更新日:2026年3月29日
写真 地震発生直後の振動分布図(気象庁資料)
避難所での経験:震度7を記録した輪島市門前町で自らも被災し、避難所で3日間を過ごしました。その時感じた喪失感や、変わり果てた能登への思いがありました。
のとじま水族館との絆:幼少期、家族に連れられて見たジンベイザメの悠然と泳ぐ姿。それは自分にとって、石川の海の豊かさそのものでした。
「今」やる理由:震災、豪雨、そしてジンベイザメの死。次々と失われていく中で、「あの時感じた水の感触や感動」をデジタルの力でアーカイブし、未来へ繋ぎたいという強い願いが、この触覚VR開発の原点です。
開発環境
ハードウェア :Meta Quest3
ソフトウェア :Unity
映像生成 :生成AI(Google Veo など)
Meta Quest3が学校にあったので継続的な開発が可能であるため選定しました。UnityでVR空間の構築、およびコントローラーの制御プログラム(C#)の実装しています。生成AIで実物の撮影が困難となったジンベイザメの遊泳などを可視化するために選定しました。
Meta Quest3のコントローラーに内蔵された振動子を制御し、微細な水流の抵抗を再現しています。
UnityのSendHapticlmpulse関数を用い、以下の数値を設計の基礎としました。
amplitude(振幅/強さ):コントローラーの内部の振動子の揺れ幅を制御します。数値が固定されていると「機械的な一律の震え」になりますが、これを変数化することで、穏やかな水流に合わせた「柔らかい抵抗感」の微調整が可能になりました。
duration(持続時間):振動が続く時間を制御します。一瞬の「クリック感」ではなく、水の中に手を入れている間の「じわじわとした持続的な感覚」を再現するために不可欠な要素として追加しました。
触覚の「揺れ」の計算とフィードバッグの最適化
これらの変数を組み合わせることで、単なる通知用の振動ではなく、物理的な「揺れ(抵抗)」のシミュレーションへと進化させました。
単に、動かすだけでなく、「どの数値が最も被災前の記憶に近いか」を実機で何度も検証し、パラメータを後から切り出した(変数化した)ことが、本システムの没入感における最大のこだわりです。
視覚情報(VR映像)の構築においては、単に綺麗な映像を見せるだけではなく、失われつつある「能登の海の記憶」をデジタル上で再現することに注力しました。
Google Veoで作成したのとじま水族館の映像
現在、のとじま水族館では震災や豪雨、そしてジンベイザメの死亡により、かつての光景を撮影することが困難となっています。そこで、最新の動画生成AI(Google Veo)を活用し、独自の映像を作成しました。
再現の意図 :「ジンベイザメの悠然と泳ぐ姿」を可視化し、来場者の記憶を呼び起こすトリガーとしました。
プロンプトの工夫 :叙情的な表現を入れました。
生成した映像をVR空間内に配置する際、より「本物に近い感覚」を与えるため、Unity上で水面の質感(material)を緻密に調整しました。
Metallic(金属度):0.809
水面が環境光を反射し、底の屈折が見える状態を数値化しました。
Smoothness(平滑度):0.816
光が強く反射する「なめらかさ」を設定し、清涼感のある水質を再現しました。
Unityで値を入力中
値入力後のプレビュー画面
これらの生成AI映像と、前述の「触覚(振動)」を同期させることで、脳が「本物の水の中にいる」と錯覚する没入感を生み出しています。視覚による「理解」を、触覚による「体験」へと昇華させることが、本システムの核心です。
実際にプロトタイプを体験してもらった際の結果と、開発者としての分析をまとめます。
体験後のアンケートや感想からは、視覚と触覚の融合が高い効果を発揮していることが確認されました。
来館意欲の向上:体験者の約91%が「水族館に行きたくなった」と回答しました。
没入感の証明 :「水っぽい」「(振動で)水が流れている感じはした」といった、狙い通りの触覚フィードバックが得られました。
感情への訴求 :「感動した」という声があり、デジタルアーカイブとしての価値が示唆されました。
開発を続ける中で、改善が必要な点も見えてきました。
温度の表現 :「水の冷たさも感じたい」という意見があり、振動以外の触覚要素(温度調節機能など)の検討が必要です。
シーンの切り替え:現在の単一の体験から、より多くの水槽や場面を自由に切り替えられるUIの実装が課題です。
2026年4月:温度再現デバイスの研究開始
2026年6月:地元での実証実験(第2回)
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