このページは、開発経済学専攻志望で大学院進学をすることを選択肢の1つとして考えている方に一橋大学大学院経済学研究科における開発経済学専攻の教員、講義を紹介し、一橋大学大学院で開発経済学を専攻する魅力をお伝えするものです。(作成:開発経済学系教員一同)
一橋大学大学院経済学研究科、および、経済研究所には多様なトピック、地域で、開発経済学に関連する研究を行う教員が在籍しています。開発経済学では、発展途上国が直面するさまざまな課題(たとえば、貧困削減、雇用創出、教育、食糧安全保障、直接投資、保健・医療サービスの提供、環境問題、など)が研究対象となり、それは経済学が扱うあらゆる分野に及びます。
そのため、1人の研究者が開発経済学の全領域の研究指導を高度に専門的なレベルで行うことはほぼ不可能です。また、自分が研究したことのない地域についての質の高い指導も難しいものです。しかし、一橋大学ではどの分野、地域でも、誰かの研究分野としてカバーされている可能性が高く、その分野、地域で研究実績がある研究者から質の高い指導を受けることができます。
さらに、学生の指導は個人指導に加え開発経済学系教員の多くが参加して合同で開く学生セミナーでも行われるので多くの教員から研究、進路に関して、さまざまな視点、経験、知識に基づく助言を受けることができます。
このことによって、例えばケニアの教育といったトピックXを地域Yで研究する際にその組み合わせそのもので研究を行っている教員がいなくても、トピックXで実績がある教員から論文の分析手法や売り出し方などについて指導を受けつつ、地域Yに強い教員からデータや分析の文脈の理解についての助言や現地関連研究者紹介などについてのサポートを受けられることになります。
さらに、やる気のある学生が多く集まることで、ともに学び、互いに切磋琢磨することができます。なお、卒業生の主な進路は、海外大学院留学や大学教員、コンサルタントなどです。
研究者が充実している結果、開発経済学関連のたくさんの講義が提供されています。また、学部コア科目のティーチングアシスタントや、リサーチアシスタントとしての雇用機会も充実しています。
一橋大学院には経済史、国際貿易、労働経済学、医療経済学、都市経済学といった開発経済学の関連分野にも複数の教員がいます。前述のように開発経済学は多岐のトピックをカバーするので研究者の初期段階では開発経済学の中のいずれかの分野(例:教育、医療、労働、貿易など)に中心的に取り組むことになりますが、一橋大学では開発経済学だけでなく、そのもう1つの分野においても専門家になるための教育、訓練を受けることが可能です。このことによって研究者としての視野、知識、分析スキルの幅が広がります。また、大学への就職の際も複数分野の公募に応募できるようになり、就職できる確率が高まります。
開発経済学専攻の教員、および研究テーマ、研究対象地域は以下の表の通りです。また、教員がどんな研究を行っているかがわかるようなインタビューや、教員がその研究分野を解説した日本語入門文献を紹介しますので参考にしてください。学術論文はリンク先の各教員のHPからご確認ください。
注意:
1. 年度によっては指導を引き受けていない教員や合同ゼミに参加していない教員がいることもあるので、指導を希望する場合は教員本人に連絡を取って確認してください。連絡先は各教員HPにあります。
2. 対象地域については特に関わりの強いところとそこまででもないところがあります。また研究対象地域、国以外でも研究指導を引き受けることが多いので、これも詳細は教員本人にお尋ねください。
注意:年度によっては開講されていないものもあります。院生本人の興味によっては以下の科目を全部取る必要はなく、また、これ以外にも院生本人の興味に応じて取ることが推奨される科目があります。履修計画にあたっては教員に相談してみてください。以下は2022年度の情報です。
上級開発経済学A (黒崎)2022年度不開講(リンクは2019年度のもの)
本講義は、開発途上国における開発問題を考察し、開発政策を評価するために必要な開発経済学の手法を身につけるための大学院レベルの講義です。そのための材料として、マイクロファイナンスをめぐる理論と実証研究を取り上げます。ミクロ経済学に基づいた理論モデルの構築とそれを現実の途上国経済に応用し、政策効果を議論するための定量分析手法を学びます。近年の重要な潮流である行動経済学的手法やRCTについても取り上げます。
https://syllabus.cels.hit-u.ac.jp/hit_syllabus/2019/03/03_1EM41701_ja_JP.html
上級開発経済学E (Tangvatcharapong)
The goal of this course is for students to become familiar with research in development economics, especially studies that use applied microeconomic methods. We will start by reviewing the empirical methods often used in development economics in the first week, then after that, we will read and discuss research papers. The topics include education, health, gender parity, and political economy.
https://syllabus.cels.hit-u.ac.jp/hit_syllabus/2022/12/12_2EM42101_ja_JP.html
地域研究方法論(真野)
現地調査のやり方(質問票の設計の仕方など)、開発経済学などでよく使われるミクロ計量分析手法、論文の読み方とレフェリーレポートの書き方、などについて講義します。
https://syllabus.cels.hit-u.ac.jp/hit_syllabus/2022/12/12_2EJ40801_en_US.html
国際経済開発論Ⅰ(Nyamdavaa)
The course will cover advanced topics in development economics where current research is active. The topics covered in this course include poverty, growth, inequality, taxation, resource misallocation, social networks and state capacity. The focus of teaching is on articles published in the top economics journals. All lectures are based around these journal articles. A list will be supplied at the start of the term.
https://syllabus.cels.hit-u.ac.jp/hit_syllabus/2022/12/12_2EF40301_en_US.html
(参考:学部関連科目、または開発経済学に関連が深い大学院科目)
地域経済学概論B(学部科目)真野
学部レベルの開発経済学の講義。なぜ貧しい国がなくならないのかを考えるため、経済学の分析ツールを用いて発展途上国のさまざまな課題を検討します。
比較経済発展論A (森口)
In this course, we study economic development from comparative and historical perspectives, using advanced theoretical and empirical methods in economic history. In particular, we combine comparative institutional analysis based on game theory and quantitative economic history based on applied microeconomics. Main topics include the geographical and institutional determinants of economic growth and the long-run evolution of health, labor, and family.
上級環境経済学I(横尾)
環境経済学の先端的なトピック・手法を紹介し、学術論文を読むための訓練を行います。この中で、発展途上国における環境・資源・エネルギー問題を扱った論文の紹介・解説も行います。
国際経済政策論Ⅰ(黒石)
本講義では国際経済学の実証的な側面を扱います。本講義では企業に焦点を当てながら発展途上国・先進国において国際貿易から得られる原因と結果について学びます。まず国際貿易における定型化された事実について学んだのちに国際貿易上の様々なトピックについて学んでいきます。また主に最新の論文を扱うことで国際経済学のフロンティアに触れることを目指しています。
※このHPに関する質問は真野 yukichi.mano"at"r.hit-u.ac.jp ("at"を@に変えて下さい)までお願いします。