AI, Skill, and Productivity: The Case of Taxi Drivers (with Kyogo Kanazawa, Daiji Kawaguchi, and Yasutora Watanabe)
Management Science, forthcoming
AIは仕事にどのような影響を与えるのでしょうか?特に、AIは生産性にどういった影響を与え、その影響は労働者のスキルレベルによってどのように異なるのでしょうか?本研究では、タクシーに需要予測AIが導入された際の詳細なミクロデータを用いて、分析を行いました 。分析の結果、需要予測AIの活用により、高スキル乗務員の生産性向上には有意な影響が見られない一方で、低スキル乗務員の生産性を7%ほど改善することを発見しました。ITやロボットといった従来の技術は高スキル労働者の生産性をより高め所得格差の拡大をもたらしてきましたが、AIという新技術は逆に格差を減少させる可能性があることを本研究は示しています。
- 東京大学のプレスリリース: 日本語版, 英語版
- 共著者の川口氏、渡辺氏による解説記事 (日本語版, 英語版)
- メディア: 日経新聞
Golfing CEOs (with Yutaro Izumi, and Masayuki Yagasaki)
Labour Economics (special issue), 91: 102639, 2024.
女性CEOのビジネスネットワークは男性CEOに比べて小さいことが知られています。本研究では、TSR社が保有する日本企業約100万社の取引データを用い、CEOの多くが趣味としているゴルフを介して、女性CEOが男性のネットワークにつながることができるかを分析しました。
Later-life Mortality and the Repeal of Federal Prohibition (with David Jacks, Krishna Pendakur, and Anthony Wray)
Journal of Public Economics, 238: 105192, 2024.
アメリカでは1920年から「禁酒法」といって、アルコール飲料の醸造、販売、運搬を禁止した「世界の大実験」と呼ばれる法律が施行されました。1933にその法律は終わりを告げます。そこで、飲酒が解禁になった際に妊娠していた母親から生まれた子供と、解禁の直前に生まれた子供を比較することで、妊娠中の母親の飲酒が、生まれた子供の将来の寿命に影響を与えるかを調べた研究です。
Asymmetric Demand Response when Prices Increase and Decrease: The Case of Child Healthcare (with Toshiaki Iizuka)
The Review of Economics and Statistics, 105(5): 1325–1333, 2023.
モノの値段が200円から300円に上がった際に需要が「減る」量と、300円から200円に下がった際に需要が「増える」量は、古典的な従来の経済学では同じだと考えられてきました。果たしてそれは本当なのでしょうか。この仮説を子どもの医療サービスにおいて、分析しました。その結果、価格(=自己負担割合)上昇時(0%から30%)の需要減は、価格低下時(30%から0%)の需要増の2倍以上となりました。需要が価格に非対称に反応することを示唆しており、政策立案においても価格変化の方向性に留意する必要性を示しています。
Temporal Instability of Risk Preference among the Poor: Evidence from Payday Cycle (with Mika Akesaka, Peter Eibich, and Chie Hanaoka)
American Economic Journal: Applied Economics, 15(4): 68-99, 2023.
所得の低い人々は、月に1度支払われる年金等に強く依存しています。一方で、経済的な意思決定の多くは、その人がどの程度リスクを取る人なのか(リスク選好)に依存しています。そこで本研究は、年金の支払いの前後で、リスク選好が変わってしまうことで、最適な経済的な意思決定ができていないのではないか、ということをアメリカと日本のデータを用いて検証しました。
Urban Mortality and the Repeal of Federal Prohibition (with David Jacks, and Krishna Pendakur)
Explorations in Economic History, 89: 101529, 2023.
アメリカでは1920年から「禁酒法」といって、アルコール飲料の醸造、販売、運搬を禁止した「世界の大実験」と呼ばれる法律が施行されました。1933にその法律は終わりを告げるのですが、禁酒法の終了後に飲酒が解禁になった際の、(乳幼児死亡以外の)成人の死亡、特に暴行、自殺、交通事故等による死亡に与えた影響を分析しています。
Is Zero a Special Price? Evidence from Child Healthcare (with Toshiaki Iizuka)
American Economic Journal: Applied Economics, 14(4): 381–410, 2022.
