全国学級経営研究会 研究計画(令和5年度~)
1 主題設定の理由
加速度的に変化する社会にあって「生きる力」の育成はますます重要となる。「生きる力」とは複雑で予測困難な時代の中でも、児童生徒一人一人が主体的に向き合って関わり合い、自らの可能性を発揮することに必要な力である。また、多様な他者と協働しながら、よりよい社会と幸福な人生を切り拓き、未来の創り手となることに必要な力である。
令和2年4月に全面実施した小学校学習指導要領では、「生きる力」をより具体化し、児童生徒が未来社会を切り拓くための資質・能力を明確にするとともに、教育課程全体を通して一層確実に「生きる力」を育成する重要性が示された。
学級は、児童生徒にとって学習や学校生活の基盤であり、学級担任の教師の営みは重要となる。全ての児童生徒が学校や学級の生活によりよく適応し、豊かな人間関係を築くことができるようにするために、学級経営の重要性はますます高まった。
本研究会では、研究主題を「未来を拓き、生きる力を育む学級経営」と設定した。そして、児童生徒一人一人の興味や関心、発達や学習の課題等を踏まえ、児童生徒の発達を支え、その資質・能力を高めていくために、『学習』『生活』『環境』『連携』の4視点から研究を進めることにした。なお、小学校学習指導要領の改訂において、各教科等で育成する資質・能力に「学びに向かう力・人間性等の涵養」が挙げられた。本研究会では、研究の重点を「学びに向かう学級集団づくり」として研究を進めることとした。
2 学級経営の定義
一人一人の児童生徒の成長発達が円滑にかつ確実に進むように、学校経営の基本方針の下に、学級を単位として展開される、様々な教育活動の成果が上がるよう人的条件、物的条件、運営的条件など諸条件を整備し運営していくこと。
3 学級経営のねらい
児童生徒の学級生活を支え、児童生徒の心と行動の安定を図る。
4 学級経営における教師の主な役割
(1)教師が担う役割
①学級経営計画
学級目標の設定、学級経営方針、学級組織、評価と改善など
②学習指導
児童生徒に求められる資質・能力を育成することを目指した授業改善、
主体的・対話的で深い学びの実現、学習内容の習熟の程度に応じた指導など
③生徒指導
児童生徒理解の深化、教育相談、学級の雰囲気の醸成、教師と児童生徒及び児童生徒同士の人間関係づくり、学級集団の形成など
④進路指導
キャリア教育(人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力)、進路指導など
⑤環境整備
児童生徒が学ぶことの意義を実感できる環境づくり
教室環境、学習環境、物的環境(教材・教具)、人的環境、言語環境、情報環境など
⑥学級事務
在籍に関わる事務、成績処理、会計、学級通信、保健健康に関する事務など
⑦連携
学年や他学年との連携、保護者や地域社会との連携、異校種との連携、関係機関との連携など
(2)児童生徒への指導
①集団としての成長と個としての成長を図り、望ましい集団、人間関係づくりを目指す。
②ガイダンスの機能とカウンセリングの機能を取り入れ、集団指導と個別指導の相互作用によって児童生徒の力を最大限に伸ばす。
5 研究の4視点について
(1)学習
各教科等のねらいをふまえ、一人一人に応じた「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指し、教師と児童生徒、児童生徒相互の信頼関係を育み、支持的な雰囲気を醸成する。伝え合い・学び合い・認め合いなどの関わり合いを重視して、「学びに向かう学級集団づくり」を目指す。その過程で、児童生徒の学習意欲を高め、主体的に学ぶ児童生徒を育てていく。
(2)生活
生活に関わる様々な活動の中で、規範意識を育成し、教師と児童生徒、児童生徒相互の信頼関係を育み、伝え合い・認め合い・励まし合う場面を意図的・計画的に取り入れていくことで、「学びに向かう学級集団づくり」を目指す。その過程で、児童生徒の意欲を高め、主体的に行動できる児童生徒を育てていく。
(3)環境
児童生徒が学ぶことの意義を実感できる環境を整えるとともに、共に生活し、共に学ぶ教育環境を整え、伝え合い・学び合い・認め合いなどの関わり合いを通して、「学びに向かう学級集団づくり」を目指す。その過程で、児童生徒の学級に対する所属感を高めていく。
(4)連携
他学級や他学年との交流・連携、また、保護者や地域社会との連携、異校種との連携、関係機関との連携を通して「学びに向かう学級集団づくり」を目指す。その過程で、児童生徒の学級に対する所属感を高めて、他者と協調しながら生活できる児童生徒を育てていく。