声オペラント条件づけ

最近はオンラインの講義や会議がすっかり定着したが、会話するときは相手が見える顔出しの方が(気疲れもするが)基本的には嬉しい。ところで、小鳥は頻繁に鳴き交わす。これは周囲に他者の存在を確認することで安心を得ているようにみえる。このことから、音声のやりとりと他者の視認には普遍的な関係性があるように思われる。本研究は、キンカチョウの発声を対象としたオペラント条件づけ実験により、この関係性を検証した。実験では、連結した2つのケージに1羽ずつトリを入れ、その中央に透明度を操作できる窓をつけた仕切りを置いた。LED光と音刺激に応じて適切なタイミングでトリが発声すると、窓が透明化し相手を見えるようにした。その結果、数日の学習後に、適切な発声の頻度が増加した。このことは、相手を見ることを報酬として、発声行動が変容することを示している。

なぜ研究をするとSAN値が下がっていくのか

何の成果も得られない研究活動、情け容赦のないリジェクト、発表中頭真っ白…これらにぶち当たり闇落ちした研究者は少なくない。実際のところ,研究者は正気を保っていられるかが勝負である。正気度を示すパラメータ(SAN値)を計測できるようになれば,皆が正気研究ライフを送れる日が来るかもしれない。そこで我々は上述のようなイベントベースの闇落ち系要因とは異なり,「作業時の周辺環境」に着目し,温度、色、明るさがチート行為に与える影響を調べてきた。もちろんタイムプレッシャーにも目をつけ、そこそこ厳し目の締め切りで参加者を焦らせてみたりもした。今回はこのような探索的な研究を通して明らかになってきたことを皆様にご紹介する。SAN値の低下が発生しやすい環境や状況を評価できるようになれば闇堕ちフラグを折るのも容易い。いずれは正気系研究者を幅広く増殖させ,科学技術の健全な進展を達したい。

インタビューアーの年齢が高齢者の自伝的記憶のバンプに及ぼす影響

高齢者の自伝的記憶について,20歳代から30歳代の頃の出来事の想起が多いことが知られている。しかしこれには,インタビューアーの年齢の影響は加味されていない。高齢者は,コミュニカティブにインタビューアーの年齢に合わせた話をしようとしているかもしれない。そこで,インタビューアーを,10歳,20歳,50歳代,70歳代と4世代設けて,高齢者に対して自伝的記憶を3つ順々に想起させた。その結果,話題はだんだんインタビューアーの年齢に近づき,3つ目に回答する際に,各インタビューアーの年齢とほぼ同様の頃の記憶が想起した。

心理系大学院のコースワークを考える

最近の心理学界隈でのさまざまな改革(再現性、統計分析)にともない、これまでの心理学の教育カリキュラムだけでは追いつかない状態になりつつあるように思う。統計的検定だけではなく、心理学的な測定論、プログラミング技術など、学部教育の貯金だけでは研究できない時代になりつつある。そこで心理系大学院のコースワーク化を真面目に(みんなで)考えて若い人たちがより効率よく、心理学研究のための知識や技術を獲得できる環境を整えて行きたいなっていう気持ちを語ります。

植物心理学序説

1 植物有魂論の系譜。2 植物の感覚。 3 植物の反応。 4 植物のレスポンデント条件づけ。5 利他行動と血縁選択。 6 神経なしの「心」についての論議

猫派の人間はなぜ猫を称え続けるのか? -飽きない共生ロボットの設計論を求めて-

現在のコミュニケーションロボットの多くは,第一印象がどのように魅力的であっても,しばらくインタラクションするうちに飽きてしまうことが多い.それに対して,犬や猫というコンパニオンアニマルは,言語的コミュニケーションが難しく,行動のレパートリーも両手で数えられる程度であるが(ただし見た目はかわいい),全く人間を飽きさせず,一生愛に溢れた関係を築くことができる.犬や猫に人間が熱狂するメカニズムを解明出来たら,そのような知見を活かした飽きない共生ロボットの設計論につながる可能性がある.ただし,このような人間とコンパニオンアニマルの共生関係の継続は,犬や猫などの動物側の行動特性のみで生まれているのではなく,それらと共に暮らす人間側のある種の“信仰”が大きな役割を担っていると我々は考えている.今回の発表では,主に犬や猫に魅せられる人間側の心理メカニズムについて,動物のぬいぐるみロボットを用いて解明を試みているプロジェクトについてご報告する.

文理解におけるイメージ想起―色情報の活用に焦点を当てて―

母語における文理解では,言語表現が示す対象の「形」や「色」をイメージすることが報告されている。例えば,「形」に焦点を当てた先行研究では,「空を飛ぶワシ」という文を読む際に,羽を広げた「ワシ」の姿をイメージする。一方,「巣の中にいるワシ」という文を読む場合,その「ワシ」のイメージは「空を飛ぶワシ」を読んだ場合と異なり、羽を閉じた異なる「形」の「ワシ」をイメージする。発表者は,ストループ効果を用いて「色」のイメージに焦点を当て研究を行っている。具体的に,「北極でクマを見た」という文は,北極の中に生息する「白色」のクマをイメージさせるはずである。したがって,この場合,「クマ」という単語を「白色」の文字で提示すると,クマの色としてあり得ない「緑色」で提示する場合に比べ,文字の色を判断する速度は速くなると考えられる。本発表では,研究の概要と予備実験の結果を報告する。

遺伝子組み換え品種に対して生じる評価の歪みの発生源の検討

食品関連ハザードに関する研究では,遺伝子組み換え品種は自然交配の品種に比べて忌避的態度がもたれることが一貫して示されていた。しかしながら,遺伝子組み換え品種に対する忌避的態度は,導入による収穫量の増加といった客観的な便益を評価する際の歪みによるものなのか,それとも客観的な便益を正確に理解したうえでの評価の歪みなのか,について明らかになっていない。そこで本研究では,ピクトグラムを用いて客観的な指標として収穫量の変化を示したうえで,遺伝子組み換え品種を評価する際に生じる認知的バイアスの発生源について検討した。

Cognitive & Behavioral Assessment Toolbox for Japanese(CBAT-J)(仮)

心理学研究では,様々な質問紙や認知・行動課題が使用されるが,限られた論文の紙面でその詳細の共有は難しい。それに対して,オープンサイエンス実践による研究マテリアルの共有が進み始めている。マテリアル共有が広がることで,研究開始時に共有されたマテリアルを参考にできたり,正確な追試ができたりする。その一方で,共有されたマテリアルのライセンスが不明であったり,様々なリポジトリに散らばっており活用が難しいなどの問題もある。日本語で使用可能な質問紙や認知・行動課題を集めて,1つのリポジトリにまとめることで,利用がしやすく蓄積可能なライブラリがあると有用であると考えられる。そこで,本発表では,java scriptベースに作成され,オンライン・オフラインで実施可能な質問紙や認知・行動課題を集積するCognitive & Behavioral Assessment Toolbox for Japanese(CBAT-J)(仮)構想を紹介する。

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おことわり

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