遅く、重く、低い。壊れかけたエンジンのような、ボ、ボ、ボ、という音が、地面と身体を揺らす。

時折響く、金属の擦れる甲高い音が耳を裂く。

無機物と生物の融合体、クラッドの悲鳴だ。都市を襲ったシェル型クラッドは、私達の猛攻を受け、瘴気の中に逃げ帰っていく。

幾度となく繰り返した、見慣れた光景だ。


「えーい!待つのだ!ざーこ、ざぁーざぁあああああああああこ!」

「やれやれ。強固な外殻には手を焼きますね」


黒衣の少女と、白衣の女。

……いつもは5人の私達が、『7人』も居る事を除けば。


アラネオの魔女、アメリアは思案する。

5人。これはアラネオのデータベースが現在、把握している魔女の数だ。

クラッドから採取できる魔石シーラとは似て非なる魔石、『シーラコア』。

シーラコアは強力な力と引き換えに、人体を蝕む粒子を発生させる。その粒子と適合した者を『魔女』と呼ぶ。

アラネオが把握しているシーラコアは5つだ。それを超える数の魔女の存在は確認できていない。


「で?お前らはいったい何者なんだ?」


見知らぬ2人に向けて、ラガルトの魔女、ロゼットが言い放つ。

白衣の女は片腕と一体化していた重機関銃を切り離し、なにやら理解に苦しむ言動を取っている。

黒衣の少女は視線をどこかに滑らせ、何か言いたそうな顔をしている。

少女はそのまま何も答えることなく、腕輪から生み出した黒煙の中に入り、無言のまま姿を消した。

2つの地点を繋げる能力『ゲート』。どこか遠くに移動したのだろう。戦闘中に見たが、興味深い能力だ。


「ふむ。逃げられてしまいましたか。まぁ良いでしょう」


クロイが消えた地点を見つめていた白衣の女が答える。


「どうも。中央管理区クロスより参りました。私のことは、『ラヴ』とお呼びください」


文字どおり、作ったような笑い顔のまま、機械人形は恭しく礼をした。



◆ ◆ ◆


自らをラヴと名乗った白衣の女の話はこうだ。

・自分が機械人形であること

・ラヴが仕える、主の命令によって行動していること

・エンクラティアのインフラを管理する組織『クロス』の統括及び、メインコンピュータの役割を担っていること

・本来、都市の地下から出られないのだが、緊急事態のため都市機能の一部を停止し、やむなく出撃したこと


「ちょ……ちょっと待てよ!ってことは今、水とか火とか、止まってるってことか?」


恐る恐る尋ねるロゼットに、ラヴが答える。


「はい、ロゼット様。水だけではありませんよ。エンクラティア全体の浄排水機構、熱源、食料生産プラントなどが停止中です。復旧は最短で16時間後となります」

「マジかよ!!」


今日オレ洗濯当番なんだぞ!と騒ぐロゼットはさておき、ラヴの身体をよく見ると、全身のところどころに繋ぎ目がある。

腕から生えた機関銃を切り捨てていたことから、部分的に機械化している人間、という線も考えられたが、機械人形という言葉に偽りは無いようだ。

アラネオの技術の粋を集めれば、ただ動く人形程度なら作り出すことは可能だろう。

しかし、先程の戦闘で見せた戦闘力と、魔石を攻撃エネルギーに転換する未知の技術。極めつけは、どうみても自立思考している言動だ。

これらを再現することは不可能だ。過去に滅んだ文明の『遺物』であることは間違いない。


「なるほど。さっきの黒衣の少女が、君が出てきた理由かな?」

「さすがアメリア様。お察しのとおりです。ですが君ではなく、ラヴ、と呼んでほしいものです」


頬に人差し指を刺し、首をかしげながら機械人形が答える。


「あのチビがなんだってんだ?そりゃまぁ、変な能力使ってたけどよ……クラッドの相手してくれるってんなら良い話じゃねーの?」

「いや、これまでクラッドの襲撃は何度もあったが、この人形は出てこなかった」


アメリアはロゼットの呑気な感想を一蹴する。クラッドの襲撃が理由なら、もっと以前から戦いに参加しているはずだ。


「あの少女に一体何がある?」


黒衣の少女の扱うゲート能力は十分に異質だが、おそらく問題はそれ以前にある。あの少女が『現れたこと』自体が、そもそも異常なのだ。

アメリアの問いに機械人形は肩をすくめ、おどけて答える。


「それが、全くわからないのです」

「オイオイオイ!ふざけてんのかお前!?」


母ちゃんになんて言い訳すんだコラと凄むバカはさておき、事態は思ったより深刻だ。

中央管理区『クロス』の統括を名乗る機械人形が『わからない』と言ったのだ。

研究室に戻ってアラネオのデータベースをひっくり返すつもりだったが、ろくな情報は得られないだろう。


「ここ数日、エンクラティアに侵入された痕跡はあったのですが……我々も、彼女の姿を観測したのは初めてなのです。そうそうロゼット様、お前ではなく、ラヴ、とお呼び下さい」


