図2の計算値は、量子モンテカルロ法による交替の無い場合の磁化曲線となっています。2/3磁化プラトーを含めた実験結果を非常に良く再現し、J/kB = 9.0 Kと見積もられました。基底状態がフェリ磁性状態であっても、有限温度の効果があるために、ゼロ磁場近傍で自発磁化はなく常磁性的な振る舞いを示します。プラトーの前後で見られる僅かな違いは、有限の鎖間の磁気相関によるものと考えらえられます。交替の影響を検証するために、交替比J’/Jを変えて磁化曲線を計算した結果、大まかに0.7 < J’/J < 1の範囲であると判断することができました。
図4は磁化率 となっており、約4.8 Kで不連続的な変化が見られています。これは長距離磁気秩序への相転移を示唆しています。転移温度以下では発散的な傾向を示さないことから、基底状態はフェリ的ではなく反強磁性的であることが分かります。これは鎖内のフェリ磁性状態が鎖間の反強磁性相関によって結合することで、系全体として反強磁性状態になっていることを意味しています。図4のインセットは対応する磁化率と温度の積 となっています。約25 K付近に極小値が観測されており、これはミックス型スピン鎖の特徴の一つとして知られています。高温側からの減少はs = 1/2とS = 5/2の間の支配的な反強磁性相関による合成スピン2の形成に起因した振る舞い、極小値からの増加は一次元鎖内のフェリ的な状態の形成による増加、として理解することができます。実際に、磁化曲線の場合と同様な量子モンテカルロ法(QMC)による計算結果は極小値をよく再現しています。温度低下に伴う実験結果との違いは、磁気相転移を誘起する鎖間磁気相関の影響となっています。
図5は比熱Cpのゼロ磁場での低温領域の測定結果となっている。磁化率と対応する温度TN = 4.8 Kに、長距離磁気秩序への相転移を示唆するシャープなピークが観測されています。TNよりも低い温度領域では、Cp/Tは明瞭にT1/2に比例する振る舞いを示しています。これは、ミックス型スピン鎖で予想されているギャップレスな強磁性マグノン励起モードの寄与を示す重要なデータとなっている。一方で、Cpの温度依存性にはT1/2項に加えて線形項の寄与もあり、全体としてはT3/2に近い温度依存性を示している。これは、鎖間の磁気相関の影響で、一次元的な反強磁性励起モードも同様に低温比熱に大きく寄与していることを示唆しています。