樹木による大気浄化効果の試算
樹木は光合成によりCO2を吸収すると同時に空気中に含まれる大気汚染物質(汚染ガス)も吸収する。
そこであらかじめ求めていたCO2の吸収量と汚染ガスの吸収量の比から汚染ガスの吸収量を推定することができる[式1]
(汚染ガス:二酸化硫黄・SO2 二酸化窒素・NO2)
[式1]
SO2吸収量 =12.7×[SO2濃度(μg/cm3)]×[年間総光合成量(kgCO2/年)]×地域補正係数
NO2吸収量 = 9.5×[CO2濃度(μg/cm3)]×[年間総光合成量(kgCO2/年)]×地域補正係数
*大気中のCO2濃度を0.63μg/cm3(350ppm 25℃)とした場合。
また樹木単木の年間総光合成量については樹木の種類、大きさ、などから試算した下のような概算表Aがある。
これは10種の樹木の検討結果を基に単位葉面積当たりの年間総CO2吸収量を樹種にかかわらず3.5kg/m2とし、
総葉面積は落葉広葉高木、常緑広葉高木、中低木に3つの樹種区分として計算した値である(-cf.1,cf2)
[概算表A]年間総光合成量(CO2)
落葉広葉樹高木
直径(cm) 樹高(m) kg/年
2 2 9
3 2 16
4 3 27
5 3 35
10 4 126
15 6 267
20 8 352
25 10 554
30 12 705
40 16 1259
50 20 1762
常緑広葉樹高木
直径(cm) 樹高(m) kg/年
2 2 6
3 2 11
4 3 18
5 3 27
10 4 91
15 6 161
20 8 267
25 10 352
30 12 554
40 16 906
50 20 1259
中・低木
直径(cm) 樹高(m) kg/年
2 2 9
3 2 16
4 3 27
5 3 35
10 4 126
15 6 267
*直径:高木はH1.3mでの直径、中・低木は根元直径
地域(気候)による光合成能力の補正係数
北海道 0.6
東北 0.8
関東 0.9
東海 1.0
北陸 1.0
近畿 1.0
中国 1.0
四国 1.0
九州 1.1
沖縄 1.3
これにより樹木の大気浄化効果を数量的に試算することが可能となる
EX)
庭に下記のような樹木があった場合の大気浄化能力を試算する。
ハクモクレン(直径10cm) 2本
ヒメシャラ(直径5cm)5本
キンモクセイ(直径10cm)3本
サツキ(根元直径3cm)30本
条件:大気中のSO2濃度0.011ppm NO2濃度0.028ppm 温度25℃ 関東地方(地域補正0.9)
全体の年間総CO2吸収量は概算表Aより
ハクモクレン 250×2=500
ヒメシャラ 70×5=350
キンモクセイ 180×3=540
サツキ 5×30=150
合計:1540kg/年 (1540×1000g)
ppmをμg/cm3に換算する。(SO2分子量64、NO2分子量46 標準状態の気体1mol:22.4L)
0.011ppm(SO2) : (64×0.011×0.000001)/(22.4×1000×(273+25)/273)=2.9×0.00001μg/cm3
0.028ppm(NO2) : (46×0.028×0.000001)/(22.4×1000×(273+25)/273)=5.3×0.00001μg/cm3
[式1]に代入すると
SO2吸収量 =12.7×0.000029×1540×1000×0.9=510.4(g/年)
NO2吸収量 =9.5×0.000053×1540×1000×0.9=697.8(g/年)
となる。
ちなみに乗用車1台から排出されるNoXは0.25g/km(平成4年Nox規制適合車)なので
697.8÷0.25=2791.2km分の窒素酸化物を吸収できる試算となる。
上記条件をベースに簡略化した樹木のNO2吸収量の目安は下表のようになる。
NO2吸収量の目安値 (単位:g/年)
落葉広葉樹高木
直径(cm) 樹高(m) kg/年
2 2 18
3 2 32
4 3 53
5 3 70
10 4 250
15 6 530
20 8 700
25 10 1100
30 12 1400
40 16 2500
50 20 3500
常緑広葉樹高木
直径(cm) 樹高(m) kg/年
2 2 11
3 2 21
4 3 35
5 3 53
10 4 180
15 6 320
20 8 530
25 10 700
30 12 1100
40 16 1800
50 20 2500
中・低木
直径(cm) 樹高(m) kg/年
2 2 2
3 2 5
4 3 11
5 3 14
10 4 53
15 6 140
*直径:高木はH1.3mでの直径、中・低木は根元直径
*地域による補正係数は1.0で試算(北海道0.6 東北0.8 関東0.9 九州1.1 沖縄1.3)
cf-1:樹木の単位葉面積当たりの年間総CO2吸収量
樹種 年間総CO2吸収量kg/m2
ユリノキ 2.8
オオシマザクラ 3.2
エノキ 3.7
クスノキ 3.2
アラカシ 3.2
トウネズミモチ 3.6
サンゴジュ 3.7
ヒイラギモクセイ 4.1
トベラ 3.7
シャリンバイ 4.2
平均 3.5kg/m2
cf-2:単木の形状別総葉量の推定
マツ類
直径(cm) m2
2 5
3 9
4 15
5 20
10 70
15 150
20 200
25 300
30 400
40 700
50 1000
マツ以外の針葉樹
直径(cm) m2
2 3
3 6
4 10
5 15
10 50
15 90
20 150
25 200
30 300
40 500
50 700
中・低木
直径(cm) m2
2 0.5
3 1.5
4 3
5 4
10 15
15 40
平均 3.5kg/m2
参考)大気浄化植樹マニュアル 公害健康被害補償予防協会