研究のはじめ方

  研究の進めかたにはいくつかある.実験を重ね,積みあがったところが研究の目標であったと振り返るタイプ.ニーズを貰い受け,それに辿り着くようロードマップを埋めていくタイプ.一見無関係に見えるとっ散らかった無数の研究から,すべてに共通する一般原則を導くタイプ.魅力的なストーリーを語り,それを支えるevidenceを集めるタイプ.

  研究をはじめるにあたり研究テーマがうまく見つからない人のために,ひとつの提案.こんなことを試してみてはどうだろう.


研究版「仮想仕事の原理」

  研究の最もエキサイティングなところは,未知なる虚空に一歩踏み出すところである.その一歩の下に地面があるのかは誰も知らない.そんなところに踏み出す勇気が振り絞れない時には,架空の地平とオアシスを設定してみるのである.

  とあるニーズが有りますよねと,一旦断言してしまう.ニーズがあればロードマップは作られる.開発項目は自動的に決まる.開発項目で出現した技術はおそらくこれまでの技術の地平とは不連続なものであろう.これは一つの価値である.

  また,架空の地平(ロードマップ)を仮想的に歩いていくと,いつの間にか現実の別の地平とつながっていることに気が付くことがある.これは大変な価値である.

  こんな中から魅力的だと思う research question を見つけ,改めて,自信をもって虚空に踏み出せばよいのである.そこにはほかの人には見えなかった研究テーマがつながっているはずである.人から貰ったニーズで動くより,自分で設定した research question に基づく研究はきっと楽しいものになる.