これまでの研究成果について思いつくままに、まとめてみようと思います。あまり堅苦しくならないようできるだけざっくばらんに書き進めるつもりですので、物理的に精確ではない表現が出てくるかと思います。その辺りはご容赦して読み進めていただけますと幸いです。
電荷と磁荷の異方的分布を表したもの。時間反転対称性と空間反転対称性の偶奇性(パリティ)で次の4種類に分類出来ます:電気多極子、磁気多極子、磁気トロイダル多極子、電気トロイダル多極子。さらに各多極子は、多極子展開の次数(=ランク)で区別できます。近年の研究では、物質中において単サイト(原子サイト)における電荷・磁荷分布だけでなく、サイトクラスター型(複数サイトで構成されたネットワーク)やボンドクラスター型(電子のサイト間ホッピング)の多極子を記述することも可能であることが示されています。この多極子を用いて、物質中のあらゆる秩序状態を記述できることが多極子の概念を利用する重要な点の一つです。例えば、電磁気学でなじみ深い磁気双極子や電気双極子も多極子の一種になります(前者は偶パリティ、後者は奇パリティ)。
詳しくは以下の文献を参照ください。
[1] S. Hayami, et al, PRB 98, 165110 (2018).など
[2] 「スピンと軌道の電子論」楠瀬博明 著(講談社)
4種類の多極子とそれらのパリティ [H.Kusunose and S. Hayami, J. Phys.: Condens. Matter 34, 464002 (2022) .]
拡張型ヘックマンダイアグラム (北海道大学理学院物性物理学専攻 統計物理学研究室HPより転載)
通常の物理応答では、物質に磁場をかければ磁化が応答し、電場をかければ電気分極が誘起されます。しかし物質によっては、電場をかけると磁化が発生(電気磁気効果)したり、圧力を加えると電場が発生(圧電効果)するような、外場と異なる対称性を持つ応答が観測されることがあります。このような応答のことを“交差相関応答”と呼びます。この交差相関応答を整理するのに役立つのが“多極子“であり、空間反転対称操作に対して奇の対称性を持つ”奇パリティ多極子“が交差相関応答の起源となります。特に近年では、従来の絶縁体における交差相関応答だけでなく、金属磁性体における電流効果(電流磁気効果、磁気圧電効果など)が注目されています。
こちらの詳細も上述の多極子のところで出てきた文献をご参考ください。
個人的に磁気相図作成が好きで(大学院生の頃に磁気相図の作成を研究テーマにしていたからか?)、これまでの研究でも相図を作り続けている気がします。一般の方に最もなじみがあるのはH2Oの温度-圧力相図(水と氷と水蒸気の三状態図)でしょうか。
私が専門としている強相関電子系の物理でも、磁気相図は物質の秩序状態に関する情報をふんだんに含んでいるため、ミクロ・マクロ測定問わず全ての研究の土台となるものです。磁気相図は、秩序変数の対称性や相転移の次数(一次転移か二次転移かはランダウ理論的にとても重要)、秩序状態のエネルギースケールなどと密接に関係しています。また、秩序状態の対称性は磁気相図の異方性として反映されます。加えて、新たな相の発見は新たな物理現象の発見にもつながるため(量子臨界点近傍の超伝導や最近だと磁気スキルミオン相のようなトポロジカル相など)、温度・圧力・磁場といった外部パラメータを変えながら新たな相の探索を行うこともとても面白い研究テーマです。
ヘリカル磁気秩序
反強磁性秩序の一形態で、磁気モーメントがらせん状に配列したもの。秩序波数の方向(らせん軸)に対して、ヘリカル面(磁気モーメントが寝ている面)が垂直な“プロパー型ヘリカル”やヘリカル面が平行な“サイクロイド型ヘリカル”などがあります。
また、その起源には大別して、空間反転対称の破れがもたらすジャルシンスキー・守谷(DM)相互作用に起因した「カイラルらせん」と磁気モーメント間の交換相互作用のフラストレーションに起源をもつ「対称らせん」の二つが挙げられます。
特に近年ではヘリカル磁性体は、磁気スキルミオン(トポロジカルに保護された特異な渦状磁気構造)やカイラルソリトン格子(CSL)、カイラル誘起スピン選択性(CISS)などが発現する母体として応用の側面からも大きな注目を集めています。
