雇用PD制度についての経験談:メリットとデメリット

* 以下は個人の経験に基づく感想です。

私は2023年4月から日本学術振興会特別研究員PD(以下、学振PD)として研究活動をスタートしています。2023年10月には、日本学術振興会が若手研究者の待遇向上のために「研究環境向上のための若手研究者雇用支援事業」を開始したことに伴い、学振PDの受け入れ大学(横浜国立大学)が雇用制度を導入したため、受け入れ大学と雇用関係を結びました(すべての大学が本事業の導入をしているわけではありませんので、導入大学については別途確認してください)。このように受け入れ大学と雇用関係を結ぶ学振PDは「雇用PD」などと称され、従来のフェローシップ型PDとは異なります。そこで、年度途中の切り替えにより、両方の立場を経験した私の感想を述べたいと思います。もし参考にされるのであれば、以下はあくまで私の経験談で、一例であることを念頭において下さい。

まず給与については、フェローシップ型では日本学術振興会から振り込まれていたものが、雇用PDとなり勤務先の大学から税金・年金等が引かれて支払われるようになりました。フェローシップ型のときは税金や年金を別途支払う手間がありましたので、楽になりました。受入機関によって変わるかもしれませんが、扶養手当や通勤手当がつきます。インセンティブも付く大学もあるようです。年末調整もやって下さいます。以上から、給与の面からは雇用PDの方がメリットがあるのではないかと思います。

保険は文部科学省の共済に加入することになるのだと思います。フェローシップ型のときは国民健康保険でした。私の場合はそれぞれの期間が短いこともあり、保険の違いによる影響はそれほど実感していません。

次に大学での身分です。フェローシップ型では、大学の構成員ではあるが常勤職員と扱われないことがあるかもしれません(これは大学によって大きく変わるのではないかと思います)。よって、大学からメールアドレスは発行頂けるものの、使用可能なアプリケーション(OfficeやAdove)の使用が常勤職員と比較して制限される場合があります。私の場合は、フェローシップ型のときは常勤職員や学生よりもアプリケーションの使用が制限されました。雇用PDになりそのような制限はなくなったと思います。また職員証が発行され教職員の名簿にも加えられました。職員証が無いと図書館の利用が不便なので、ありがたいです。大学の研究者総覧にページができました。大学事務室にも郵便受けができ、受け入れ研究者の方に面倒を掛けなくても済むので、そこも良いかと思います。以上から、大学での身分については、雇用PDが常勤職員と扱われるのであればメリットが大きい点かと思います。

海外で長期の研究活動を行いたい場合には、雇用PDでは難しい点があるかもしれません。常勤職員と扱われる都合上、海外の大学に滞在するには報酬、労働時間、労働形態など複数のルールを気にし、大学の担当部署とやりとりする必要が出てきます。フェローシップ型の場合、守るべきルールは学振の手引きにいくつかありますが、クリティカルなものは期間の制限や(全期間の2/3まで)報酬を受け取る際の制限(雇用保険の対象とならない週20時間まで)になります。これらは比較的ハードルが低いのではないかと思います。まとめると、雇用PDの場合は大学との雇用関係に縛られる都合上、海外での長期滞在のためには考慮すべき事案が増え、デメリットがあるといえるのではないかと思います。そもそも、フットワークが軽い点が学振PDの良さの一つでもあるといえるので、ここは難しいところです。

以上、参考になれば幸いです。