「タダ(無料)」とは特別なのでしょうか。物やサービスの値段が、例えば105円から100円になるのと5円から0円になるのとでは、需要に与える影響が大きく異なると指摘されています(「ゼロ価格効果」)。レセプトデータを用いて、子どもの医療サービスにゼロ価格効果が果たしてあるのかを検証しています。その結果、「ゼロ価格」は特別な価格で、少額の定額負担(例:一回500円)と比べて、医療の利用を大幅に増やす、比較的健康な子供の利用を増やす、抗生物質の不適切な使用を増やす、どがわかりました。 少額の定額負担はこれらを減らすと同時に、医療費が高額となるリスクを大幅に軽減するメリットもあります。一方で、「ゼロ価格効果」の活用も望まれます。例えば、価値が高く利用を増やしたい医療は、あえて無償とすることで、利用を大幅に増やせます。小児の予防注射はその良い例です。 より一般的には、助成制度や価格設定において、タダと少額負担をたくみに使い分けることが重要となります。
- メディア: 日経新聞 , 東洋経済, 日経新聞(取材)
- 東京大学のプレスリリース: 日本語版, 日本語(詳細版), 英語版
- 共著者の飯塚氏による解説記事 (日本語版, 英語版)、解説ブログ
COVID-19 Vaccination Mandates and Vaccine Uptake (with Alexander Karaivanov, Dongwoo Kim, and Shih En Lu)
Nature Human Behaviour, 2022. [ インパクトファクター 13.663 (2020)]
先進国の多くでは、飲食店や博物館等の室内施設に入る際に、コロナワクチン接種を受けたことを証明する必要があります(『ワクチンパスポート』と呼ばれる)。そこで本研究は、ワクチンパスポートを政府が導入すると宣言することにより、それまでコロナワクチンを受けてこなかったワクチン未接種者が、ワクチンを接種するようになるのか、について、カナダ、フランス、イタリア、ドイツのデータを用いて検証しました。この論文は、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)等の行政機関やThe Economist等の雑誌や新聞に取り上げれました。
- メディア: 日経新聞
- 東京大学のプレスリリース: 日本語版, 日本語(詳細版), 英語版
How Do Peers Impact Learning? An Experimental Investigation of Peer-to-peer Teaching and Ability Tracking (with Erik Kimbrough, and Andrew McGee)
Journal of Human Resources, 57: 304-339, 2022.
学校のクラスメートが本人の学力や将来の賃金等の様々なアウトカムに影響を与えることが知られています(ピア効果)。そのメカニズムの一つは、優秀なクラスメートに教えてもらうことです。一方で、最近は同じ学力の学生同士の方が先生も教えやすく、学生同士も気軽に話しやすく学びやすいのでは、という理由等で、習熟度(成績)別にクラス分けをする政策が多く取り入れられています。しかし、習熟度別にクラスを分けると、学力の低い生徒は一つのクラスに集められてしまうので、優秀なクラスメートから学ぶ機会が失われてしまうのではないか、それによって成績がむしろ下がるのでは、という仮説をラボ実験で得られたデータを用いて検証した論文です。
Infant Mortality and the Repeal of Federal Prohibition (with David Jacks, and Krishna Pendakur)
The Economic Journal, 131(639): 2955–2983, 2021.
アメリカでは1920年から「禁酒法」といって、アルコール飲料の醸造、販売、運搬を禁止した「世界の大実験」と呼ばれる法律が施行されました。1933にその法律は終わりを告げるのですが、飲酒が解禁になることで、妊婦を含めた人々のアルコールの消費量が増え、乳幼児の死亡が増えるのでは、という仮説を検証した論文です。
Face Masks, Public Policies and Slowing the Spread of COVID-19: Evidence from Canada (with Alexander Karaivanov, Shih En Lu, Cong Chen, and Stephanie Pamplona)
Journal of Health Economics, 78 102475, 2021.
室内でのマスク着用を義務化する政策が、コロナ感染者数や死亡者数の増加を抑制する効果があるのかを、カナダのデータを用いて検証した論文です。この結果は、WHO(世界保健機関)、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)、カナダ政府、バンクーバー市議会等の行政機関や、世界各地の様々な新聞や雑誌(Nature等)で取り上げられました。
Income-comparison Attitudes in the United States and the United Kingdom: Evidence from Discrete-choice Experiments (with Katsunori Yamada)
Journal of Economic Behavior & Organization, 164: 414-438, 2019.