こちらは日髙が筆頭著者の論文ではなく、研究室OBの山本君が修士時代の研究成果を一般企業に就職後に発表したものです[1]。まず、論文のタイトルにあるNegative magnetizationを日本語でどう訳すかですが、“負の磁化“と呼ぶのが良さそうです。通常の磁性体は、外部磁場を印加すればゼーマン効果により磁気モーメント達は磁場方向と同じ向きを向きます。これが外部磁場ゼロでも自発的に起きれば強磁性となります。一方で、反磁性という磁性もあって、この場合は外部磁場と逆法方向に磁化が生まれます。有名なのは超伝導の完全反磁性(マイスナー効果)ですが、これらは外部磁場に比例した反対向きの磁化が発生します。
では、TbNiC2の“負の磁化“は何が違うのか?これは、数百ガウス程度の弱磁場下でこの物質を冷却し、反強磁性秩序温度より系の温度が下がったときに、外部磁場方向と逆向きに自発的な磁化が生まれる、いわば強磁性が外部磁場方向と逆向きに発生しているとても不思議な現象です。この研究を紹介しているJPS Hot Topicsの記事では、N極が地磁気によって南極を指す異常なコンパスになるとして説明されています[2]。実は負の磁化という現象自体はこれまでにも報告があり、Neelによるフェリ磁性モデルなどが磁性の教科書に記載してあります[3]。
本論文では、TbNiC2という物質でこの“負の磁化“を新たに発見し、さらにその発現機構がこれまでに提案の無い「反強磁性秩序と電荷密度波(Charge density wave: CDW)の位相結合」にある可能性について報告しています。この物質は、高温域でCDW秩序を起こし、面白いことに低温の反強磁性秩序はこのCDWと同じ秩序波数(周期)を持ちます。しかし、これらの波の位相は同位相になるか180度ずれた位相になるかには自由度があり、ちょうど同位相になった時に“負の磁化“が発生するというモデルです。この他にもフェリ磁性とか結晶場効果など色々考慮しているのですが、その詳細は論文をお読みください。
[1] M. Yamamoto et al., JPSJ 95, 053703 (2026). https://doi.org/10.7566/JPSJ.95.053703
[2] M. Yamamoto et al. JPS Hot Topics 6, 027 (2026).https://doi.org/10.7566/JPSHT.6.027
[3] 例えば、「化合物磁性 局在スピン系 安達健五 著 (裳華房)」
TbNiC2の帯磁率 [1]
TbNiC2の負の磁化発生モデル [2]
UNi4Bは金属で初めて交差相関応答の一種である電流誘起磁化が見つかった反強磁性体(反強磁性転移温度TN = 20.4 K)として注目を集めており、金属磁性体における交差相関応答物質の代表例としてしばしば挙げられます。磁性を担うウランの磁気モーメントがハニカム構造(ハチの巣構造)の上に渦上に秩序していると長年考えられており、2014年にこの磁気構造がサイトクラスター型の奇パリティ多極子の一種である「磁気トロイダル双極子秩序」とみなすことができると提案がありました(北大物理の速水先生の成果[1])。速水先生の提案の最も面白い点は、この磁気トロイダル双極子秩序が電流誘起磁化を引き起こすということです。そこで2018年に我々の研究グループで実験的検証を行ったところ、実際にこの物質において電流誘起の磁化の観測に成功しました[2]。
しかし、この電流誘起磁化の実験では、理論予測とは異なる結晶軸方向への電流印加でも磁化が誘起されるという課題も残されています。このことはそもそもの反強磁性秩序構造(の対称性)がこれまでの理解と異なっている可能性を示唆しています。実際に、UNi4Bの結晶構造は六方晶ではなく、そこからわずかに歪んだ直方晶であることも明らかになっています[3]。理論的にもこの物質の磁気構造は、「磁気トロイダル双極子秩序」ではなく、「トライフォース秩序」(ゼルダの伝説というゲームのあのトライフォースです)だという提案が2023年になされていますが[4]、未だ磁気構造の同定には至っていません。
[1] S. Hayami et al., PRB 90, 024432 (2014).
