● 有志による新たな「要望書」の提出とその後の動き(投稿日:2022年12月26日)
2021年10月31日に、北大教員6名が、アイヌの方たちと北大構内を歩き、歴史について学びあう会を開催しました。その会に参加された平取町の木村二三夫さんから、北大とアイヌ民族との歴史的関係を示す説明版を学内に設置するなどして、この地に暮らしてきたアイヌ民族の歴史の理解を深める必要があるとのご意見を頂きました。これを受けて北大教員有志(以下、「有志」)は、2022年4月1日、アイヌ共生推進本部設置にあわせて、以下の4項目からなる「要望書」を北海道大学総長およびアイヌ共生推進本部宛に提出しました。
アイヌ民族の出自を持つ学内外の多様な人材を、アイヌ施策検討委員会委員に任命する。
非倫理的なやり方で行われたアイヌ民族の遺骨の「収集」、研究、管理などについて謝罪した上で、地域への積極的な返還を推し進める。
北海道大学の敷地が、コタンを含むアイヌの生活領域であったことを検証したうえで、大学の敷地の来歴を『北大150年史』の中で明示的に取り上げる。
「既存のサイネージ等の見直し」の一環として、アイヌ民族の歴史と関わりの深いキャンパス内の土地(コトニコタン跡地とされる札幌研究林・実験苗畑、附属図書館北東のウライ跡地、遺跡保存庭園など)に説明板や碑などを設置し、学生・教職員・市民に歴史的事実の周知を図る。
5月18日にはアイヌ共生推進本部長から、”要望は本学とアイヌの今後の関係を議論していくにあたり重要な論点であり、アイヌ共生推進本部ではそれらを真摯に受け止め慎重に対応していきたい”旨の返答がありました。その約4か月後の9月7日、アイヌ共生推進本部長らと「有志」3名が面会しました。まず木村二三夫さんが用意した手紙を「有志」の一人が読み上げたうえで要望に対する取り組みについて意見を聞きました。その概要は以下の通りです。
【木村二三夫さんからの手紙に対して/アイヌ共生推進本部の取り組みについて】
・1年生向けのアイヌ関連科目の開講など着手できるものについては実行している
・創基 150 周年(2026 年)までにアイヌを含めた共生型の環境の整備を実現したい
・鋭意慎重に努力しているのでご理解いただきたい
【要望1「アイヌ民族の出自を持つ学内外の多様な人材をアイヌ施策検討委員会委員に任命する」について】
・現在はアイヌ出自の学内教員1人に加わっている状況
・委員の最終的な陣容についてはアクションプランを開示するときに公表したい
【要望2「アイヌ民族の遺骨の「収集」、研究、管理などについて謝罪した上で、地域への積極的な返還を推し進める」について】
・まずは共生のための環境整備が必要
・その一環として、アクションプランを今年度いっぱいにまとめ公表することが重要だと考えている
・アクションプランは最終版ではなく、それ以降も状況に応じて柔軟に改変していくつもりである
・当面は本推進本部を信用して見守っていただきたい
【要望3「大学の敷地の来歴を『北大150年史』の中で明示的に取り上げる」について】
・速やかに着手したいと考えている
【要望4「アイヌ民族の歴史と関わりの深いキャンパス内の土地に説明板や碑などを設置し、学生・教職員・市民に歴史的事実の周知を図る」について】
・すでに検討を進めている事案もある。速やかに着手したい。
・学内外に多様な意見がある。さまざまな方からご助言をいただきながら、進めていきたい
なお、この会合での意見交換をふまえ有志は、推進本部に定期的に情報を発進してもらいたいことを要望しました。アイヌと北大を考える会も推進本部の動向には今後も関心を持って見ていきたいと考えています。
<ご参考:これまでの経緯>
・2021年10月31日:北大教員有志6名、アイヌの方たちと北大構内を歩き、歴史について学びあう会を開催。そのなかで、参加された平取町の木村二三夫さんから、北大とアイヌ民族との歴史的関係を示す説明版などの設置を求める要望が出された。どのような要望をどのような形で出す、教員有志で話し合うことになったが、その後、しばらく目立った行動を起こすことが無いまま数ヵ月が経過。
・2022年3月22日:木村さんと教職員有志(8名)が北大で面会。上記要望について話し合う。その後、教員有志で総長およびアイヌ共生推進本部長宛の「要望書」を作成。
・2022年3月29日:「アイヌ遺骨問題に対する北海道大学の「謝罪」を求める要望書」(2020年3月27日提出)の呼びかけ人・賛同者に一斉メールを送信し、今回の「要望書」の送付人に名を連ねてもらえるかを依頼。3月31日に締め切るまでに26人(「有志」を含む)の賛同を得た。
・2022年4月1日:26人の連名で「要望書」を総長およびアイヌ共生推進本部長にメールで提出。
・2022年5月18日:アイヌ共生推進本部長より「要望書」に対する回答「アイヌ施策への要望書」が届く。その概要は以下の通り。①要望は本学とアイヌの今後の関係性を議論していくにあたり重要な論点であると認識している、②アイヌ共生推進本部ではそれらを真摯に受け止め慎重に対応していきたい、③こうした課題を前向きに検討していくため4月にアイヌ共生推進本部を設置した、④関係改善に向け着実に成果を出していきたいと考えており、その過程で学内の先生方にも適宜ご相談等をしたいと考えている。
・2022年6月6日:「要望書」の内容やアイヌ施策の進捗状況などについて直接会って意見交換をするため、アイヌ共生推進本部長に面談を依頼。
・2022年6月20日:アイヌ共生推進本部長より”これからアクションプラン等の作成に入る段階であり具体的成果がまだないためもう少し待ってほしい”旨の回答。
・2022年9月7日:北海道大学事務局にて、有志3名がアイヌ共生推進本部長らと面談。この面談には、本部長補佐および総務企画部総務課企画担当係長が同席。2022年8月26日付の木村二三夫さんからの手紙を有志が読み上げた後に意見交換を実施。
・2022年9月14日:意見交換に対する有志からの返答として、①推進本部には定期的に情報を発信してもらいたい、②木村二三夫さんに面談の報告をした、③今後も推進本部の動向には関心を持って見守る、の三点をアイヌ共生推進本部長に伝える。