群集
シオマネキ
アユ
ミナミコメツキガニ
古いものの単なる並べ替えではなく、新しいことを知る/が起こるとはどういうことか?このような問題意識のもと本研究室では人を含めた動物の想定外な振る舞いを、個体と集団の両方のレベルで研究していきます。動物の群れは個体の集合体でありながらまるで一つの生き物のように振る舞います。この群れにおいて、一見対立する個体の自由な運動と集団の全体性は、むしろ共立する、そのような描像をカニや魚や歩行者の群れの実験とモデルを通して示してきました。こうした部分と全体の関係は、多様な感覚情報により意思決定する一個体においても見出せます。記憶情報のみを頼りに逃避するはずのカニが想定外の状況では視覚に開かれているのです。このように我々は、いかにして生命システムが、部分と全体の緊張関係のなかで特定の文脈に固定されることなく他の文脈に開かれていくか、をテーマに研究していきます。
アユの群れ行動
群れ内部における個体間の位置関係は時間的に変化しないと考えられてきました。
しかし私たちのアユの群れの運動解析の結果、個体は群れ内部を縦横無尽に移動し、レヴィ歩行を行うことが示されました。個体運動の多様性は群れ形成にむしろ貢献しているのかも知れません。
H Murakami, T Niizato, T Tomaru, Y Nishiyama, YP Gunji “Inherent noise appears as a Lévy walk in fish schools”, Scientific Reports, 5, 10605, 2015 (link)
ミナミコメツキガニの群れ行動
ミナミコメツキガニは干潟で数匹から数千匹に至る群れを形成します。このカニは単体では干潟上の水たまりを嫌い入りませんが、密な群れを作ることで自発的に侵入します。この創発行動を実験的に検証し、相互予期に基づく群れモデルで説明を試みました。
H Murakami, T Tomaru, Y Nishiyama, T Moriyama, T Niizato, YP Gunji “Emergent runaway into an avoidance area in a swarm of soldier crabs”, PLOS ONE, 9, e97870, 2014 (link)
シオマネキのナビゲーション
動物は様々な感覚情報を統合して正確なナビゲーションを実現しますが、逃避行動等の時間的制約がある中での意思決定様式は多くが不明でした。私たちはシオマネキが逃避行動においてリアルタイムな情報探索を伴う柔軟なナビゲーションを行うことを示しました。
H Murakami, T Tomaru, YP Gunji “Exclusive shift from path integration to visual cues during the rapid escape run of fiddler crabs” Animal Behaviour, 144, 147-152, 2018 (link)
歩行者のレヴィ歩行
人混みを縫って歩くとはどういうことか?歩行者は群集の中で自らの進路を見つけるため他者と運動を予期し合います。私たちは、歩行者が対向して行き交う流れの中で、この歩行者の運動パターンが動物の探索行動で見られるレヴィ歩行として記述できることを示しました。
H Murakami, C Feliciani, K Nishinari “Lévy walk process in self-organization of pedestrian crowds” Journal of the Royal Society Interface, 16 (153), 20180939, 2019 (link)
歩行者集団における相互予期
歩行者集団において、各歩行者が他の歩行者と互いに動きを予期し合うことによって、集団全体の自律的な組織化を促進していることを明らかにしました。
H Murakami, C Feliciani, Y Nishiyama, K Nishinari, "Mutual anticipation can contribute to self-organization in human crowds", Science Advances, 7, eabe7758, 2021 (link)