ZERO SQUARE:都市の記憶を貫く風景再生提案
〜日本橋に重層する時間を可視化し、未来へ開く都市の“起点”〜
◆ 背景と課題
日本橋は、江戸から現代に至るまで、日本の交通・経済・文化の中枢として機能してきました。その中心に埋め込まれた「道路元標」は、いわば日本の“ゼロ地点”です。しかし現在、日本橋の上空を走る首都高速道路が、空や水辺とのつながりを断ち、景観的にも心理的にも断絶を生んでいます。
東京都と国はこの課題に対し、首都高の地下移設(総工費:約3200億円)を進めようとしていますが、「景観回復=かつての空を取り戻す」という発想には限界があります。現代の都市には、**“時間の層”を活かした再編集”**という視点が求められます。
◆ 提案概要:「ZERO SQUARE」の構想
日本橋の「道路元標」を中心に、オベリスク状の立体構造物を設置し、橋上空間を歩行者広場化することで、以下の3つの価値を同時に実現します。
1.
歴史の“レイヤー”を可視化するシンボル
オベリスクは、江戸の橋・昭和の高速・令和の空を貫く「時間軸」を象徴
高速道路を「景観破壊物」ではなく、昭和の記憶の一部として扱い、重層する歴史を体感可能にする
2.
都市の“ゼロ地点”を公共空間に昇華
道路元標を中心とした「ZERO SQUARE(ゼロ・スクエア)」を整備し、東京の“原点”を祝う空間とする
地上は歩行者広場(ベンチ・オープンカフェ・イベント空間)、高速下は雨除けルーフとして活用
広場地下に「道標博物館ブース」等を整備し、日本の交通文化を発信
3.
費用対効果に優れた都市再生策
地下化に比べ、総費用は数千億円の1%未満(構造物設置・景観整備・周辺連携)
現状構造物を活かしつつ、新しい価値を加える「創造的活用モデル」
◆ 海外事例との比較
スペイン・コルドバのメスキータに見られるように、異なる宗教・文化の重層が都市の魅力となっている例は世界に多くあります。
日本橋もまた、江戸・明治・昭和・令和というレイヤーが交差する地点として、「風景の対話」を促す場に再構成すべき時期に来ています。
◆ 終わりに
景観とは“懐古”するものではなく、“記憶を重ねるもの”です。
「ZERO SQUARE」は、未来へとつながる東京の原点を、あたらしく、そして多層的に再発見するための提案です。