― 基礎方程式の数値解法を用いた非経験的化学描像の構築 ―
最近のナノテクノロジーや生命分子科学などの最先端分野では、
量子力学に基づく理論計算への期待がますます高まっています。
この研究室では、
計算機の中に分子を置き、分子の世界を「観る」ことから研究を始めます。
私たちはこれを 「計算機で観る分子の世界」 と呼んでいます。
当研究室では、量子化学の立場から、
分子の電子構造
化学反応のしくみ
酵素や触媒によって起こる反応
を、実験を行わずに理論的に調べています。
研究対象となるのは、
分子がなぜその形をしているのか
なぜ特定の性質を示すのか
なぜその反応が起こるのか
といった、化学の根本的な問いです。
この研究室では、次のような質問を特に重視しています。
分子は なぜ そのような構造を持つのか
分子は なぜ そのような性質を示すのか
分子は どのようにして 反応するのか
計算結果は、これらの問いに答えるための 手がかり です。
計算化学というと、
難しいソフトを使う
大きな計算を回す
というイメージがあるかもしれません。
しかしこの研究室では、
計算は答えを出すための機械ではなく、考えるための道具
だと考えています。
なぜこの反応は起こるのか
どこで反応が分かれるのか
何が反応を支配しているのか
これらを、計算結果を見ながら一緒に考えます。
酵素や触媒は、不思議な働きをします。
反応を速くする
特定の反応だけを起こす
条件が変わると振る舞いが変わる
そこには必ず、
電子の動きやスピン状態に基づく“しかけ” があります。
この研究室の目標は、
酵素や触媒が持つ「しかけ」を見抜き、
それを応用して新しい反応を設計すること。
研究は一人で黙々と進めるものではありません。
なぜこのモデルにしたのか
何が分かっていて、何が分からないのか
次に何を調べるべきか
これらを言葉にしながら、一緒に整理して進めます。
質問すること、考えを共有することは、研究の大切な一部です。
ここでの研究を通して、次の力を身につけてほしいと考えています。
分子や反応を 「なぜ?」 と考える力
計算結果をそのまま信じず、意味を考える力
分子の世界を、自分の言葉で説明する力
これらは、将来どの分野に進んでも役に立ちます。
計算化学は、
目に見えない分子の世界を計算機を通して観察するための方法です。
触媒反応の仕掛けをみぬけ。
この言葉は、研究テーマであると同時に、
一緒に分子の世界を考えるための合言葉です。
少しでも興味を持ったら、ぜひ気軽に声をかけてください。
塩田 淑仁 准教授
研究者ID
h-index 52, hg-index 66.87, g-index 86
経歴
1996年 京都大学 工学部 石油化学科卒業 (山邊 時雄 教授)
1998年 京都大学 大学院工学研究科修士課程 分子工学専攻修了 (山邊 時雄 教授)
2001年 京都大学大学院工学研究科博士課程 分子工学専攻修了 (藤本 博 教授)
1998年~2001年 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2001年 九州大学 有機化学基礎研究センター 助手
2003年 九州大学 先導物質化学研究所 助手(改組)
2007年 九州大学 先導物質化学研究所 助教
2014年 九州大学 先導物質化学研究所 准教授
所属学会
日本化学会
日本コンピュータ化学会
触媒学会
分子科学会
趣味
猫の写真鑑賞
水泳と筋トレ
旅先での名産品購入(名物にうまいものなしOK)
美味しいみかんの食べ比べ(天草、せとか、はるか)
アリエクでの掘出物を購入(安物買いの銭失いOK)
学生にご飯をごちそうすること
Amit Shrestha (博士研究員)
亀野 凌児(M1)
福田 菖太 (B4)
木村 海晴 (B4)
近藤 旭 (B4)
2025年度 修了
古川 木綿 (M2) → 企業
2024年度 修了・退職
住谷 陽輔 (助教) → 助教
亀谷 陽平 (D3) → 企業
鶴田 裕介 (M2) → 企業
豊嶋 凌我 (M2) → 企業
山下皐介 → 公務員
許斐 明日香 → テクニカルスタッフ
古川さん 修士修了おめでとうございます。学会発表、共同研究、論文執筆と活躍してくれました。今後は社会での活躍を期待しています。(2026年3月25日 先導研(CE41棟)305にて)お土産でもらった二重丸とてもおいしかったです。