機械人形は再度、頬に人差し指を刺して言う。

人肌と同じように、指の先端が柔らかくめり込んでいる。材質が気になるところだ。


「君は彼女の情報が欲しいが、君が外に出ると都市機能が止まってしまう。そこでクロスのお偉方は、我々に彼女への接触を依頼したい。ということかな?」

「はい、アメリア様。お話が早くて助かります。そろそろ、ラヴ、と呼んでいただけますか?」


エンクラティアに侵入、ということは、あの少女の拠点はエンクラティアの壁外にある。

ラヴは都市を離れることができず、壁外には人体に有毒な瘴気が満ちているため、人間は出歩けない。

しかも、先の戦闘から、対象がクラッドを退ける程の高い戦闘力を持っている事も解った。

瘴気の効かない者、魔女に対抗できる者。すなわち、魔女にしか頼めない調査依頼、というわけだ。


「より詳しいお話を聞いていただきたいのです。皆様、これから私の主にお会いしていただけませんか?」


面白くなってきた。これまで聞いた話は、既知の人類史の域を超えている。

クロスの統括と名乗るラヴが、さらに何者かに仕えているというのも興味深い。


「……オレはいい。はぁ……昨日兄貴にやらせときゃ良かったぜ……洗濯……」

「ボクもパス。姉さんが待ってる。アメリア、今度教えてよ」


ロゼットとミアは拒否。確かに難しい話に興味はなさそうだが、ミアは先程からこちらを見ようとしない。

クロスの管理が行き届かない、スラムに住んでいる彼女なら、謎の少女の侵入について何か知っているのかもしれない。

が、残念ながら無理に誘って来るような性格ではない。


「シャヴルールの貴族として!わたくしは伺いますわ!エンクラティアの危機なのでしょう?」


腕を組み、ラヴに睨みを利かせていたフレアが鼻息荒く答える。


「インフラが止まっているなら都市は混乱しているだろう。シャヴルールの貴族として事態を治めに行かなくて良いのかい?」

「おあいにく様。この程度のトラブルで混乱するほど、軟弱な管理はしておりませんの」


自信たっぷりに答えるフレア。結構なことだ。


「私も行くよ。アラネオの研究者として。……ルーナ、君も来たほうがいい」


少し離れたところに立ち、無言で空を見上げていたルーナにも声をかける。


「……どうしてかしら?」

「クロスの統括は機械人形だった。この事実を機械嫌いな君の信者たちが知ったらどうなると思う?」


ルーナの所属するヴァローナは、創生の女神と、その使徒である魔女を巫女として崇め、信仰する宗教勢力だ。


同時に、世界を滅ぼした原因が古代文明にあると信じ、機械科学を研究しているアラネオを根絶させるべき、と強く敵視している。

