ライトコート及びアトリウムの植栽
1)計画上の留意点
光量不足にならないようにする。
室温や湿度を適切なものとする。
植栽地盤と厚さと重量を考慮に入れる。
防水対策を完全に行なう。
散水及び排水方法を考慮に入れる。
日照条件等に適した樹木を選ぶ。
メンテナンス時のアクセスが容易なものとする。
2)室温通常よく使われる室内植物を導入する場合は、室温を12-30℃の範囲に維持すること。
日較差は8℃以下であること。但し、短期間の場合は8-35℃の範囲であってもよい。
しばしば7℃以下になる様な場所には植栽しないこと。
天井高が高い場合、空間の上部と下部の温度差が極端に大きくならないようにする。
3)温度、塩素ガス濃度極端な乾燥は避ける。多くの室内植物は相対湿度が20%と低くても、土壌水分が適切であると生育上問題はない。
弱光下での高湿度は、病害を増やすので注意する。
プールサイドで通常観察されるような塩素ガス濃度程度では、室内用植物に対して有害に作用しない。
空調設計は、植栽地1m2当り1L程度の水が蒸発することを前提に設計する。
4)風空調設備機器の吹き出し近くには植栽しない。
植物に当る風の風速は0.5m/sec以下であること。(植物に弱い風を当てることは望ましい)。
5)光量
室内での植物の枯損原因のうち、照明不足が60%を占める。
屋外、屋内の明るさを比較すると下記のようになる。
屋 外 lux
夏の快晴 100,000
冬の快晴 50,000
冬の曇天 20,000
冬の雨天 5,000
屋 内 lux
明るい室内 2,000
読 書 可 能 500
居 室 200
ビルの通路 100
上記のように、明るく見える室内も屋外に比べると非常に暗いことになる。
たとえば全面に大きなガラス窓がある場合でも、窓の高さの0.5倍離れた位置では、植物の導入が困難となるほど明るさが減衰してしまうほどである。
- 6)光
室内緑化では、植物の枯損あるいは生育上良の主な原因は照度不足であることを考慮しておくこと。
少なくとも植物は、耐陰性の強い樹木や観葉植物を使用する。
外光に頼らなくても必要量の光を確保できるように設計すること。
全面ガラス張りで最高の条件を整えても外部の光の85%、一般的には40-50%程度しかとりこめない。
通常よく使われる室内用植物に対して直射日光は避ける。
真上からだけではなく斜めの方向からも照明して樹型を整えることが望ましい。
メタルハライドランプや蛍光灯のような効率の高いランプを使用する。
前者は視界に入りにくいように取り付けることが望ましい。
また、各種ランプと組み合わせて自然光に似せることができる。
たとえば、透明水銀ランプと高圧ナトリウムランプでワット比50:50とかメタルハライドランプと白熱ランプの組み合わせなど
なお、透明水銀ランプは葉の緑をみずみずしく、ナトリウムランプは花の赤を鮮やかに見せる。照明電力が同じであるとすると、低電力のバルブを多数配置し、万遍なく照明されるようにするほうがよい。
波長が400-700mm以外の光を多く含むランプは使用しない。
ランプからの熱障害を考慮に入れランプを配置する。
光ファイバーや鏡により導入される太陽光はほとんど熱を持っていないので、場所によっては太陽光が適している。
特に天窓から深いアトリウムでは鏡などによる太陽光の導入が照明方法として最も適している。植物用のランプを特に使用する必要はないが、演色性や色のバランスを考慮に入れ人工照明を計画する。
ガラス張りは側面からだけでなく、できるだけ真上もガラス張りにすることが望ましい。
一般的な室内の明るさは500-1000 lux程度で、ここに植物が必要とする明るさを持ち込むと相当眩しく感じられるので、光源が直接目に入らないにするとか、利用者がいない時間帯に強い照明を当てるようにするなどの配慮が必要である。