[2] H. Saito et al., JPSJ 87, 033702 (2018). https://doi.org/10.7566/JPSJ.87.033702
[3] C. Tabata et al., JPSJ 90, 064601 (2021). など
[4] T. Isitobi, et al., PRB 107, 104413 (2023).
UNi4Bで提案されている反強磁性秩序構造[4]
(a) 磁気トロイダル双極子秩序、(b) トライフォース秩序
UNi4Bで観測された電流誘起磁化[2]
UNi4Bの磁場角度分解磁気相図 [5]
UNi4Bの電流誘起磁化の起源の解明、つまり奇パリティ多極子秩序の同定のためには、その反強磁性秩序構造の持つ対称性を精確に把握する必要があります。そこで我々は2025年に、本物質における磁場角度分解熱膨張・磁歪測定を行い、反強磁性秩序に関する磁場-温度相図の回転対称性についての論文を発表しました[5]。この研究のポイントの一つは、これまでの研究で前提とされていた六方晶構造ではなく、正しい結晶構造である直方晶軸を基に実験を行ったことです。この研究から、ハニカム面を含む面内における磁場-温度相図は、直方晶の二回回転対称でもなく、トライフォース秩序の三回回転対称でもなく、六回回転対称性を持つことが明らかになりました。このことは、本物質の反強磁性秩序にはわずかに歪んだ擬ハニカム構造の持つ(ほぼ)六回の回転対称性が色濃く反映されていることを示しています。
[5] H. Hidaka et al., PRB 112, 144418-1-6 (2025). https://doi.org/10.1103/vdxg-n9hk
CeCoSiは、非共型の正方晶構造をもつ4f電子系金属化合物です(このようなグライドやらせん操作を含む非共型構造は多極子の観点から近年特に注目を集めている構造になります)。この物質は低温TN=9Kで反強磁性秩序を、TO = 12 Kで非磁性秩序(ここでは時間反転対称性を破らないという意味)を示します[1,2]。この非磁性秩序はその起源が未解明のために“隠れた秩序“と呼ばれています。この非磁性秩序は偶パリティ多極子の電気四極子秩序だと考えられていた一方で、Ce-4f電子の持つ結晶場基底状態は電気四極子の自由度を持たないという矛盾点があったためです。その後、X線散乱実験が行われ、この隠れた秩序は構造相転移を伴うことが明らかになりました(現在では正方晶から単斜晶への構造変化と考えられています)[3]。
我々は、磁気相図の異方性を調査することで、“隠れた秩序“の起源を対称性の観点から解明しようと研究を行いました。単結晶試料は富山県立大学の谷田先生からご提供いただき、電気抵抗・磁化・比熱といった基本物性測定を精密に行い、主要な結晶軸三方向(正方晶[100],[110],[001])に対して磁場―温度相図を完成させました。この結果、磁場を[100]方向に印加した場合に”のみ”隠れた秩序相内で磁場誘起相が現れることを発見しました[4,5]。この相図の異方性は秩序変数の対称性をあらわに反映させたものです。この結果について理論家の石飛氏の協力のもとランダウ理論を基にした解釈を行い、隠れた秩序の秩序変数はEg型(Ozx±Oyz型)の対称性を持っていることを提案しました。この結果はX線散乱など他の研究結果とも整合するものであり、本物質の隠れた秩序に関する今後の研究における重要な指針となるものです。
[1] H. Tanida et al., JPSJ 88, 054716 (2019).
[2] M. Manago et al., JPSJ 90, 023702 (2021).
[3] T. Matsumura et al., JPSJ 91, 064704 (2022).
