認知情報型インタフェース

Prediction of Perception and Motion

参考文献

[1] Koki Katsumata, Shunya Ishikawa, and Takayuki Hoshino, “Detecting Missteps During Step Descent from EMG Signals Using Bidirectional LSTM-Based Recurrent Neural Networks,” The 40th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC2018, Honolulu, Hawaii (USA), 2018, p. FrPoS-30.50.

[2] 石川峻也, 深山理, and 星野隆行, “Kinect v2とHMDを用いた視覚的錯誤生成システムによる段差踏み外し運動の解析,” 第38回 バイオメカニズム学術講演会(SOBIM2017 in OITA), 別府国際コンベンションセンター B-con Plaza(別府市), 2017, pp. 1B-1–3.

[3] 芹沢信也, 満渕邦彦, and 星野隆行, “予備緊張により調整される膝関節剛性と着地先の床剛性との関係に関する研究,” 第35回日本ロボット学会学術講演会, 東洋大学川越キャンパス, 2017, p. RSJ2017AC3L1-01.

[4] 石川峻也, 荒木望, 深山理, 満渕邦彦, and 星野隆行, “視覚情報に関連した歩行制御機構解明のためのHMD を用いた生体計測システムの開発,” 第17回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会(SICE SI2016), 札幌コンベンションセンター(札幌), 2016, vol. 3B3-4, pp. 2226–2231.

[5] 熊谷 和樹 and 星野 隆行, “指尖動脈血圧波形における精神負荷により誘発される拡張期の反射波の到達時間の変化,” 第66回応用物理学会春季学術講演会, 東京工業大学(東京), 2019, pp. 10p-PA3-8.

  ヒトが運動計画した際に生じる事前的な不随意の運動を計測し、脳が計画している運動を事前に予測する認知情報型インタフェースを構築することを目指しています.

この認知情報型インタフェースには大きく分けて2つの特徴が考えられます.

(1)予備的な運動の役割には,知覚をもとにした予測制御が考えられます.そのため,予備的な活動の計測から,主観的に感じている(推定している)階段の高さ[1]や床の硬さ[3]など,ヒトがどのように知覚し注意を向けているかという認知的情報が得られます.

(2)加えて予備的な活動からは,単純にこれから生じる運動を予測することができます.

これらを組み合わせることで,運動が完了するより早く,見間違いや勘違いの発見やこれから起こす行動が 事故につながるかを事前に察知し回避できる可能性があります.


  神経系と筋の制御ループ内には,「感覚・中枢神経系の予測的な信号処理がコーディングされている」と考えられます.手や足を動かそうとする際には,その処理や伝搬に多くの遅延時間が生じるシステムです.知覚の処理にはには数百 ms の遅延時間が生じ,神経信号から実際に力学的作用までにはさらに時間が必要です.運動指令を伝える運動神経の伝搬速度は最大でも約100 m/s程度であり,10 ms単位の遅延が生じます.さらに,その信号を受け取った筋組織が実際に運動を始めるまでには電気力学的遅延(electromechanical delay: EMD)が50 ms程度生じます.大きな質量をもつ筋骨格系を加速させるにはまた時間が必要です.そのため,適切な行動を起こすには伝搬遅延と慣性を考慮した,先を予測する制御が必要となります.生体の中でこれに対応した働きをもつと考えられるのが,運動に先立つ筋の予備活動や神経の準備電位として観測されるものがあります.予測的に活動するこれらの事前的な活動には,知覚の情報やこれに基づき運動に先行する情報が含まれていると考えられます.[2, 4]これを逆に辿り,筋活動の末梢組織に現れる予備的な活動の計測から神経系の「予測制御」を予測し、脳内で処理される主観的な空間認識や意思・意図に近い情報をリアルタイムに得ることができます.また,計測対象とする筋組織は,骨格筋に限る必要はなく,血管平滑筋など不随意筋の活動に注目すると精神作業負荷の指標が得られます.[5]