〜科学が明かす、心の奥に隠れた“見えないストレス”の正体〜
私たちは子どもの頃から、
「怒ってはいけません」
「泣くのは恥ずかしいこと」
「空気を読んで我慢しなさい」
そう言われて育ってきました。
その結果、本当は感じていた怒りや悲しみ、寂しさなどの感情を「感じないようにする」ことが“良いこと”だと信じてきた人も少なくありません。
けれども、感情を押し込めたままでいることが、心と体に大きな影響を与えるという事実が、近年の脳科学・心理学の研究から明らかになっています。
感情は、私たちが生き延びるための「センサー」です。
怒りは「境界線を守るため」、悲しみは「助けが必要なサイン」、不安は「危険を察知する警報」――
本来どれも必要な大切な反応です。
しかし、それを感じることに「罪悪感」や「恐れ」があると、私たちは感情を意識から締め出し、無意識の中に押し込めてしまいます。
これが「抑圧された感情(suppressed or repressed emotions)」です。
🔬【エビデンス①】
ハーバード大学医学部の研究では、「ネガティブな感情を抑圧する傾向が強い人ほど、慢性ストレス反応が高く、心身症(胃腸障害、頭痛、筋緊張など)を発症しやすい」ことが明らかにされています【※1】。
また、感情抑圧は交感神経を過剰に活性化し、心拍数・血圧・筋緊張・ホルモン分泌の乱れなどを引き起こすことも報告されています。
ここで重要なのが、「感情を抑えこむ原因は何か?」という問いです。
多くの場合、それは**幼少期の経験や家庭環境、文化的な価値観から形成された“信念”**によるものです。
たとえば:
「人に迷惑をかけてはいけない」
「泣いたら弱い人だと思われる」
「私は頑張らないと愛されない」
「他人を怒らせたら、自分は見捨てられる」
これらは、**理屈ではなく「無意識」に信じている“ビリーフ(信念)”**です。
こうしたビリーフは、自己防衛や他者との関係を保つために生まれたものですが、
成長して環境が変わっても、自動的に作動し続けるという特徴があります。
つまり:
不条理なビリーフが → 感情を抑圧させ、
抑圧された感情が → ストレス反応を生み、
心や体の症状として → 痛みや不調があらわれる
という“負の連鎖”が、私たちの中で繰り返されてしまうのです。
この「抑圧された感情×ビリーフの負の連鎖」は、
心の問題にとどまらず、体の不調としても現れます。
🔬【エビデンス②】
心理神経免疫学(PNI)の研究によると、感情の抑圧は免疫機能を低下させ、炎症性サイトカインを増加させることが報告されています【※2】。
これは、慢性痛、アトピー、消化器障害などの体の慢性症状にも関係しているとされています。
また、扁桃体(感情を処理する脳の部位)と帯状回・視床など、痛みの処理に関わる脳部位は密接にリンクしており、
怒りや不安が慢性痛の感受性を強めることが脳画像研究でも示されています【※3】。
たとえば、慢性的な肩こりや腰痛に悩む方が、
マッサージをしてもすぐに元に戻ってしまう…というのは、よくあるケースです。
こうした場合、単に筋肉の問題だけでなく、
「ずっと我慢してきた怒り」
「自分を責め続ける思考」
「誰にも言えない孤独感」
などが、身体に“緊張”という形で現れていることが多いのです。
感情と信念は、私たちの無意識の中で複雑に絡まり合っています。
どちらかだけに目を向けても、根本的な解放は起こりません。
感情を感じることを許す
自分の中の思い込みに気づく
それらを責めず、少しずつほどいていく
そうすることで、心も体も、ようやく本来の自然な状態へと戻っていけるのです。
オンサ心理療法では、
言葉で掘り下げすぎることなく、音の振動を使って感情と体の記憶にやさしく触れていきます。
また、セッションの中で気づいた「不条理な信念」に対して、
新しい視点や感覚をもって“上書き”していくサポートも行います。
抑圧された感情を感じてもいい
思い込みに気づいて手放してもいい
自分の感情や価値観を取り戻していい
こうした体験が、本当の意味での癒しと変化につながっていくのです。
抑圧された感情も、不条理な信念も、
どちらもあなたを守ろうとした結果、生まれたものです。
でも、もう無理を続ける必要はありません。
心と体をやさしくゆるめ、
もっと自由に、安心して生きられるあなた自身に戻っていきましょう。
※1: Gross JJ et al., “Emotion Regulation: Conceptual Foundations”, Handbook of Emotion Regulation, 2007.
※2: Kiecolt-Glaser JK, et al. “Psychoneuroimmunology: Psychological Influences on Immune Function and Health”, J Consult Clin Psychol., 2002.
※3: Apkarian AV, et al. “Chronic pain and brain: a review and synthesis of neuroimaging studies.” J Pain, 2009.