遅ればせながら,オーロラ観察の報告をします.
10月9日午前(日本時間)に発生した大規模な太陽フレアが起こりました.翌日(10日)夜には磁気嵐が予想されたため,急遽GROUNDでは有志4名でオーロラ観察へと向かいました.
当日,足の届く範囲で夜に晴れる可能性がある場所は,札幌の西の後志エリアでした.この辺りで低緯度オーロラを観察するには,北の低空が開けている海沿いが有利だと考えられます.天気予報と照らし合わせると,夜前半に晴れるのが積丹より東側,後半に晴れるのが積丹より西側というものでした.太陽風が到達してオーロラが発生しているときに晴れている必要があります.
札幌から西へ移動中の車中,衛星データを見て遅くに太陽風が到達すると見込み,寿都町を観察地としました.17時半に札幌を出発し,21時過ぎには観察地点に到着しました.
観測地では,カメラを早々にセットし,簡単に星の観察(惑星・星座・1等星・星団など)をしていました.ただ,24時時点で気温は10度まで低下しており,何時間も野外にいる気力は湧きませんでした.粗方星を確認した後は,リアルタイムで流れてくる衛星や地磁気観測所のデータとにらめっこしながら車内でオーロラを待ち構えていました.
太陽風到達の兆候を確認したのは深夜1時になろうかという頃でした.時々外へ出てカメラを確認し車へ戻る…というのを何度か繰り返していると,2時前頃,カメラのディスプレイ上で雲の向こうが赤くなっているのを確認しました!低緯度オーロラです!
以下,連続写真から確認されたオーロラの様子をまとめました.写真であっても観察にはどうしても主観が入るため,色々な方の観察結果と照らし合わせてみたいものです.また,現地では眼視での観察も試みました.ですが,5月に低緯度オーロラを眼で見た参加者も,眼が慣れていないためか光害や透明度の悪さのためか,明確にオーロラであると判断できるものは見えませんでした.
02:10頃,オーロラは柱状構造を伴いながら明るくなり,10分ほどで比較的暗くのっぺりと広がった姿へと変わっていきました.また画像を確認すると,02:10よりも前の時間帯も若干明るく,増光が2段階となっているようにも見受けられました.
03:28頃,再びオーロラは柱状構造を伴いながら明るくなりました.このときのオーロラが最も明るく背が高かったです.明るい部分は,上部に青いオーロラを伴いながら,数分かけて東進していきました.オーロラは,03:57頃には再びのっぺりとした姿へと変わりました.また,この増光イベントに先行する03:14頃にも,若干の増光があるように見受けられました.
これらのイベントは,サブストームの一部始終を見ていたのかもしれません.
赤いオーロラの上部に見えることがある青いオーロラは,(N2)+イオンの共鳴散乱,すなわち日射のフォトンによる励起に起因すると言われています.今回のオーロライベントでも青いオーロラを確認できました.
青いオーロラは,増光のたびに,柱状構造の上部や北東の空に強調(マゼンタ~紫~青)されるように見えました.また,2度目の増光イベント以降は北東の青みがより持続しているように感じます.これは上空の日照の存在と関係すると予想しています.ただし,薄明に近い時間帯については,空自体が青みを帯びてくるため,確定的ではないです.
また,オーロラが明瞭に見える前(2時前)もこの領域は青みを帯びて見えなくもないですが,オーロラとの関連は不明です.この方向は街あかりが近いため,他地点での写真と照らし合わせて確認する必要性を感じています.
5時前には観察地を出発しました.撮影した最後のコマは,薄明で付近の風景が難なく見えるようになった04:47頃のものでしたが,この頃でもなお,ディスプレイ上に容易にオーロラの存在を確認できるほどでした.
昼間でも継続的に出ていたとしたら面白いです.
来年も太陽活動が活発そうなので,オーロラ観察の機会はまだまだありそうです.天気が許せば複数地点で同時に観察してみたいものです.