近年、ビジネスの多様化に伴い、契約書作成の重要性が増しています。しかし、適切な契約書の作成方法について悩まれている方も多いのではないでしょうか。今回は、契約書作成における重要なポイントとコツについてご説明いたします。
契約書が重要である理由は、取引における双方の権利と義務を明確にし、将来的なトラブルを予防する機能を持っているためです。特に重要なのは、契約条件の明確化です。
契約書作成における最も基本的なポイントは、「明確な文章表現」です。具体的には、主語と述語の関係を明確にし、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識した記載を心がけることが重要です。例えば、「商品の納品を行う」という表現ではなく、「乙は、本契約締結日から14日以内に、甲の指定する場所に商品を納品するものとする」というように、具体的に記載します。
また、金銭に関する条項については、特に慎重な確認が必要です。支払いの条件、金額、支払期日、支払方法などを具体的に明記することが重要です。そのため、以下の3点に特に注意を払うことをお勧めします。
1. 支払金額の算定方法を明確に記載する
2. 支払期日と支払方法を具体的な日付や手段で示す
3. 遅延損害金の発生条件と計算方法を明記する
加えて、責任の所在についても明確な記載が必要です。例えば、契約不履行時の対応、損害賠償の範囲、免責事項などについて、具体的な条件を記載することが重要です。特に、免責事項などがある場合は、具体的なトラブルをイメージして、本当に問題が起こってしまった場合に相手方に責任を追及できなくてもよいのかということを検討しましょう。
契約書は長く複雑なものになりがちで、自分一人で作成していると思わぬミスや思い込みが入ってしまう可能性が高いです。そのため、必ず第三者にチェックをしてもらいましょう。不安な点がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。特に、重要な取引や高額な契約については、法律の専門家によるチェックを受けることで、将来的なリスクを大きく軽減することができます。
このように、契約書作成においては、明確な条件設定と具体的な記載が重要です。これらのポイントを意識することで、より確実な契約書を作成することができます。皆様の契約書作成の一助となれば幸いです。
前回は、「司法職務定制」の制定により代理権を持った「代言人」が登場し、現代の弁護士制度に繋がって行くというお話をしました。今回はその続きとなります。
司法職務定制が制定されたのは明治5年ですが、翌年の明治6年には「裁判所取締規則」が制定され、弁護士だけでなく裁判所の制度も整備がされていきます。そのような中で、明治9年には「代言人規則」が定められました。
この代言人規則の最大の特徴は代言人試験を受けて合格しないと代言人となれないことを定めたことです。これが現代の司法試験のルーツとなります(代言人試験に合格して免許を得た免許代言人こそが弁護士のルーツであるという考え方も存在するようです。)。
この代言人試験ですが、試験するべきは主に4つの能力とされました。それが、①布告布達沿革の概略に通する者、②刑律の概略に通する者、③現今裁判上手続の概略に通する者、④本人品行並に履歴如何です。
私なりに超訳してしまうと、①~③は現代で言うところの憲法・行政法・民法・刑法・各手続法に精通せよということで、これらは現代の司法試験の試験科目にもなっています。
面白いのは④で、免許代言人には法律の知識と並んで品行方正な人格を明確に求められたということです。現代でもロースクールではもちろん、弁護士になった後も定期的に「弁護士倫理」を学ぶことになっており、「品行方正な人格」はとても重視されています。これは弁護士がいわゆる「お金と犯罪」が関わる仕事をすることが多いため、正義感や使命感を持っていないと道を踏み外してしまいやすいからなのではないかと思います。
実際に、免許代言人にはこうした正義感・使命感を持った者も多く、当時は政府の言論弾圧を受けて自由民権運動が盛り上がる時代だったのですが、免許代言人の中には法律の知識を活用して、自由民権運動をリードしていた者も多いようです。
このような歴史を知ると、あらためて私の代まで引き継がれ、磨かれてきた弁護士の責任の重さと面白さを痛感します。
弁護士業界に携わる者として一度は弁護士の歴史を学んでみようと思い「弁護士の誕生」(谷正之 著)という本を読んでみました。そこで、今回は弁護士の成り立ちの歴史をざっくりまとめてみました。