植物の生理上少なくとも6時間は暗くし、植物に光を当てない。できれば12時間暗くすることが望ましい
参考資料:
ランプの種類(岩崎電気)
植物栽培と光の活用
7)植物の選択照度や室温などの環境条件により、室内緑化に導入できる植物は限られてしまう。
一般的な室内の観葉植物や耐陰性の強い常緑樹などが適している 1年中室温が20 ℃前後、湿度が50%前後の環境では、落葉樹は休眠期がなく樹勢が弱るので適さない。
また、病中害の受けにくい植物を選ぶ。光がとくに弱い場所では、色付きの葉や斑入りの植物は、色が褪せたり斑が消えてくるので使用しない。
光が弱い場所では開花は期待できない
室内では、屋外と同じような生育は望めないので、空間に調和した大きさのものを用いる。
大きな植物を植える場所は、室内の環境条件に順化させたものを使用する。
また、取り替え時などでの輸送手段を考慮に入れておく。植物の搬入前に病虫害を徹底的に防除する。
土壌も同じである。環境条件がよい場所でも竣工時の見映えだけのために過剰に植えつけないほうがよい。
代表的な屋内縁化用植物リスト
■窓際や明るいアトリウム内(照度1,000-3,000lux以上)
高中木
(常緑)アラカシ、アスナロ、カナリーヤシ、シラカン、シンノウヤシ、スダジイ、ヒマヤラスギ、ユズリハ.
(落葉)イロハモミジ、エゴノキ、
低木
常緑)アセビ、カンキツ類、キョウチクトウ、クチナシ、クロトン、サボテン類、タマサンゴ、トベラ、トックリラン、ハイピスカス、ベンジャミン、マルハシャリンバイ、ヤツデ、ユッカ
(落葉)アジサイ、ブーゲンビリア
グランドカバーなど
アナナス、インパチェンス、カランコエ、キンチャクソウ、ゴシキユキノシタ、コリウス、ゼラニウム、シダ類、トケイソウ、フィロデンドロン類、ラン類、イトラン、ベコニア、ポインセチア
*落葉樹の使用にあたっては、特別な温度管理などが必要になる。
■通常の明るさのオフィス室内(照度300-1,000lux程度)
高中木
インドゴムノキ、ガジュマル、ココヤン、アロウカリア
低木
アオキ、カクレミノケンチャヤシ、セイヨウイワナンテン、ドラセナ、カボック、ヤツデ類、マンリョウ、ドラセナ類
グランドカバーなど
オモト、カンスゲ、シャガ、セントポーリア、 ツルニチニチソウ、ツワブキ、ネオレゲリア、 フッキソウ、へデラ類、ヘペロミア、ヤブラン、リュウノヒゲ、ハラン、シダ類アグララオネマ、シンゴニウム、スパティフィラム、フィロデンドロン、フクリンチトセラン、ポトス、モンステラ
※詳細は「新緑空間デザイン植物マニュアル[P176-]参照のこと。
資料:植栽と照度参照
- 8)メンテナンス
室内庭園では、植栽後の適切なメンテナンスが特に重要である。
灌水はできるだけ自動散水方式が望ましい。葉にも噴霧器などで水を定期的に与える。
室内では光量が少ないので肥料は少なめにする。
年に1回は土壌検査を行ない、問題があったら改良する。
葉の洗浄は少なくとも年2-4回程度は行なう。
病中害の発生の有無を定期的に調べる。早めにかつ適切に対策を講じる。
薬剤は人体への影響を考慮して、毒性および臭いの弱い薬剤または浸透移行性の粒剤を使用する。できるだけ物理的に駆除する。
葉面を光らす薬剤は、ヤシ類やシダ類などの綿毛の生えた植物にはかけないこと。
枯死した植物はすぐに取り除く。
強い剪定はせず、何回かに分けてこまめに剪定する。
屋外の花壇などに使用する花物は、弱光や温度変化に極めて弱いので、室内に使用する場合は1週間から10日位で取り替えなくてはならない。 熱帯性の花物は1ケ月又はそれ以上の間隔でよい