[4] H. Hidaka et al., JPSJ 91, 094701 (2022). https://doi.org/10.7566/JPSJ.91.094701
[5] H. Hidaka et al., JPSJ 94, 034706-1-9 (2025). https://doi.org/10.7566/JPSJ.94.034706
CeCoSiの結晶構造 [1]
CeCoSiの磁場―温度相図の異方性(模式図)[5]
I相が常磁性相、II相が隠れた秩序相、III相が反強磁性相に対応
1983年、OttらによってUBe13という物質において極低温(Tc ~ 0.85 K)で重い電子系超伝導が発見されました。それから実に40年以上たった今でもこのUBe13の超伝導の機構は解明されておらず、現在でも研究が進められています。その理解の難しさの理由はウラン5f電子の持つ遍歴・局在の二面性などにあると考えられるため、我々の研究グループでは、まずf電子状態の理解がより容易である4f電子系RBe13(R=希土類)に主に注目して研究を進めています。そして実はRBe13化合物群そのものも、以下に示すようなとても稀有な特徴を有しています。
MBe13の結晶構造
MBe13のカゴ状結晶構造
空間反転対称性を有するNaZn13型の面心立方晶構造 (FCC)を持ち、その空間群はFm-3c (No. 226, O6h) です。ここでMイオンだけに着目すると、それらはユニットセル内で単純立方格子を形成しています。さらに、注目すべきはこのMイオンは24個のBeが構成するSnub cubeと呼ばれるカゴに内包されていることです。そのために、クラスレート化合物や充填スクッテルダイト化合物で報告されているような、高対称なカゴの中でゲスト原子がガラガラ揺れる特有の原子振動“ラットリング”(赤ちゃんのおもちゃのガラガラ)がMBe13系でも観測されています。現在その存在が実験的に確認されているものはM=La, Pr, Sm, Eu, Th, Uと幅広く、MBe13系共通の特徴であることが分かっています。この「特異なフォノンとf電子の結合」がUBe13の非従来型超伝導といったMBe13の各種物性にどのように影響しているのか、現在もさらなる研究を行っているところです。
M=La, Sm, Uにおける粉末X線散乱実験から得られた原子変位パラメータの温度変化から、(1) MイオンはゲストイオンとしてBeカゴの中でアインシュタインフォノン的な振動をしていること、(2)その特性エネルギーがθE ~ 160 K 程度と通常のアインシュタインフォノンと比べてかなり低いことを明らかにしました [1]。加えて、デバイフォノンの特性温度も見積もり、θD = 700 K~900 Kとかなり高い値であることも明らかにしました。デバイ温度は物質の硬さに関係しているため、MBe13(のカゴ構造)はかなり硬い物質であるといえます(例えば、銅だと340K、クロムで630 K)。格子比熱や電気抵抗の温度依存性の観測によってもこれらのフォノンの影響を決定することが出来、その結果は粉末X線散乱実験の結果ともよく一致しています[2-4]。
このMBe13のアインシュタインフォノンの特徴をもう少し詳しく記しておきます。通常のアインシュタインフォノン場合、その特性温度はゲストイオン(今はMイオン)の質量に依存します。しかし、MBe13のθEはMイオンの種類、つまり質量にほぼ依存しません。他方、スクッテルダイト化合物などの場合は、qEはカゴ中でゲストイオンがどれくらい自由に動けるか、つまりフリースペースのサイズに依存しています。しかし、MBe13のθEはフリースペースのサイズにも依存していません。これらの事実は、MBe13のアインシュタインフォノンは単純な調和振動子モデル(光学フォノン)では説明できないことを示しています[3]。
その解明のヒントとして、SPring-8の筒井氏らとの共同研究である非弾性X線散乱実験から、ブリルアンゾーン境界付近でほぼ平らなフォノン分散が観測されています。そのエネルギーが比熱測定などから見積もられたアインシュタインフォノンの特性温度とちょうど対応していることから、これがMBe13系の低エネルギーアインシュタインフォノンの起源であると考えられます[5]。
[1] H. Hidaka et al., Physical Review Materials 2, 053603-1-7 (2018).
[2] H. Hidaka et al., Journal of Physical Society of Japan 86, 023704-1~4 (2017).
[3] H. Hidaka et al., Journal of Physical Society of Japan 88, 034708-1~6 (2019).
[4] R. Felten et al., Europhys. Lett. 2, 323 (1986).
[5] S. Tustsui et al., JPS Conf. Proc. 30, 011115 (2020).