同書によりますとおそらく弁護士のルーツとなっているのは、江戸時代の「公事師」と呼ばれる人たちのようです。江戸時代当時は法典や裁判所のような整った法制度はなく、庶民は「恐れながら御訴訟申し上げ奉り候」と恐縮しながら、奉行所に訴状を提出していました。公事師は代理人としての権限を有していなかったので、基本的に本人が訴訟手続をしなければなりませんでした。もっとも、複雑な訴訟書類を作成したり、訴訟の手続をアドバイスしたり、和解の仲裁に入る等を公事師は行っていました。
明治時代に入ると、西洋から近代的な裁判システムの考え方が入ってきました。その考え方を参照し日本でも「司法職務定制」が制定され、制度としての「代言人」が登場します。代言人は、自ら訴えることのできない者のために、これに代わってその訴えの事情を陳述し、「冤枉無からしむ」ことが職務と定められています。
この制度には大事な点が2点あります。
1つ目は、公事師には認められていなかった訴訟代理の権限が代言人には認められたことです。そのため、より現代の弁護士制度に近づき、この代言人こそが弁護士のルーツであるという考え方も存在します(もっとも、幕末の公事師の多くは代言人になったそうです。)。
2つ目は、「冤枉無からしむ」=罪のない人が罰せられないようにすることが、代言人の職務と定められたことです。あたりまえのことのように聞こえますが、弁護士の核心を端的に示した言葉だと思います。現代の民事裁判においては「罪」とは「非」とも捉えられます(ちなみに制定当初の代言人は刑事弁護ができず、民事弁護のみの代理だったそうです。)。依頼者に「非」がない部分については全力で弁護し、依頼者にも「非」がある部分については闇雲に「無罪」を叫ぶだけでなく、適切な落としどころを模索して紛争の解決を目指す。そのような在り方が、「冤枉無からしむ」という言葉に表れているように思えます。
以前のコラム(2024年1月11日【新年の抱負】)におきまして、今年のあらたな取り組みの1つとして、社会人学習コミュニティに応募をした旨をご報告させていただきました。その後、無事に応募を通過して同コミュニティに1年間参加することとなりました。同コラムで、こちらのコミュニティは「コミュニティ」というよりも「学校」に近いという表現をしましたが、先日第1回目のプログラムに参加し、まさに「学校」という表現がぴったりだなとあらためて感じました。
具体的には、1クラス40人近くの受講生(年齢も職業もバラバラでした。)が参加し、3時間程度の間に研修をこなしたり、そのフィードバックを受けたりします。研修は、率直に言ってかなり刺激が強いもので、今までの自分の姿勢やあり方を揺さぶられ、研修が終わるころにはほとんどの受講生がくたくたになっていました。それでも、楽しい体験となり、アフターでは受講生同士の親睦もかなり深められたように思えます。プログラムの随所に、「やらざるを得ない仕組み」が仕込まれており、今後1年間に渡って、新しいスキル、マインド、習慣等をかなり身につけられるのではないかという期待が持てました。
弁護士歴5年の節目を迎えた私にとっては、初心に戻ってまた1から新たにスタートするための「新学期」として相応しいもののように思え、ここで新たに身につけたことを仕事を通じて皆様に還元できることを楽しみにしております。
本日は、令和5年4月27日から新設された制度である相続土地国庫帰属制度についてご紹介いたします。同制度は、一言で説明すると、相続により取得した土地を手放して国庫に帰属させることができる制度です。
価値のある土地であれば、通常は手放すことは想定されませんが、価値のない土地を相続してしまった場合に同制度を使うメリットが出てきます。例えば、地方の山林やそれに近い原野などがこのような土地にあたる可能性があります。
このような土地は、利用価値が低く、固定資産税がかかるだけ所有していても経済的にマイナスになる可能性があります。また、自身の所有している土地上で子供などの第三者が怪我をしたような場合に、所有者が責任を問われるような可能性もありますので、管理をせずに土地を放っておくこともリスクになります。
しかしながら、今までは、自分にとって不要な土地でも相続をしてしまった以上は簡単に手放すことはできませんでしたが、相続土地国庫帰属制度により、一定の条件のもと不要な土地の所有権を手放すことが可能となりました。
