歩行獲得は乳児のロコモーションだけでなく,乳児の探索的行動や,視線コミュニケーションのような社会的相互作用にも影響を与える.視線コミュニケーションが生じる生態学的状況とその発達変化を乳児-物体-養育者の空間的な位置関係から理解するため,本研究では,母親に装着したウェアラブルアイトラッカーから日常的なアイコンタクトを縦断的に(乳児が10-15か月の間)記録したデータを,親子間の対人距離と物体の個数に焦点をあてて分析した.状態空間モデルを用いた分析によって,乳児からのアイコンタクトが生じる対人距離が,ハイハイの時間に対する歩行の時間の比とともに増加することが明らかになった.この結果は,視線コミュニケーション場面に限定されない,観察場面全体で乳児が養育者から離れる時間の発達変化では説明することはできなかった.また,養育者からのアイコンタクトが生じる対人距離は,ハイハイの時間に対する歩行の時間の比によって変化するとはいえなかった.アイコンタクトが生じた際の親子間の物体の個数は,対人距離とともに増加していた.これらの結果を総合すると,ハイハイから歩行へと移行にするにつれて,乳児が視覚コミュニケーションをはたらきかける生態学的状況が,より大きな対人距離で,それ故に多くの物体が目の前に散らかるような視覚環境へと変化していくことを示す.本研究は歩行発達に伴って生じる共有注意の発達変化について,示唆を与えるものである.
書誌情報
Yamamoto, H., Sato, A., & Itakura, S. (2020). Transition from crawling to walking changes gaze communication space in everyday infant–parent interaction. Frontiers in Psychology, 10, 2987. DOI: 10.3389/fpsyg.2019.02987. [frontiers.org]
雑記
執筆中,ケンタッキー州ルイビルであったアメリカの学会に参加し,その後,関連する研究テーマの研究者に会いにUniversity of California, Riverside校を訪問しました.訪問したラボのセミナーで研究発表をすることになり,英語でのゼミ発表に初めて挑戦しました.インタラクティブな質疑応答が全くできず,情けない気持ちになったのですが,それ以上に「憧れの研究者が自分の研究にコメントをくれる」ということが嬉しかった覚えがあります.勇気を出してラボ訪問してよかったです.
Riversideの夕暮れ
Riverside在住の友人のおすすめのタコス.絶品でした.