中枢神経系に障害を持つ方が、より質の高い日常生活動作の自立を支援する知識と技術を 講習会を通じて全国のリハビリテーション従事者に普及する活動を行っています。
環境適応講習会では、中枢神経系に障害を持つ方が抱える困難性に対し、環境適応の視点で改善する介入を紹介しています。
それにより、単なる日常生活動作の自立ではなく、より快適で、動作効率がよく、長く継続できる質の高い生活動作の獲得が可能になるよう支援します。
環境、課題、個人間の相互作用に基づく知覚・運動統合過程が不可欠です。知覚・運動統合過程の援助には、神経生理をはじめ、生態心理学、認知科学、発達学、文化人類学などさまざまな分野の知見が必要です。そのような観点から、環境適応講習会では、環境・課題・個体間の相互作用に焦点を当てたアプローチをA〜Eコースの5コースに分け、講義と実技を通じて紹介しています。
いずれのコースもまだ開拓段階であり、コース内容は常に再構築しています。そして、その時々に得られた最新の知見を提案しています。いずれのコースも、臨床からの知見を重視しており、コース内容も、何度も検討を重ねたものを提案しています。
各コースは全国で開催しています。
開催コースにつきましては、環境適応ホームページをご覧ください。書籍化もされていますので、ご参照下さい。
私達は動くから感じます。感じるからその感覚に基づいて動くことができます。片麻痺者は姿勢が不安定なため、代償固定を優先して課題を遂行します。しかし、それが動くために必要な情報の獲得を阻害してしまいます。体性感覚的にも情報が得づらいだけなく、頭頚部も固定的となり、頭部に備わる感覚である視知覚や前庭覚も上手に使えない状態になります。
空間内における身体の定位は、前庭覚から得られる重力知覚、視知覚から得られる光学的な変化率の不変項、体性感覚から得られる支持面や自身の身体感覚など、異なる感覚情報の一致により可能になります。この不一致があると、自己定位が適切に行えないために、床上動作や移動といった基本動作に大きな影響が生じます。
Aコースではこのような問題に対し、平面・移動空間への適応に焦点を当てて介入する方法を紹介します。
実際に患者様に協力いただき、環境適応概念に基づく治療実践を体験するコースです。各グループは患者様の機能課題達成に向けたアプローチについてディスカッションを通じて具体化し、助言を受けながら患者様に介入して頂きます。
環境適応講習会でテーマとしている患者さんの個別的な状態とその場面、そして課題が持つ意味と可能性についての十分な考察を体験していただきます。
環境適応への理解が必要なため、A、C、D、Eコースを終了した方が参加可能です。
洗体や更衣のいずれかの機能が目立って障害されている場合、その方の機能的な障害を日常生活全般で見渡すと、ほとんど同じ問題を背景とする困難性が随所に見受けられます。しかも生活の質とか、健康の維持などを素直に考えると、むしろそちらの改善の方が差し迫っているということも少なくありません。
洗体動作や更衣動作、身繕いなどの基本動作能力は、高度に協調した中枢システムの、生存に欠くことの出来ない自律的な機能によって保証されています。従って、個別的な動作課題の検討にはいる前に、体性感覚とその中枢システムおよび身体定位反応や自律反応について検討する必要があると考えています。
Cコースでは課題内容の本質的な側面から得られる感覚情報と運動との協応関係を実現することを重視する立場から、動作形態や手順の改善に主眼を置くのではなく、また上肢の操作的な運動反応の改善よりむしろ、対象となる体幹・顔面など中枢部の自律的な探索反応の促通を提案します。また、各項目の具体的な手技とともに、正常な体性感覚の受け入れがもたらす波及的な効果についても解説します。
食事動作は基本的には、上肢の代償的な活動ではなくて、咀嚼と嚥下、そして味覚の探索が主体となるべき活動であり、それはきわめて動物的で自律的な反応であるともいえます。しかし、人間にとっては、同時に最も文化的でスキルの要求される課題でもあります。場面への適応や、上肢のスキル、食物に対する知識、食事のマナー、道具操作の技術などが、口腔内における自律的な反応と密接に関わり合っているというのが、この動作課題の特性です。
食事においては咀嚼嚥下が重要であることは言うまでもありませんが、Dコースでは、考えうるあらゆる側面から食事に関する問題を取り上げ、その対策を紹介します。
セラピストは麻痺側上肢に関して、「麻痺して動かない」「感覚がない」「どう動かしたらいいかわからない」と訴えられる事が多くあります。片麻痺者は自分の身体を客観視し、言語や視覚、知識を過剰に活用して運動学習する傾向があります。そのために、潜在的に能力を持っていても、体性感覚情報に依拠した学習は滞る傾向にあります。
Activityは姿勢反応を促すと同時に、トライ&エラーの中で自己身体への興味と気づきの体験を持たらします。適刺激として選択されたActivityと、身体感覚の統合を促すセラピストの適切な介入が、リアルな身体知覚の再獲得と上肢機能の改善をを可能にします。
Eコースでは一般的な物品を使ったActivityの特性とその活用、誘導のポイントに焦点を当てて解説します。