具体的には、不要な土地を相続した所有者が法務局に申請し、10年分の土地管理費用相当額の負担金(例外はありますが、森林や市街化区域等の宅地・農地以外の土地は、面積にかかわらず20万円が目安となります。)を納付することで、不要な土地が自分の手を離れて国庫帰属(国の所有)となります。なお、申請の手数料は、土地一筆あたり1万4000円となります。
もっとも、すべての土地が対象となるわけではなく、一定の条件もあります。ここでは紙面の関係上詳しくは解説できませんが、ざっくりまとめると、① 土地上に建物がある、担保権が設定されているなど「他の権利」が想定される土地、② 土壌汚染されている、有体物が埋まっているなどの障害がある土地、③ 境界線などの権利関係に争いのある土地、④ 一定の規模の崖があるなどの管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地などがあたります。
以上をまとめますと、一定の制約及び費用の負担等はありますが、不要になった土地を手放し、固定資産税の負担や管理者としてのリスクから解放される可能性もあり、注目に値する制度だと思います。特に、不動産は、放っておくと何代にも渡って相続されてしまい、権利関係が複雑になりすぎてしまい、いざ処分等をしようとするときに多大な労力を要することにもなりかねません。そのため、不要な土地については早期に処分をすることが、後々の相続人にとっても良い決断となるのではないでしょうか。
本日は、法律を知るにあたってもっとも重要な事項の1つと私が個人的に考えることをお伝えしたいと思います。それは、基本的に契約は法律よりも強いということです。
「法律」と聞くとなんとなく効力が強そうなイメージを受けるかもしれませんが、実は契約=当事者同士の合意は、法律よりも強い場合がほとんどです。たとえば、お金を貸した場合の利息について考えてみましょう。現在の時点で、お金を貸した場合の利息は年3%と法律で決まっています。では、お金を貸した人と借りた人との間で利息を年10%にする旨の契約はできるのかというと、これは可能になります。これはつまり、契約が法律に優先するということになります。
一方で、利息を年100%にすることができるかというとこれはできません。なぜならば、利息制限法という法律により、利息は年15~20%が上限と定められていて、契約によってもこれは覆せないとされているからです。
このように一部では、法律が契約よりも優先されこともあります。しかしながら、法律業界では「契約自由の原則」と呼ばれる原則があり、個人間の自由な意思に基づく契約締結が重視されています。そのため、法律が契約よりも優先される場合というのは実はかなり限られてきます。
さて、以上具体例をあげてみましたが、お伝えしたかったことは、それだけ契約というのは強いということで、特に契約書にサインをするときは気を付けましょうということです。もちろん、詐欺、錯誤、消費者契約法違反などで契約の効力を争うことができる場合もありますが、「契約自由の原則」に従い、多くの場合には一度締結した契約書の効力を覆すことは難しくなります。
特に金額の大きな契約、大切な契約などはしっかりと契約書の文言をチェックして、必要に応じて相手に修正を求めることが大事になります。ただ、契約書の文言は独特の言い回しや曖昧な表現が多用されているものも多く、なかなか個人の力では難しいという場合も多いと思います。そのような場合は、一度弁護士にご相談の上で契約書のチェックや契約書の文言に関する交渉のご依頼等をすることもご検討いただけますと、大きな失敗をすることを防げるのではないかと思います。
大事な契約をする際には、その場の雰囲気に流されて契約書をよく読まずにサインしてしまうことはせずに(往々にして契約書は作成者が有利な内容に作られています。)、「一度持ち帰ってじっくり検討したい。」と相手に伝える勇気が大切になると思います。
あけましておめでとうございます。
本年は、年明けから社会に衝撃を与えるような事件が立て続けに起こっており、どことなく私にとっても激動の1年となるような予感もしています。もっとも、私個人にできることは、そうした激動に備えつつ、努力をコツコツと積み上げることに尽きると思いますので、2024年は気を引き締めて、今まで以上に研鑽に努めたいと考えます。
さて、本来であれば、2024年の意気込みを語りたいところですが、今後の大きな方向性については昨年末のコラム「弁護士5年を終えて」で語ってしまいましたので、ここでは、現在考えているより具体的な取り組みについて、この場を借りて宣言してしまいたいと思います。