RBe13系を通して希土類イオンの価数は3価です(CeBe13は除く)。一般には価数揺動系と呼ばれるSmやEuでも典型的な3価を示すことが特徴で、Eu3+化合物の貴重な典型例としても重要です。そして、このR3+の持つ4f電子が本系の磁性の主役で、伝導電子との混成がほとんど無い非常に局在した状態を持ちます。そのために、結晶場状態をとても精確に解析・議論することが可能です。
これまで低温の磁気秩序状態は、重希土類系RBe13で共通してプロパーヘリカル磁気秩序を示し、その秩序波数ベクトルもq ~ (0, 0, 1/3)と共通していることが過去の多結晶試料を用いた研究から示されていました。一方で、軽希土類系については磁気秩序状態に関する詳細な研究報告が無かったことから、我々の研究グループでは単結晶試料の育成とその物性測定を行い、結晶場状態や低温秩序状態について調査を行っています。
GdBe13でのヘリカル磁気秩序について純良単結晶試料を用いた詳細な電気抵抗・磁化・比熱の実験を行いました[6]。過去の多結晶の研究で指摘されていたように、本物質のヘリカル秩序が対称ヘリカルで通常議論される一次元強磁性層モデルで説明できることを確かめました。そこからさらに、交換相互作用間のフラストレーションの起源がRKKY相互作用にあり、秩序波数を決定していることを指摘しました。RKKY相互作用による磁気相互作用は伝導電子(フェルミ面)を媒介とするため、4f電子の伝導電子への混成が無い、つまり類似のフェルミ面を持つRBe13ではこのGdBe13のモデルが共通して利用できることが期待されます。
一方、このモデルでは磁気モーメントの向き、つまりヘリカル面の向きまでは決めることができません。ヘリカル面の向きを決める起源は磁気異方性となりますが、軌道角運動量Lを持たないGdBe13では結晶場効果による磁気異方性が期待されません。そのため(初等電磁気学で学ぶ)磁気モーメント間の双極子-双極子相互作用がその起源となり、実際に計算してみると確かにヘリカル面が波数ベクトルと垂直であることが示されました。この我々の研究により、RBe13系におけるヘリカル磁気秩序の基本的な形成機構が示されました。
次に軌道角運動量を持つSmBe13の磁気秩序状態について記していこうと思います。SmBe13の磁気秩序がヘリカル秩序である確定的な証拠は未だ得られていませんが、我々の電気抵抗・磁化・比熱の実験で得られた結果の類似性を見る限りヘリカル秩序である可能性が非常に高いと思われます[7]。併せて、結晶場レベルスキームについて過去の報告からの修正も行いました。さらに、北大・井原先生との共同研究である単結晶NMR測定により、その磁気構造の微視的調査も行いました[8]。本物質の秩序がヘリカル秩序だと仮定した場合、そのヘリカル面は重希土類系のように波数ベクトルに垂直な状態(プロパー型)ではなく、波数ベクトルに平行なサイクロイド型でもなく、波数ベクトルから中途半な角度を持った「傾角ヘリカル」である可能性を初めて指摘しました。
[6] H. Hidaka et al., Physical Review B 102, 174408-1-10 (2020).
[7] H. Hidaka et al., Journal of Physical Society of Japan 86, 074703-1~6 (2017).
[8] H. Hidaka et al., Journal of Physical Society of Japan 90, 093701-1~5 (2021).
GdBe13のヘリカル磁気秩序に対する
一次元強磁性層状モデルの適用[6]
SmBe13の傾角ヘリカル[8]
LaBe13の超伝導 [2]
UBe13以外にも非磁性MBe13化合物で超伝導が観測されています。我々の育成した単結晶LaBe13においてTc ~ 0.53 Kで超伝導を観測しました[2]。この値は過去の多結晶試料の結果より、高い転移温度となっています。また、カレル大学との共同研究により、ThBe13(Tc ~ 0.13 K)とLuBe13(Tc ~ 0.63 K)でも超伝導の発現を報告しています[9]。
これら超伝導はUBe13とは異なり電子-フォノン結合に起因した従来型超伝導だと考えられますが、低エネルギーアインシュタインフォノンの存在がこの超伝導に影響している可能性があります。
[9] K. Uhlirova et al., Physica B 536, 516 (2018).