図1.黒楽茶碗 銘俊寛(レプリカ)
1573~1591年に陶工長次郎によって制作された「俊寛」という茶碗のレプリカ.
本物の俊寛はろくろを使わずに手だけで造形される「手捏ね」という特徴的な製法で造形した後に750℃~1100℃で加熱した後に急冷させ,そのあとに釉薬(茶碗を製作する時に加える,石灰を調合したもの)をかけて乾かすことを10回繰り返して作る.
作者の長次郎は安土桃山時代に活躍し,手だけで造形された茶碗を主に制作している陶工.天正年間(1573~1592年)に千利休と知り合い,利休の注文を受けて茶碗を作るようになったとされる.
また「俊寛」という名前は利休がこの茶碗を所望された時のエピソードに由来する.
「長次郎が作った茶碗が欲しい」と弟子から注文を受けた利休が,茶碗を3碗送ったところ,この1碗を残して,他の2碗は返してきた.銘を乞われた利休が,3人で島流しになり2人は許され1人島に取り残された俊寛の故事に重ねて,名付けたと言われている.
(鈴木 智大)