実は私は、弁護士1年目からいわゆる社会人学習コミュニティのようなものに参加しています。こちらは、法曹関係者だけが参加して法律の研鑽を積むものではなく、様々な職業の方が参加し、普遍的な仕事力・社会人力といったものを育むことを目的としています。5年間参加し続けた今でも多くのことを学べる場となっており、私も学びがどんどん積み上がっていることが実感できておりますので、今後も同コミュニティでの学習を続けたいと思っています。
もっとも、弁護士5年という1つの節目を迎えたこともあり、次の10年に向けて新しいことを少しずつ取り入れていきたいと思っています。そこで、本年より上記とは別の新しい社会人学習コミュニティにも参加したいと考えています。こちらには、今現在応募をしている段階で、必ずしも抽選に合格できるわけではないのですが、少なくとも「応募をする」という1歩を新年早々に踏み出せたことが、小さいながらも今年最初の成果だと思っています。こちらのコミュニティは、「コミュニティ」というよりも「学校」にイメージが近く、1年間の短期集中で濃密な学習ができる仕組みとなっているようです。新たな環境で新たな刺激を受けて、自分自身も新しいことに挑戦していきたいと思います。
そして何よりも、こうして得た学びを日々の弁護士業務で活かし実践して、より一層ご依頼者様に貢献できるように力を発揮したいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
つい最近、弁護士になって5年の節目を迎えました。実は弁護士にとって5年目というのは、数字以上に大きな節目ではないかと思っています。
と言いますのも、私が弁護士になる以前に研修を受けていたときから、あるいは新人弁護士として働いていたときから、多くの先輩弁護士から「5年目」というのは特別な年だと聞かされていました。それは、「弁護士を5年も経験すると自分なりのスタイルが確立してくる。」とか「5年経過すると視座が高くなって新たな地平が開ける。」というようなポジティブな面もあれば、「弁護士は5年も経ってしまうと今後もう埋められないだけの実力差が出てしまう。」というようなネガティブな面もありました。私は、この5年間どちらかというとネガティブな面の方をずっと意識してきました。今後もずっと弁護士としてご依頼者様に貢献していくためにも、最初の5年で溝をあけられるわけにはいかないと考え、自分なりの試行錯誤を繰り返してきたように思います。その結果として、少しずつ結果を出すためのスタイルも定まってきて、今までよりも1段階広く深く事件を見れるようになるというポジティブな面が実感できてきたように感じています。
同時に、自分独りの力だけでは間違いなくここまでたどり着けなかったと思います。私がこうして弁護士として無事に、そして満たされた思いを持ちながら5年目を迎えることができましたのも、私を支えてくれる周囲の皆さま、私にご相談をいただけるご依頼者の皆様などの多くの方のご支援の賜物です。皆様への感謝を胸に次の「10年目」に向けて精進したいと思います。
振返ってみると、最初の5年は弁護士としての基礎を中心に学んでいたように思えます。それは、法律や判例の知識であったり、明快な論理での説明であったり、書面の書き方であったり、弁護士界の常識であったりという「わかりやすいもの(見えやすいもの)」が多かったと思います。
しかし、5年目から10年目に向けて、徐々に「若手」から「中堅」に移行していく中で、これからはご依頼者様のお気持ちであったり、弁護士としての安心感や信頼感といった「わかりにくいもの(見えにくいもの)」だけれども大切なものによりフォーカスをしていきたいと考えています。なにぶん「わかりにくいもの」なので、どのように力を伸ばしていくのかまた試行錯誤の日々が始まると思いますが、少しでも良いサービスを提供するため、試行錯誤の日々を楽しみつつ頑張りたいと思います。
引き続き皆様のご支援と応援を賜れますと幸いです。
1、はじめに
高齢者の財産保護、財産管理などにおいて、近年「家族信託」という制度が利用されることが多くなってきました。家族信託は、平成18年に信託法が改正されてから、じわじわと認知が広がっている印象を受けます。