先日、アメリアもヴァローナの信徒に勾留されたばかりだ。

ラヴという機械がエンクラティアの統治機構の代表と知れば、『クロスが機械に支配されている』などと言い出すに違いない。


「……わかったわ」

「なら良かった。じゃあ、行こう」


ルーナの了承を確認したアメリアはすぐさま踵を返し、ラヴの方へと歩いていく。

アメリアの思考は既にルーナから離れ、ラヴから語られるであろう知らない歴史、知らない技術に対する期待と、興味で溢れていた。


心躍らせるアメリアの空色の髪を、風が揺らす。

探究心と知識欲。情動に満ちたその背中を、ルーナは羨ましそうに見つめていた。


◆ ◆ ◆


エンクラティアの地下。その更に奥。

ラヴに案内されたアメリアたちは、都市のちょうど中心部にある昇降機によって、地中深くに降り立った。

あらゆる文献がその存在を示唆してはいたが、確証に至らなかった。アラネオの研究者が追い求めた悲願の地。


--覆われた深淵・クロスアビス--


4人はまっすぐに伸びる、細く、暗い通路を歩いている。

巨大な金属パイプの中に、ただ足場を付けたような簡素な造り。

床に埋め込まれた、足元を照らすだけの最低限の照明が、ぽつり、ぽつりと奥へ続いている。


狭さと暗さに嫌気が差したか、落ち着かないフレア。

対象的に、ヴァローナの信仰対象として祀り上げられ、牢獄のような部屋で幽閉生活を送るルーナは普段どおりだ。

もっとも、なにかに動じるルーナを見たことなど無いのだが。

アメリア自身も、地下を拠点とするアラネオの民だ。人類未踏の地とはいえ、静かで薄暗い空間は居心地がいい。


「皆様は、クラッドの目的をご存知でしょうか」

「人類の殲滅でしょう?おばあさまからそう聞いておりますわ」


不意に口を開いたラヴに、フレアが答える。


「はい。ですが、それはあくまで、副次的なもの。クラッドの真の目的はここ、クロスアビスの破壊なのです」


これはアメリアにとっては既知の情報だ。アラネオはクラッドの分析を欠かさない。

記録からクラッドの侵攻方向を見れば、その全てが都市の中心部に向かっていることは分かっている。


「……だとすれば、あの謎の少女はクラッドの仲間ではない、ということか」

「どういうことですの?」


ラヴやルーナ、そしてアメリアと比べると、一回り背の低いフレアの歩幅は狭い。

ときおり、ちょこちょこと早歩きで距離を詰めてくる。


「あの少女はクロスに姿を補足されないまま、都市内に潜入できるんだろう?加えて先の戦闘で、クラッドを退けられる高い戦闘力があることも解った。目的がクラッドと同じなら、そのまま中心部を襲撃できるはずだ」

