北海道土産として知られている木彫りの熊はアイヌの伝統工芸品と思われがちだが,じつは,尾張徳川家19代当主徳川義親がスイス・ベルンへ旅行に行った際購入したペザントアート(民芸品)をもとにしているとされており,義親のすすめにより,アイヌの人々や北海道に移住した尾張藩士の新たな収入源として木彫りの熊が生産され始めた.戦後から北海道の定番土産として人気を得ていた木彫りの熊だが,昭和40年代からの北海道旅行ブームの終息を境に,以前と比べ珍しいものではなくなり,土産として購入する観光客は減少している.しかし,近年では昭和レトロを愛する人々を中心に再注目の的となっており,その魅力は日本国内にとどまらず,アジア諸国や欧州にも広がっている.一例として,木彫りの熊を並べたイベントには8000人以上が集まり,有名アパレルショップとのコラボ企画なども行われている.
一方で,職人の後継者不足が問題視されているが,後世にも木彫りの熊を残していくべく,若年層にも木彫りの熊を知ってもらおうという動きが盛んである.
本資料は,北海道土産の熊に白黒の塗装を施して,大胆にパンダへと仕上げたもの.
(長畑 琥文)