ここでは,代表的な国内外の政治経済学の教科書と論文を紹介する。学部や大学院で学ぶ標準的な経済学には豊富なリーディングリストが存在する。他方で,政治経済学のそれは,とりわけ日本において乏しい状況である。政治経済学の範囲や定義はコンセンサスが難しい問題であるが,ここではわたしが関心を寄せる,ポストケインズ派,レギュラシオン,制度の政治経済学に絞る。しばしば異端派経済学とよばれる分野だ。
この分野についても多少の総合的文献案内はある。例えば,海外については,英国を中心に運営されているPKESもポストケインズ派の研究を中心に,それをオープンにしている。代表的研究者のSyllabasをあたるのもよい。日本でも,以下に示す教科書の巻末をひらけば,リーディングリストや発展的学習のための文献が紹介されており,この分野を集中的に学修したいものは,そのリストを出発点に芋づる式的に関心のある文献にあたるのがよい。しかし,書籍は一度出版されれば,改訂の機会はまれであり,時間とともにリストの内容は古くなる。他方でネットのメリットは,その迅速な公表,柔軟な改訂,広いアクセスなどにある。日本における異端派経済学は,いろいろな理由でこのメリットを活かしきれていない。
このサイトでは2000年以降に出版されたものに絞って,代表的な国内外の政治経済学の教科書と代表的な論文を紹介する。教科書はとうめん5冊までにする。Simple is best。これらの教科書に通じる代表的な論文については,あまり古すぎない範囲で,それ以前のものを限定的に含める。傍証に頼らず,原典を読むことで,今でも引用・参考される研究が,そもそも何をどのように考えたのか,より明確に理解することができる。リストとレベルはわたしが主観的に選んだものであるが,この分野に通じたものであれば,よく知られているものであり,その意味である程度の客観性は担保されていると思っている。初級は経済学を知らない人が読んでもじゅうぶん理解できるものを,中級はその知識をもとに読めるものを,上級は専門論文を読み,書くのに必要な知識を得るのにとくに役立つものを選んでいる。これらには,標準的な経済学にはない醍醐味があるはずだ。それを探してほしい。あるいは批判的に考えてほしい。ときに現実問題として話題になる異端派の経済政策についても,それがどのような理論から導かれるのかを理解する手掛かりにもなるはずだ。
なお,数を限っているいる以上,またわたしの知識にも限界がある以上,優れた教科書や論文にもかかわらず漏れたものはとうぜん存在する。これに不満があれば,このサイトをもとに自由に発展的なリストを創ればよい。学問が進化するものである以上,以下は常にβ版である。