劇団FLAG演劇公演
『とつくに』
作・演出 伊藤海/音楽 横山起朗
2024年11月9日(土)①19:00/11月10日(日)②11:00/③16:00
みやざきアートセンター アートスペース3
――あなたの人生に、私はいますか。
宮崎のとある町に建つ一軒家。長らく務めた工芸教室を辞めた長峰佳穂が、夫とふたりで暮らしている。かつては2世帯が住む賑やかな家で、佳穂の祖父が戦後に建てたものである。ある時、上京し文学を学ぶ傍ら、自主映画制作を行なっている従弟の隆が、撮影のために帰ってくることになる。南方で発生した台風の影響が危ぶまれる中でのことだった。
長峰宅の縁側からは、およそ30メートル四方の田んぼが望める。初冬のある日の朝。黄金の穂の海が風に揺れていた、かつてのその光景を、佳穂は一杯のコーヒーを飲みながら思い起こしていた。
・・・
「何の為に生まれて、何をして生きるのか」『アンパンマンのマーチ』の一節ですが、この作品で問うのはまさにそのようなことです。前述の通り、今作に登場する人物は、外を歩けばすぐ隣をすれ違うような、ありふれた人生を歩む人々です。今作で描き出すのは、謂わばその「歩み」そのものです。歩幅も、速度も、目に映す風景も、人により様々です。役者の身体を通して、その「歩み」を辿る時間としたいと思うのです。
今作は、劇団員及び宮崎の気鋭の俳優のほか、北九州の若手として注目される劇団言魂の山口大器さんをゲストに迎えます。また、劇判音楽を宮崎出身の音楽家、横山起朗さんが務めます。過ぎ行く現在性を穏やかに、温かく捉えた楽曲たちが、物語を彩ります。