「それが本当だとしても、結果は同じですわ。人類を直接攻撃しても、エンクラティアを失っても、どのみち人類は生きて行けませんもの。ここには一体何がありますの?」


フレアに尋ねられたラヴは、歩みを止めることも、こちらを振り返ることもなく答える。


「この通路の先にあるのは、エンクラティアの都市管理システムの基幹部。私の仕える主たる存在でございます」


アメリアは携帯用のタブレットを取り出し、歴史に関する資料を検索する。

面白い。この機械人形は、自身を『システムの一部』と言った。そして、自身よりも上位階層にある機関を指して、『主への従属』と表現したのだ。

これは明らかに、『人間に対して説明するため』に選ばれた言葉であり、作られた設定だ。


「はるか昔、私の主はこの地にて、エンクラティアと私を創造しました。クラッドの侵攻に追われる、人類という種を守るために」

「エ、エンクラティアの創造ですって……?」


急に大きくなった話のスケールに、フレアは目を白黒させているが、これもアラネオの研究では、既に仮説として上がっている。

エンクラティアそのものの成り立ちについては、全くの謎なのだ。

周囲に存在する遺跡や、そこからの発掘品からも、要塞都市エンクラティアの存在を示唆するものはほとんど現れない。

このことからエンクラティアは、文明が一度滅んだ後に建てられたものだ、と推察されている。


「当時の人類は数百名ほど。エンクラティアも、今よりずっと規模の小さいものでした。私と主は皆様を守り、育て、長い年月をかけて都市を拡大していったのです」


ラヴの話によると、エンクラティアは必要に応じて次第に増築していったようだ。

エンクラティアは現在、その機能をほぼ失っている。中心部を除けば都市の大部分は廃墟であり、人類はその中で点々と暮らしている。


「人類が種として安定したとき、我々は人類にクラッドに抗う力を授けました」

「それが『魔女』の始まり、というわけですのね……」


フレアは何かを考え込むように、黙って視線を床に落とした。


「ここに君のご主人様が存在する限り、一握りでも人類が残っていれば種を再生されかねない……クラッドが中心部を狙う理由はそれか」


たった数百名規模の人類が、この巨大な都市全てを必要とするまでに増えたと言うのなら、いったいどれほどの年月を要するのだろうか。

これはシミュレーションできるかもしれない。研究室に帰るのが楽しみだ。


「しかしあるとき、極めて強大なクラッドの襲撃により、都市は甚大な被害を受けたのです」


先頭を歩くラヴの表情は伺えない。しかしその声色には、あたかも遠い昔を懐かしむような、寂しさや、陰りを伝えるような抑揚がある。


「主はあらゆる手段を用いてクラッドを退けましたが、代償として多くの機能を失いました。限界を超えた主は、都市を維持する最低限の機能を私に託し、眠りに付いたのです」


ラヴの話とアラネオの歴史研究に、大きな齟齬は見られない。おそらく、これは真実なのだろう。

しかし、アメリアはラヴに、ふとした疑問を抱いていた。

なぜ、機械人形に、ここまで豊かな感情表現をおこなわせるのか。その理由が解らないのだ。


「それから今に至るまで、人類は衰退の一途を辿っています」


歴史を語ったラヴが、沈黙に戻る。

ようやく我々の知る最古の歴史、遺物としてのエンクラティアが始まった。気の遠くなるような年月を思うと、言葉が出ない。

カツン、カツン、という4人の足音だけが、細い通路に響く。


「貴女のことは解りましたわ。ではあの少女は何者ですの?」


沈黙を破ったのはフレアだ。話を進めてくれる存在がいるのはありがたい。ロゼットではこうは行かない。


「詳しいことは解りません。しかし、一つだけはっきりしていることは、『別の世界線』からやってきた、ということです」

「……はぁ……別の……はぁ……」


フレアは突飛な話の連続に、疲れ切ったように大きなため息を吐き、頭を抱えている。無理もない。


「彼女の使用していた、空間歪曲を断続的に、かつ、自在に行う能力。このような技術は私の知る限り、この世界には存在しないのです」

「類似の技術はあるだろう。クラッドを封鎖する際に使用している『四方の結界』はそれに類しないのか?」


クラッドが現れた際、その侵攻を止めるために別次元を作り出し、術者と共に幽閉する結界術、『四方の結界』。


「四方の結界は、停止したエンクラティアの防壁設備を、一時的に開放することで発動します。一人の魔女が単独で、しかも、高速な空間歪曲を起こす膨大なエネルギーを持つことはあり得ないのです」


少女の使用していたゲートは、単純に2点の間を繋ぐだけではない。

3点のゲートが存在する場合は、その出入口を使用者が自在に、瞬時に決定できる。

四方の結界は広範囲とはいえ、歪曲した空間を固定するものだ、と考えれば、少女のゲート能力が異質と言うのも頷ける。


「単独で都市級の出力を持つ、目的不明の魔女の出現……となると、たしかに放置できる存在ではありませんわね」


考え込んでいたフレアの呟きを、ラヴが肯定する。


「そのとおりです。フレア様。彼女が何を目的としているかを、直ちに調べる必要があります。しかし、私はここを長時間離れることができません。したがって、壁外の調査だけは、魔女である皆様にお願いせざるを得ないのです」

