研究の進め方

研究はそもそも,誰もまだ見たことがないものを作ったり,「ある」と証明していく作業なので,先は誰も知らないし,誰も見通しを付けてくれるものではない.したがって,先が見えないことを不安に思う必要はないのであるが,何も知らずに道を歩むのは資源の浪費である.せめて,何か見つけた時にどう対処すればよいかを知っておけば,気が安心である.これが研究の進め方である.(研究の道標ではない)


観察

現象をとにかくよく観察しよう.何が起きるのかを知るためには,その観察系で何が検出可能となっており,何が検出されないであろうかを考えよう.対象の系だけに注目するのではなく,観察系(センサ)も現象の一部であることを忘れない.

モデル化

再構成

縮約化モデルを使って既知現象や分かりやすい極端な現象例を再現できるか検証し,加えて,構成因子を再構成して未観測の新現象を予測する.このとき,research question の提起が可能となる.

逆問題.最適化(設計) 

工学が研究の視野に入っている場合は,所望の結果(現象)を得るために入力すべき原因因子をどう調整すればよいかを設計をし,またそれらが最適なパラメータとなるよう見つけることが求められる.設計問題を解くためには,順問題で計算される縮約化モデルを逆問題や最適化問題に帰着させる必要がある.このとき,これら問題が解きやすいようにモデルが縮約化されることが望まれる,この可否によって研究の目的(何を設計し,何に応用できるのか,テーマ自体)が大きく変わる(決まる)ことがある.

再現

設計した入力パラメータを実現象に適用して,所望の現象がモデルで示されたように再現することを証明する.

刊行/公表

論文を書こう.論文が査読され,公表され,査読者や読者の評価を受けて初めて研究となる.自分の主張やデータは,過去と未来に茫漠と広がるデータの中で議論され,データの意味するところやその解釈の位置づけが決まっていく.すなわち,論文は研究のスタートなのである,


これらを循環させて研究は進んでいく.また,直列のフローで進むわけではなく,各所で局所循環が必要である.すなわち,手や頭が止まるとテーマ(research question)は決まらない.