研究概要
(Research)
(Research)
光機能性分子材料の創出
光により分子構造が変化する『フォトクロミック分子』を用いて、様々な機能に光応答性を付与します。フォトクロミック分子であるジアリールエテンは異なる2つの波長の光により構造が変化し、 この構造変化に伴い様々な分子物性が変化します。この変化を賢く利用することで、光で機能する分子材料を創出することができます。
現在進行している研究課題
☆紫外光を必要としない光応答性分子の開発
一般的なフォトクロミック分子は、どちらか片方の光反応に紫外光を必要とします。いくつかの応用においては、エネルギーの高い紫外光を利用することが難しい場面が数多くあります。そのような課題に対し、我々の研究グループでは、よりエネルギーの低い可視光もしくは近赤外光で効率よく可逆的な光反応を可能とする新しい光応答性分子の開発に挑戦しています。
*ChemPhotoChem 2025, 9, e202500103
*J. Phys. Chem. B 2024, 128, 273-279 "Cover"
*Chem. Lett. 2022, 51, 1095-1098 "Edito's Choice & Front Cover"
*J. Phys. Chem. Lett. 2022, 13, 7429-7436 "Cover"
*J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 17145-17154
☆超高効率な非線形蛍光スイッチングを示すフォトクロミックナノ粒子の開発
蛍光特性を光で可逆的に制御できる分子システムは、光メモリ、セキュリティーインク、発光プローブなど様々な分野への応用が期待されます。我々の研究グループでは、蛍光色素を連結させたジアリールエテンをナノ粒子化することで、僅か数%程度の光反応が起こるだけで系全体の蛍光が完全に消光する超高効率な非線形蛍光スイッチングを示すことを見出しました。 この特性を利用した新しい発光スイッチング材料の開発と応用に取り組んでいます。
Adv. Opt. Mater. 2024, 12, 2400452 "Open Access"
Photochem. Photobiol. Sci. 2023, 22, 1673-1681
Chem. Commun. 2021, 57, 5422-5425
Chem. Commun. 2019, 55, 8268-8271 "Front Cover"
Chem. Lett. 2017, 46, 1182-1185
Chem. Commun. 2017, 53, 8268-8271 "Back Cover"
Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 3662-3666 "Hot Paper & inside Back Cover"
☆光スイッチング機能を有するペロブスカイト型量子ドット複合体の開発
2023年のノーベル化学賞が『量子ドット(quantum dot: QD)』に対して与えられたことからも鑑みられるように、QDは高い安定性と優れた発光特性を有することから次世代の発光材料として大きな注目を集めています。特に、ペロブスカイト型金属ハロゲン化物(CsPbX3, X = Cl, Br, I)の量子ドットは、非常に優れた蛍光量子収率と色純度の高い発光特性を示し、多色発光も可能であることから、新しいQDとして大きな注目を集めています。我々の研究グループでは、このCsPbX3のQDにフォトクロミック分子を複合化させることで、光刺激によって発光特性をスイッチングできる新しい複合材料の開発に、同学科の木田先生と共同で取り組んでいます。
Photochem. Photobiol. Sci. 2024, 23, 2015-2027
Small 2022, 18, 2205046 "Frontispiece"
Chem. Lett. 2021, 50, 1534-1538
ACS Mater. Lett. 2020, 2, 727-735
Chem. Commun. 2019, 55, 8060-8063 "inside Front Cover"
☆機能性高分子材料の開発とバイオ分野への応用
高分子構造に基づく物性制御を通して、環境・バイオ分野への応用が期待できる機能性高分子材料の開発を行っています。
薬剤を高濃度で内包しつつ優れた水溶性を示す高分子粒子を合成し、薬剤輸送キャリアーとしての応用を目指しています。 また、多分岐高分子の分岐構造の制御や機能性部位の導入により、新たな高機能性材料の創出にも取り組んでいます。
J. Appl. Polym. Sci. 2023, 140, e54673
☆構造色の光制御に関する研究
昆虫・動物・植物が自然に生み出す虹色のように鮮やかな色に着想を得た構造色は、入射光が周期的なナノ構造と相互作用することで生じる色です。
構造色は、ディスプレイ、センサー、バイオ医薬品、情報暗号化、太陽エネルギーハーベスティング、偽造防止、カラー印刷、発光・熱放射体など、さまざまな分野で注目されています。私たちは、単一のDAE分子骨格が光環化反応に伴い黒色へと変化するフォトクロミックジアリールエテン分子を合成し、構造色のオン/オフ制御を可能にする研究に取り組みました。さらに、異なる光波長で多色の書き換えが可能な次世代フォトニックディスプレイの実現を目指し、構造色と色素の色変化を組み合わせた表示材料の開発に取り組んでいます。
ACS Appl. Eng. Mater. 2024, 2, 1122-1130
ACS Appl. Opt. Mater. 2024, 2, 1172-1179
…などの様々な機能性材料の研究を行なっています。