もっとも、家族信託がどのような制度で、どのようなときに利用できるのかご存知でない方も多いと思われます。実際に、家族信託の制度はやや複雑な面もあり、弁護士においても必ずしも大多数が十分に理解して使いこなせている分野とは言い難いかもしれません。そこで、今回は、家族信託の複雑な制度には触れずに、どのようなことが可能であるのか、代表的な例をご紹介したいと思います。
2、ケース1:高齢者の財産保護
家族信託の代表的な利用場面として高齢者の財産保護の役割があります。認知能力の低下してきた高齢者が、財産をだまし取られる、不要な高額商品を買わされる、押し売りをされる等の社会問題を耳にしたことのある方も多いかと思いますが、対策として家族信託が行えます。高齢者が自身の財産を家族信託すると、その財産を処分できる権限は信託の依頼を受けた人(「受託者」といいます。)に移りますので、結果として上記のような事態が生じるのを防ぐことができます。
後見制度というものを使うことでも同じような対策はできますが、こちらは裁判所が関与する手続きであるため、厳格ではありますが、私人間の契約のみでできる家族信託に比べてどうしても重い手続となってしまいます。
そのため、後見制度を用いずに、身内や信頼できる人との間だけで高齢者の財産保護をしたいという方におすすめできます。
3、ケース2:高齢者の不動産管理・処分
高齢者の認知症が進行し施設などに入所せざるを得ない場合、固定資産税のかかる高齢者の持家などは売却してしまいたいというニーズを親族が持つことがあります。しかしながら、高齢者の認知能力が失われていると不動産を売却することはできなくなってしまい、結局誰も使っていない不動産だけが残り続け、税金や管理の問題が生じるという場合があります。
また、高齢者が節税対策なども兼ねて、土地の上にマンションなどを建築して運用しようとしていたけれども、長期計画を進めている間に認知症が進行してしまい、中途半端な状態で計画をとん挫させざるを得なくなってしまう場合などもあります。
このような不動産の処分・運用などについては、後見制度では対応ができない場合も多くあります。しかし、認知能力が低下しきる前に事前に家族信託を行うことで、受託者が高齢者に代わって、不動産の売却や運用を進めることができるようになります。そのため、今後不動産の処分や運用などを検討されている方におすすめできます。
4、家族信託に少しでも興味が湧いた方へ
本日ご説明したのは家族信託のほんの一例です。家族信託は、自由度の高い契約形態であり、今まで法律上難しかったことが、家族信託を利用することにより可能となる場合もあり、個人的にも注目している制度でもあります。もっとも、冒頭に述べましたように、家族信託の制度そのものは複雑で、今ご自身が実現したいと考えることが家族信託に馴染むのかどうか独力で判断することはなかなか難しいかと思います。
実際に、私が過去に扱った事例でも、最初から家族信託をしたいという方だけでなく、高齢者保護や相続のご相談を受けているうちに家族信託制度のご利用をこちらからご提案差し上げることもございました。もし、高齢者保護、相続等でお悩みのことがございましたらお気軽にご連絡ください。
1、はじめに
相続が発生した際に、死亡した人(被相続人)が生前に運営していた会社の相続が問題となることがあります。特に、会社の株主も取締役も被相続人だけであるような、いわゆるひとり会社の場合に、被相続人が死亡してしまうと、会社の運営が止まってしまうほか、取引先とのトラブルが生じたり、支払う必要のない経費がどんどん流出してしまう可能性があります。そこで、今回は、このようなひとり会社の相続について簡単にご説明いたします。
2、相続人は会社に関する地位も相続するの?
被相続人がひとり会社の株主でもあり取締役 (代表取締役ないし取締役等)でもあった場合に、相続人はその地位も相続するのでしょうか。まず、株主としての地位は相続によって相続人に移転します。しかしながら、会社の取締役の地位は相続によっては移転しません。
そのため、ひとり会社の取締役である被相続人が死亡してしまうとその会社は取締役が不在となってしまいます。取締役が会社を代表して各種の契約を締結・解約するほか、金銭の移動を管理する権限を持っていることが多いので、取締役がいないと会社の機能が麻痺してしまいます。その結果、金銭を支払いたくても支払えない、逆に金銭を支払いたくないのに止められないという事態が生じてしまい、会社にとって不利益が生じてしまい、結果的に株主としての地位を相続した相続人に不利益が生じてしまうケースもあります。
3、相続人はどうすればいいの?