人間は周りの人々の所得が自分より高いことを妬む性質があることが知られています。そういった性質がイギリスやアメリカという同じ英語圏でも違った文化を持つ国でどれほど違うのかを、離散選択実験という手法を用いて検証した論文です。自ら作成したオンラインのサーベイ実験で得たデータを使っています。
Do Risk Preferences Change? Evidence from the Great East Japan Earthquake (with Chie Hanaoka, and Yasutora Watanabe)
American Economic Journal: Applied Economics, 10(2): 298-330, 2018. 第4回ヤフー株式会社金融統括本部優秀論文賞
経済的な意思決定の多くは、その人がどの程度リスクを取る人なのか(リスク選好)に依存しています。これまで経済学では、リスク選好は生まれながらにおおよそ一定だと考えられてきましたが、人生を揺るがすほどの強い恐怖に曝されることで変わってしまうのかもしれません。そこで、2011年の東日本大震災がリスク選好を変えるのか、その場合はよりリスクを好むようになるのか、それともリスクを嫌がるようになるのか、またその影響は短期ですぐに消えるものなのか、それとも長期で残り続けるものなのか、といった問いを検証しています。震災前から収集されていたパネル調査を用いて分析しています。
- メディア: 日本語一般向け記事
The Effectiveness of Demand-side Government Intervention to Promote Elderly Employment: Evidence from Japan (with Ayako Kondo)
Industrial and Labor Relations Review, 70(4), 1008-1026, 2017.
高齢化の進展とともに、公的年金をはじめとする社会保障財政への懸念と、生産年齢人口の減少による人手不足が問題になっています。そこで、日本政府は高齢者になるべく長く働いてもらうために、様々な政策を取ってきました。まず、2001年に、公的年金の支給開始年齢引き上げをスタートさせ、次に2006年に高年齢者雇用安定法(高年法)を改正し、企業に高齢者の雇用を確保すること(年金支給開始年齢までの定年年齢引き上げ、継続雇用、あるいは定年廃止のいずれか)を義務化しました。この論文では、これらの政策によって、60代前半の労働者が本当に長く働くようになったかを分析しました。
- メディア: 日本語一般向け記事
The Effect of Patient Cost-sharing on Utilization, Health and Risk Protection
American Economic Review, 104(7): 2152-2184, 2014.
医療費の抑制は政府にとって緊急の課題ですが、その一つの手法として、患者の窓口負担を増やすことが挙げられます。しかし、患者の窓口負担を増やすことには、利点と難点の両方があります。利点は、窓口負担が増えることで、患者の無駄な医療サービスの利用を抑制できる点です。一方で、多くの窓口負担を強いることで患者が必要な治療を受けずに症状が悪化し、より深刻で費用のかかる病状に陥る可能性があります。また、もう1つの難点は、多くの窓口負担を強いると、病気の際にも突然の大きな支出を避けることができおかげで、他の消費を大幅に減らさずに済む(消費の平準化)という、保険の本来の利点が損なわれる点が挙げられます。そこで、70歳を境に自己負担額が3割から1割に下がる当時の日本の医療制度に注目し、70歳を境に高齢者の受診行動がどのように変わり、上記の利点と難点のどちらが上回りそうかを、分析した研究です。
- メディア: 日経ビジネス
Supplier-induced Demand for Newborn Treatment: Evidence from Japan (with Kiyohide Fushimi, MD)
Journal of Health Economics, 35: 162-178, 2014.
金銭的なインセンティブが人々の行動を変えることは知られていますが、同様のことは病院や医師についても成り立つのでしょうか。日本の診療報酬(病院や医者に支払われる金額)制度は、これまで治療をすればするほど、治療した分の代金を支払われる出来高払いであったために、余分な治療や薬が処方される過剰医療が指摘されてきました。そこで、政府は2003年から、病気の種類ごとに一定の額を支払う定額報酬(実際は日ごとの定額)を段階的に導入しました。そこで、本研究では新生児医療に注目し、この制度変更によって財政的に大きく損失を受けそうな病院ほど、その損失を取り戻せるように治療のやり方を変えるか、といったことを分析しました。
Effects of Universal Health Insurance on Health Care Utilization, and Supply-Side Responses: Evidence from Japan (with Ayako Kondo)
Journal of Public Economics, 99: 1-23, 2013.
日本では皆が医療保険に加入している皆保険が今では当たり前になっています。しかし、アメリカでも皆保険に近づいたのはつい最近ですし、途上国では皆保険からはまだ程遠いところにあります。そういう日本も皆保険を実現できたのは1961年でした。そこで本研究では、皆保険の導入によって、医療需要がどのように増えたか、また医療の供給側(医者数、ベッド数、病院数等)がどのように変化したかを分析しました。