「……わかった。何か見つけたら報告しよう」


クラッドの襲撃ともなれば仕方がないが、調査のためだけにラヴが外出し、16時間もインフラを止められては困る。

アメリアはこれまでの話をタブレット上で整理しつつ、関連資料をリストアップしていく。

再び訪れる、しばしの静寂の中、口を開いたのはラヴであった。


「……我が主が眠りにつく前は、短時間ですが、他の世界を観測することすらも可能でした」


その声にはまた、あたかも主人を敬うような、誇らしげな抑揚が込められている。


「どの世界でも、繁栄した人類は、次元を超えてやってくるクラッドの驚異に晒されておりました。要塞を浮遊させ、武装して戦艦とした世界。自らクラッドの因子を取り込み、人体を強化しようとした世界。滅びへの対策も様々でしたが……今はもう、どうなっているかわかりません」

いつの間にか通路は突き当り、大きな扉にたどり着いた。

ラヴが扉に近づくと自動でそれは開く。


「皆様、ご紹介いたします。こちらが我が主、エンクラティア都市機構の基幹部でございます」


開いた扉の先には、円形の広大な空間があった。天井は暗いが、数十メートルの高さが見て取れる。

中心には巨大な塔のようなオブジェがあり、その先は上へ、上へと遥か高くに伸びている。

塔の根本には小さな立方体が浮かんでおり、淡く、不思議に輝いていた。

アメリアはその輝きにしばしの間目を惹かれたが、塔の随所には垂れ下がったむき出しのケーブルや、継ぎ足されたような無数のパイプが見える。

様々な機械が狭苦しく、身を寄せ合うように立つその姿は、鋼で出来た、おぞましい、巨大な生物を想起させた。


「……光の……柱……」


塔を見上げたルーナが、小さな声を漏らす。

そびえ立つ塔の側面には、所々に誘導灯が光っていた。その姿は、光の柱、と言えなくも無い。

それにしても、ずいぶんと詩的な表現だ、と思い、ルーナの顔を見たアメリアは驚愕する。


「……ルーナ?」


普段のルーナは感情表現に乏しい。黙っているのもいつものことだったため、気にも留めなかった。

しかし今、ルーナの身体は震え、表情は恐怖に歪み、顔色は蒼白であった。


「おい!ルーナ!?」

「……フィリアの……詩……」


ルーナが震える声で絞り出した言葉、『フィリアの詩』。

主にヴァローナ勢力下において、古くから伝えられる伝承歌。ヴァローナが信仰する創世の女神、フィリアを歌った曲の名だ。

アメリアはタブレットから資料を検索し、その歌詞を表示させる。


「……なんだ、これは……」


--滅びに追われた小鳥を守った女神が、戦い、敗れ、最後に目を閉じる--


そこに綴られた物語は、先ほどラヴが語った歴史、そのものであった。


「さすが、ヴァローナの現巫女様。伝承にお詳しいのですね」


嬉しそうに笑顔を向けるラヴを見たアメリアは、この機械人形がなぜ人の形をしているのかを理解した。

都市管理システムの決定を人類に伝え、人類の動向を調査するために製作されたのだ。

文明を失った人類とシステムが、相互に干渉するためのインタフェース。

腕部の武装が着脱式なのも、『必要な時』と『そうでない時』があるためだ。


「我が主にして、停止したエンクラティアのメインシステム」


ヴァローナの信仰対象は、『女神と巫女』。

巫女の役割を『神託を伝えるもの』と解釈すれば、全ての辻褄が合う。

システムの決定を人類に解りやすく伝えるための感情表現、『人間らしさ』が必要だったのだ。

この機械人形が、最初の巫女だ。いや、そればかりか--


「人類を未来に導こうとした、自己成長型人工知能。あなた方の崇める女神、『フィリア』なのです」


--この塔が、この機械の塊こそが、創世の女神そのものなのだ。