では、このような場合に相続人はどうすればいいのでしょう。取締役が不在となってしまったことが問題の原因なので、新たに取締役を選任すればいいということになります。具体的には、取締役は株主総会の決議で選出することができるので、株主たる相続人の間で株主総会を開催し、取締役を選任することとなります。また、最初からひとり会社をたたんでしまう方針をとる場合には清算人を株主総会で選任することも考えられます。
もっとも、株主総会には開催の上でいくつか法律上に定められたルールがあり、そのようなルールを守らないと効力が生じない可能性がありますので、手続きに不慣れな方は弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。また、取締役ないし清算人を選任した場合は、登記を行う必要があり、その際には司法書士にご依頼することが一般的です。その他、相続税の申告に税理士の関与も考えられますし、相続人がひとり会社の実態を調べるために、会社の顧問税理士などに連絡して必要な資料をご送付いただくことも考えられます。
このように、ひとり会社の相続には様々な士業の連携が必要となってくることがあり、なかなか個人で士業にお問い合わせをしようとすると労力が必要となります。このあたりについてはご相談いただけますと、司法書士や税理士をご紹介したり、ひとり会社の顧問税理士との連絡や協議を行うことも可能ですので、もしお困りの方がございましたらぜひお気軽にご相談いただきたく思います。
1 はじめに
最近、特にご高齢者の方の中に遺言だけでなく死後事務委任契約を弁護士との間に作成する方が増えてきているという印象をもっています。もっとも、死後事務委任契約とはいったいどのようなものなのか、遺言と何が違うのか、いまいちイメージがつかない方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回は死後事務委任契約について簡単にご説明いたします。
2 死後事務委任契約と遺言の違い
ざっくりと違いをご説明しますと、遺言は、被相続人の財産を誰に相続させるかということをメインで記載する書面であるのに対して、死後事務委任契約は、被相続人が亡くなった後の葬儀、家族等への連絡、医療契約の解除、遺品整理等の事務処理を第三者にお願いするものとなります。
遺言などで相続人に事務処理のお願いをすることも可能なので、信頼できる相続人がいるかたなどは、死後事務委任契約を作成しない場合もあります。
一方で、身寄りのない方、信頼できる相続人がいない方、信頼できる相続人はいるけど自分の死後の事務処理の負担をかけたくないと考える方などは、死後事務委任契約書を作成することに適しています。
3 弁護士と一緒に死後事務委任契約を作成することのメリット
死後事務委任契約は必ずしも弁護士と締結する必要はありませんが、弁護士と一緒に作成することには様々なメリットがあります。3つほどあげると、1点目として、自分の死後に自分の望んだとおりの事務処理がされる可能性がぐっと高まります。ご家族や知人との契約ですと、文言がしっかり定まっていないために、受任者に権限がしっかり付与されなかったり、意図が十分に伝わらない可能性があります。また、いざ自分で契約書を作成しようとするとなかなか大変かと思いますので、ご依頼いただけますとご相談者様のご希望に沿った文案を弁護士の方で作成いたします。
2点目として、たとえば遺言などで相続人に事務処理をお願いしても、その相続人がしっかり履行しない場合や被相続人の意思を無視してしまうようなこともあります。遺言の内容によっては、相続人が上記のような態度をとったがために、遺言の有効性が争われて、被相続人の願っていなかった紛争が相続人間で発生してしまう可能性もあります。
3点目として、死後事務委任契約と合わせて、遺言の作成や遺言執行を弁護士にお願いする場合に、全体で整合性のとれた契約書や遺言を作ることができます。死後事務委任契約と遺言に矛盾が生じてしまい思わぬ効果が発揮できないような事態を防ぐことができます。また、死後事務委任契約の受任者と遺言執行弁護士を同一の弁護士に設定しておくことで、受任者と遺言執行者の間に思わぬ摩擦を生じることも防げます。
死後事務委任契約についてご関心のある方はぜひ一度ご相談ください。
「遺言はあった方がいいですか?」というご質問を受けることがよくありますが、弁護士としては「はい」と答えることがほとんどです。しっかりと内容の定まった遺言があると、被相続人の財産にどのようなものがあるかが分かり、遺産分割時に「あんな財産があったはずだ!あいつが隠しているに違いない!」という疑念が少なくなりますし、「被相続人の意向であればしょうがない・・・」ということで、相続人の納得感も高くなり、紛争の可能性を下げられることが多いです。
もっとも、この遺言の内容が不明確であったり、被相続人の意思能力があやしい状況で作成されたりすると、かえって遺言が原因で紛争が生じたり、被相続人の意思どおりに遺産分割がされないような場合も生じます。このような事態を極力防ぐために、遺言を作る場合には、公正証書という形での作成をお勧めしています。
