論文へのアクセスや出版に関するメモです。
出版社が利益を上げるには大きく2つの要素があります [1]。
購読する個人もしくは機関が論文にアクセスするために支払う購読料。アクセス可能な雑誌や出版社は大学等機関と出版社がどのような契約をしているかによって決まります。出版社の雑誌すべての契約や、雑誌個別の契約があります。
論文を出版する際に論文の発表者が希望し支払うオープンアクセスに関する費用 (Article Publishing Charges, 略称APCs) 。発表者が研究費を使用したり、大学等機関が援助する場合があります。読者がオープンアクセスの論文にアクセスするには1つ目で触れた購読料の支払いが不要です。つまり誰でも読むことが可能になります。全ての論文をオープンアクセスで発表するオープンアクセスジャーナルも存在します。この場合、すべての出版論文にAPCsの支払いが求められます。
大学等機関や研究者側に立つと、これらの費用は高額であり、この負担に対して出版社との間でどのように折り合いをつけるかが議論となっています。そういった状況の中、新たな解決策が模索され続けています。
研究者側が取れる解決策の一つは、セルフアーカイブとして出版前の原稿を個人や機関のサーバーで公開することです。上記のAPCsを支払って公開される論文を Gold open access と呼ぶのに対し、セルフアーカイブによる論文の公開は Green open access と呼ばれます。プレプリントサーバーとしては arXiv など有名なものがあり広く使用されていますが、セルフアーカイブでは公開直前の段階である前刷り原稿 (journal proof) も公開することが可能な場合があります(雑誌、出版社による)。ほとんどの出版社が何らかの形でセルフアーカイブを認めていると言われています。
最近の例ですと、カナダ研究知識ネットワーク The Canadian Research Knowledge Network (CRKN) は Wiley や Elsevier とオープンアクセスに関する契約を交わしました [2,3]。CRKN の構成機関の研究者は APCs の支払い無しでこれらの雑誌に論文を Gold open access で発表できることが可能になりました。これまでは、出版社が機関による購読料と研究者からのAPCsという出所が非常に近い2つを同時に得ていた状況でしたので、この契約は研究者側から好意的に捉えられています。というわけで、現在CRKNの構成機関の研究者はこれらの雑誌へ論文を投稿する良い機会かもしれません。CRKN と Elsevier の契約は "from January 1, 2024, to December 31, 2026" とのことです。
2025/04/04
[1] https://www.elsevier.com/about/policies-and-standards/pricing
[2] https://www.crkn-rcdr.ca/en/crkn-announces-transformative-agreement-wiley
[3] https://www.crkn-rcdr.ca/en/crkn-signs-read-and-publish-agreement-elsevier