研究テーマ:孤立・開放量子多体系の理論
量子系を理解する上で、対称性は最も基本的な概念の1つです。これまでの物理では、主に環境と切り離された孤立系の対称性が議論されてきました。しかし、環境と繋がった開放量子系では、対称性のルールそのものが変わることが近年の研究で判明してきました。我々は、開放量子系における対称性と定常状態の間の関係について研究しています。
・時間依存駆動された開放量子系の対称性と定常状態の分類 [arXiv:2602.13095]
開放量子系を記述する最もシンプルな形式として、Gorini–Kossakowski–Sudarshan–Lindblad (GKSL) 方程式がよく用いられています。GKSL方程式は、系のユニタリなダイナミクスを記述するハミルトニアンと、散逸チャンネルに対応する(一般には複数の)ジャンプ演算子によって特徴づけられます。
もしハミルトニアンと全てのジャンプ演算子が共通してある対称性を持っている場合、その対称性を「強い対称性」と呼びます。例えば、系の中で粒子が生成・消滅せず、系と環境が粒子のやりとりをしない場合、その開放量子系は粒子数保存に関する強い対称性を持ちます。
時間依存性のないGKSL方程式では、強い対称性は定常状態の構造と密接な関係があることが知られていました。特に、ジャンプ演算子がエルミートな場合は、強い対称性と定常状態が一対一対応することが知られています。しかし、周期駆動をはじめとする時間依存性がある場合は、一般的な関係はほとんど知られていませんでした。
我々は、2つの異なる強い対称性を新たに導入することによって、ジャンプ演算子がエルミートかつ、広いクラスの時間依存性を持つGKSL方程式に対して、定常状態の構造の分類を行いました。
・時間非依存の開放量子系における定常状態の一意性
乱れのない開放SYK模型の厳密解と異常緩和
2体ロスのあるFermi-Hubbard模型の単一スピンフリップダイナミクス
2体ロスのあるBose-Hubbard模型・Lieb-Liniger模型における2体ダイナミクス
・SU(N) Hubbard模型におけるMajorana鏡映正値性
・拡張SU(N) Hubbard模型における一般化ηペアリング状態
・一般化ηペアリング状態を基底状態にもつ拡張SU(N) Hubbard模型の構築