この遺言公正証書というものをご存知でしょうか。遺言の作成を考えるとき、大きく①自筆証書遺言と②遺言公正証書に分類できます。①は文字どおり、被相続人が自分自身で作成するもので、②は公証人という専門家の立会いのもとで作成する遺言です。専門家の立会いと言うとやや大げさなようにも聞こえますが、自筆証書遺言は、上記のような思わぬ問題が発生する可能性がありますし、実は意外と条件が厳しく、この条件を満たさないがために自筆証書遺言として扱えないような遺言なども意外と多い印象です。そのため、遺言作成についてご相談いただいた場合は、公正証書での作成を原則としてご案内差し上げており、実際に多くの方に遺言公正証書をご作成いただいております。
このような問題をできる限り回避し、被相続人の意思を叶えつつ、相続人の間での紛争が生じにくい遺言を作成するためにも、専門家の関与する遺言公正証書は力を発揮します。また、遺言公正証書は公証役場に保管され、作成者の死後に相続人が問い合わせて検索できるため、紛失・偽造のリスクも回避できます。
遺言公正証書をご作成される方は、一般的にはまずは弁護士にご相談いただき、弁護士の方で、ある程度の遺言案を作成した上で詳細を公証人と一緒に詰めていくことが多いです。
私も何度となく作成に携わらせていただきましたが、ポイントは、いかにご相談者様のご意向をしっかり汲み取り、公証人にそのご意向をお伝えするかということにあると考えており、ご相談者様と公証人とのコミュニケーションを大切にしております。ご相談者様のご意向をしっかり反映させた遺言書案を作成し、相続をスムーズに行えるような遺言の作成をしたいと思っておりますので、遺言の作成をお考えの方、ご両親に遺言の作成を考えていただきたい方など、ぜひご相談いただければと思います。
相続で注意したい3つの期間(相続放棄、相続税の申告、遺留分侵害額の請求)
「相続」に関する紛争と聞くと、もしかすると「親族間で長年行われる骨肉の争い」といったイメージを浮かべる方もいるかもしれません。そのイメージはある面では正しく、実際に相続の問題は弁護士に依頼しても解決するまでに数年がかかるものなども珍しくはありません。
もっとも、実は相続には非常に早期に対応しなければいけない事もあり、対応が遅れたばかりに相続人が大きな不利益を被ってしまうようなこともあります。そこで、今回は相続の中でも特に早期の対応が必要で注意するべき3つの手続をご紹介いたします。
1 相続放棄(3ヶ月)
相続人は、相続の開始があったことを知った時(だいたいの場合は、被相続人が死亡したことを知った時)から、3ヶ月以内に相続放棄をしなければなりません。相続放棄をするためには、家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
3ヶ月というのは一見それなりに長いようにも思えますが、親族などが亡くなった場合は、当初はばたばたしてなかなかゆっくり対応できる時間が取り難いものです。また、相続放棄の申述をするにあたって戸籍などの書類を集める必要がありますが、これは普段戸籍を取得し慣れていない人にとってはなかなかに手間と時間がかかる作業であり、個人的にはかなり期間はシビアだと感じています。
その一方で、例えば被相続人に多額の借金があるときなど、相続放棄の期間を過ぎてしまったばかりにその借金を相続人が負わなくてはならないという事態が生じる可能性もあります。
そのため、特に、相続放棄の期間には注意が必要です。
2 相続税の申告(10ヶ月)
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った時から10ヶ月以内となります。期限内に申告を行わないと小規模宅地等の重要な特例措置の適用が受けられなくなる他、追徴課税などを受けるリスクがあります。特に不動産などが関係し、遺産の価値が大きな相続では、相当な不利益を被る可能性がありますので、税理士などの専門家にご相談されることを推奨いたします。
また、税理士などの専門家に依頼し、しっかりとした遺産目録(遺産の種類と価値が記載されたもの)を作成しておくと、後々の遺産分割がスムーズに進みやすくなります。
3 遺留分侵害額の請求(1年)
遺留分侵害額の請求権は、相続の開始及び遺留分の侵害を知った時から1年以内に、侵害をしている相続人相手に行使をしなければなりません。
ところで遺留分とはなんでしょうか。例えば、被相続人が父親で、母がすでに死亡しており、子が兄と弟の2人の場合は、通常は子が父親の財産を2分の1ずつ相続します。しかし、父親が兄に全財産を相続させる旨の遺言を書いた場合は、兄がすべての遺産を相続できます。この場合弟は何も取得できないのでしょうか。実は、弟には遺留分が認められており、このような場合にも遺産の4分の1相当額の支払いを兄に請求できるのです。
遺留分はこのような重要な権利ですので、遺留分侵害額を請求する場合は、内容証明などの確実に請求をしたことがわかる書面で、1年以内に忘れずに請求を行うことが大切です。
以上見てきたように、相続には早期に的確に対応しなければ大きな不利益を被ってしまうような手続が存在します。相続が発生した際は、一度専門家に相談し、いつまでに何をする必要があるのかを確認しておくことをおすすめいたします。