マッカム焼きという名前は日本ではあまりなじみがない名前だが,ロイヤル・ティヒラー・マッカム(以下,ロイヤル・マッカム)は,同じオランダの窯で,日本でも名前が浸透しているロイヤル・デルフトより約60年も前から陶器作りを始めていた.
1594年創業のロイヤル・マッカムは,オランダで最も古い会社だといわれ,その工場はオランダ北部フリースラント州のマッカムにある.マッカムはアイゼル湖畔の港町で,その立地を活かし,昔は貿易の中心地であった.創業以来,400年以上にわたり,地元フリースラント州で豊富にとれる海泥土を使用し,伝統的な製法で陶器を作り続けている.
しかし,ロイヤル・マッカムの歴史は決して順風満帆だったわけではない.18世紀から19世紀にかけては,日常使いの食器やタイルを生産していたが,19世紀後半から食器の需要が減少してしまい,会社が生き残る方法を模索していた結果が陶器作りだった.1960年にはオランダ王室御用達として認められ,国賓に贈るプレゼントとして選ばれるなど,活躍の幅を広げることとなり,現在に至る.
(梶 圭朝)