1951年,日本銀行券500円札(岩倉旧500円)が発行された.そこから15年がたった頃,質の欠陥や偽造が原因で,新様式の紙幣が誕生した.これが日本銀行券500円札である.実はその前に発行されずに終わった幻の500円札がある.戦後,新様式の日本銀行券の発行がされ,広隆寺弥勒菩薩像の500円券の図案が製作された.しかし,1945年11月,GHQが「高額紙幣の発行はインフレを助長する恐れがある」と指摘したことで,その発行は取りやめとなった.なお,弥勒菩薩像は100円札に使われることも検討されたようだが「沈思する菩薩像は敗戦日本人の悲痛の感情を表現するもの」とされ,弥勒菩薩のデザインは使われることはなかった.
500円札の表面の肖像画として描かれているのは幕末から明治にかけて活躍した公家出身の政治家岩倉具視である【図1】.
500円札にはB号券とC号券の種2類あり,どちらも表面に岩倉具視,裏面に富士山【図2】が描かれている.B号券は1951年発行開始,1971年支払い停止,サイズは縦76×横56㎜.C号券は1969年発行開始,1994年支払い停止,サイズは縦72×横59㎜.
(北林 星七)