2022. 12. 2 ~ 12. 12
個展「青いプール」
ギャラリートモドール
2022. 12. 2 ~ 12. 12
個展「青いプール」
ギャラリートモドール
今年の夏も猛暑が続いた。
そのため、休日には小さな子供がいるであろう家々の庭や軒先やベランダには、ことごとくビニールのプールが置いてあるのが目についた。
それらはだいたい青っぽい円形をしており、実際、かなり以前は私の子供たちも暑い夏にはお決まりのようにその中で遊んでいたし、はたまた私自身も幼い頃にその小さな青いプールで遊んだ記憶さえある。
それは家で手軽にお金を掛けずに水遊びをしながら暑さをしのぐにはもってこいだし、その中で子供が水しぶきを上げてはしゃいだり、そばで一緒に水に浸って目を細めている親の様子も少なくともそこだけは平和で安全地帯であるかのように見える。しかし、そこは、本当に平和で安全な場所なのだろうか。
今年も外国では長く戦争状態が続き、悲惨な状況は毎日のようにメディアから流れてきていた。この現実のギャップを思うと心穏やかではいられない。
私は次第に、その青いプールが安全と危険、あるいは生と死の狭間に点々と浮かびあがる謎の青信号のように見えはじめた。それは今という時代の不確かで不可解な部分を象徴しているように、私の平和で静かな闇の中に今も青く光りながら点滅している。
私たちはいったいこの先何処へ行こうとしているのか。
けれど、どこかへ向かうにせよ、この世界は一方で命のきらびやかさをも大事に抱え続けている。
そして、小さくて、かけがえのない時間は、その暗澹としたバックグランドによってますます輝いて見えてしまうという矛盾に陥ってしまう現代のパラドックス。
けれど、描くことで考え、考えることで描くという繰り返しの中で、少しずつ手を動かすことで自分なりの些細で貴重な発見がある。
その過程は苦しくとも豊かな時間だ。
今はそれだけを頼りに、この先も、自分の中のリアルと真摯に向き合っていきたいと思うばかりである。
CD " URBAN NOMAD " 2022.8.30 発売
小川倫生&三日月窃盗団によるコラボレーションアルバムのジャケットのイラスト絵