博士、修士修了おめでとうございます。大学で築いた知識と経験を糧に、社会で存分に力を発揮してください。(2025年3月25日 先導研(CE41棟)玄関前にて)
メタンは常温で気体であり、輸送や貯蔵には液化のため の特殊な設備を必要とするため、部分酸化させて液体のメ タノールに変換することは工業化学的に重要な反応となっ ている。工業的には触媒をつかって水素と一酸化炭素の合 成ガスに変えたのちにメタノールを合成している。し かし、メタンは化学的に安定であるため、この転化反応は 大量にエネルギーを消費してしまうことが問題となってい る。工業的なメタン─メタノール転化反応に過酷な条件が要 求される一方で、自然界では生理学的条件下でメタンをメ タノールに転化する酵素が知られている。我々は理論 的手法を用いてメタン活性化機構の解明を目指して研究し てきた。
上図は金属酸化物イオンによるメタン酸化の反応機構
メタンの活性化の重要性:
メタンからメタノールへの変換は工業的に重要であり、自然界の酵素でも観察される反応です。
特にC-H結合の切断とそれに続く反応が課題となっています。
理論的手法の利用:
密度汎関数法(DFT)などを用いて、メタン活性化の反応経路やエネルギー状態を解析しています。
QM/MM法を活用し、現実の系に近いモデルで計算が行われています。
具体的な触媒系:
気相反応:鉄酸化物イオン(FeO⁺)を用いたメタンからメタノールへの変換モデル。
ゼオライト(Fe-ZSM-5):金属イオンの活性部位による水酸化反応。
酵素(MMO):二核銅活性中心の反応機構について。
研究の意義と展望:
理論計算から得られる知見は、より効率的で環境に優しい触媒の開発に貢献します。
酵素の反応機構をモデルにした触媒設計への応用も期待されています。
窒素酸化物(NOx)還元反応は、窒素循環における脱窒過程および排ガス浄化に関わる重要な化学反応である。NOx還元反応のうち、一酸化窒素(NO)還元と亜硝酸還元にはNO分子が関与する。NOは不対電子を1つ有するため、関連する化学反応は開殻系となる。また、NOはノンイノセント配位子であり、金属錯体中の金属や他の配位子の種類によって異なる酸化状態(NO+、NO、NO–)を示す。上記の理由から、NOの関わる化学反応の機構解析には、生物無機化学および錯体化学の知識、さらには量子化学計算における高度な技術が要求される。このような難しさのため、NO還元および亜硝酸還元に関する詳細な反応機構解析の報告例は少なく、反応における金属錯体の役割やNOxの電子状態など未だ不明な点が多い。
上図は銅2核錯体によるNO還元の反応機構
二核銅錯体のNO還元反応の研究
NO還元酵素を模倣した二核鉄錯体の研究の一環として、二核銅錯体によるNO還元に焦点を当てている。
DFT計算によって反応機構が(1)N–N結合生成、(2)N2O2異性化、(3)N–O結合開裂の3段階で進行することを特定。
電子移動機構や中間体構造に基づき、多様な中間体構造と電子状態変化の意義を解明。
銅錯体によるNO2⁻還元反応の研究
銅1価錯体の報告が多い中、銅2価錯体とフェノール誘導体を用いたNO2⁻還元反応に注目。
2種類の経路(O配位ニトリト錯体、N配位ニトロ錯体)をDFT計算で解析し、CPET(プロトン共役電子移動)の差異を評価。
独自の指標を用いてプロトン・電子移動の進行のずれを定量評価。
結論と意義
銅錯体を用いたNOx還元反応の反応機構をDFT計算で提案。
触媒設計や理論化学、錯体化学、触媒化学分野の発展に寄与する新たな視点を提供。
20250905 九大に講演にこられました。
20250924 食事会にご一緒させていただきました。
2025/11/25-27 量子化学計算の勉強にこられましたので、一緒に食事にいきました。
2025/12/02 企業説明に来られましたので、一緒に食事にいきました。安全食堂のおばちゃんにも人気でしたね。亀谷博士は在学中の仕事として17の論文と1総説を執筆してくれました。
2025/12/19 少し早いですが、研究室の忘年会(昼開催)を魚庄でしました。福工大の蒲池先生がこられましたので、参加してもらいました。
2026/01/26-28 東レの篠塚さんが量子化学の勉強に研究室に来られました。ランチに魚庄にいきました。