ネットゲーム依存症とは、ネットゲームのプレイ時間もしくは課金のコントロールができない病気です。ネットゲームに対して過剰に反応してしまう身体と、ネットゲームにとらわれてしまう精神面のふたつの側面が組み合わさった病気です。ふつうの人には想像もつかないほど、強力な欲求に支配されています。
ほどほどにプレイできないのは、本人の意志が弱いからでも、自制心がないからでもありません。欲求があまりにも強力なために、肉体の限界を超えてなお、プレイしつづけてしまうのです。
依存症は進行性の病です。十分な睡眠や食事が取れなくなり、生活のリズムが崩れていきます。ネットゲームが生活の中心になり、人間関係に問題が出てきます。現実の生活よりも、ネットゲームの方が大事になっていきます。生活が破綻し、孤立して、最後には社会的にも、精神的にも、身体的にも死を迎える事になります。
一般的に、若い男性がネットゲームをするイメージがあるかもしれません。しかし、年齢や性別に関係なく、だれでもなる可能性のある病気です。
病気になったことは、本人が悪いわけでも、親が悪いわけでも、ネットゲームを制作した会社が悪いわけでもありません。だれかを責める必要はありません。ただ、私たちはやりつづけると命を落とすため、ゲームをしないことを選択しています。
この病気になったら、永久にやめつづける以外に解決はありません。ほどほどに遊べるようには決してなりません。どれほど長くやめつづけていたとしても、一度でもプレイしてしまえば、強迫的な欲求に支配され、再び常軌を逸してプレイしつづけてしまうようになります。ネットゲームをやりつづけて死ぬか、やめつづけて生きるか、ふたつにひとつです。
アルコールやギャンブル依存症は、一生やめつづけなければならない病気です。アルコール依存症になったら、一生適度に飲めるようにはならないのと同じように、ネットゲーム依存症になったら、一生ほどほどに遊べるようにはなりません。アルコール依存症者にとって、今日一日最初の一杯に手をつけないことがもっとも大切であるように、ネットゲーム依存症者もまた、今日一日最初の一回に手を出さないことがもっとも大切です。
ネットゲームのプレイ時間もしくは課金をコントロールしてプレイできるかどうか、ご自身が納得するまで試してみてください。参考までに、私たちが試して失敗したことをあげてみます。
試したこと
時間を決める
曜日を決める
タイマーをかけて鳴ったらやめる
パーティープレイのみにする
ソロ(ひとり)プレイのみにする
ネットゲーム内の人間関係を絶つ
特定のイベントのみにする
イベントはやめる
目標を達成したら休止する
ウェブマネーの買い置きをやめる
ひと月に一度だけやる
3か月から半年間やめる
プレイした時間を記録する
データを消す
退会をする
ほかのネットゲームに代える
やめることを誓う
インターネットを控える
依存症の自助グループ(セルフヘルプ・グループ)に参加して、当事者の話を聞いて参考にしましょう。アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症関係の書籍を読むのもよいでしょう。
自分が依存症と認めるのは、嫌なものです。しかし、自分自身がまずそれを認めないかぎり回復ははじまりません。
この病気がどれほど強力でたいへんなものであるか、自分ひとりだけではわかりません。自助グループに参加しつづけ、同じ依存症の仲間の話をくり返し聞くことで、すこしづつ理解が深まっていきます。
現在、インターネットやゲーム依存の問題に焦点を当てた自助グループはほとんどありません。近くにそういった自助グループがなければ、ギャンブルやアルコールなどの依存症の自助グループに参加して、先ゆく仲間の経験と知恵を借りましょう。
二度とネットゲームができるようにはなりません。やめても、ゲームへの強い欲求は残ります。ゲームをすることなく、現実と向き合って生きていくことに困難を感じるかもしれません。かつてのゲームを懐かしくおもうこともあるでしょう。しかし、時間が経つにつれて、すこしずつ欲求は小さくなっていきます。そして、身体的にも精神的にも回復して、より良く生きていくことはできます。
たとえやめたとしても、強迫的な欲求は、その後もつづきます。絶え間なくつづく欲求や、過度のストレスが原因で、また以前のようにはじめてしまうかもしれません。スリップ(病気の再発)は、何年やめていても起こりえます。ネットゲームをやっていたときの感覚やフラッシュバックは、やめたあと何年もつづきます。その苦しみは筆舌に尽くし難いほどです。やめつづけることは、簡単なことではありません。また、知識だけでは決してやめつづけることはできません。
ゲーム、ギャンブル、アルコールなどの依存症の自助グループ(セルフヘルプ・グループ)に参加しましょう。依存症の施設に相談するのもよいでしょう。
依存症者は、みな生きづらさをかかえています。そのために依存症は、“こころの病”ともいわれています。
ひとりで回復することはできません。依存症から回復している先ゆく仲間と出会い、自助グループで経験をわかちあい、生き方をすこしずつ変えていきましょう。ゲームをしない生き方を身に着けていく必要があります。直接仲間と会うことが大切です。わかちあいのなかで、さまざまな気づきや共感を得ることで、回復・成長していくことができます。
同じネットゲーム依存症の仲間とわかちあい、お互いに助け合うことが、やめつづける最良のクスリになります。
自助グループを作って仲間を募ったり、メッセージ活動をするのもよいでしょう。
あなたの回復と成長を祈ります
よい出会いがありますように
ネットゲーム依存症者に巻き込まれている家族の困惑と苦しみはたいへんなものです。しかし、当事者の苦しみもまたたいへんなものなのです。本人はいつもたのしくてやっているわけではないのです。依存症であれば、ある日突然思い立って、プレイ時間を短くしたり、きっぱりやめたりすることはありません。
家族が無理にやめさせようとしても、効果は期待できません。家族もまた孤立から抜け出す必要があります。依存症専門の病院や施設に相談をしてください。ネットゲーム依存症の当事者の話を聞くのもよいでしょう。家族が依存症という病気をよく知り、自分自身を助けていくことが、本人の助けにつながります。
ネットゲーム依存症は、ギャンブル依存症などと同じ「プロセス依存」の病気です。ギャンブル依存症の家族のための自助グループや相談窓口が役に立つでしょう。
依存症本人の回復には、家族自身の回復と、家族の協力が必要です。回復には、本人も家族も、長い時間がかかります。見捨てることなく、愛情をもって本人を手放していきましょう。本人にも家族にも、同じ仲間や支援してくれる人の助けが必要です。
※これらは、いまゲームをやめつづけているネットゲーム依存症者の経験に基づいた意見であり、医師や専門家の意見ではありません。