マザー・マーダー



──親の因果が子に報い

1.シナリオ概要

■【想定プレイヤー数】

3〜4名

■【シナリオの背景】

 孤児院で育てられたミリアム・アッカーマンは、聖母マリアに対する清廉な信仰心を、転じて母性というものに対して神聖視を抱く青年だった。彼は健やかな精神と共に成長し、産婦人科医となる。 そんな彼の前に、彼の実母であるマリア・アッカーマンが姿を現す。しかしマリアはミリアムが望んだような聖母ではなく、堕落を絵に描いたような不出来な母親だった。真実に絶望したミリアムはマリアを殺害し、その悲しみからライカンスロープ《マザー・マーダー》へと姿を変えてしまう。

■【シナリオ難易度】

GM難易度:★★★☆☆PL難易度:★★★☆☆

■【シナリオ傾向】

 陰惨/海外サスペンス/母と子

■【シナリオ運用上の諸注意】

 テーマが苦手な人には注意。予言の夢は事前に伝えておこう。 また、予言の夢からは察せられないため、舞台が海外だという事も事前に伝えておく必要があるだろう。
このシナリオはシェアワールド企画『メイガスソウル』の世界観・TRPGルール(Night Hunters ver2.0)に従って制作されました。

2.オープニングフェイズ

【夢シーン】

「この子だけは! この子だけはぁ!!」 女の悲痛な泣き声が響く。 どこかの暗い部屋。医療機器の電子的な灯りがぼんやりと室内を照らしている。大きな椅子が真ん中にある。椅子の上で暴れる女の姿。その四肢は椅子に拘束されている。ここは分娩室だ。女の腹は臨月を迎えているように膨らんでいる。 その前でゆらりと影がうごく。 次の瞬間、女の凄まじい絶叫が響いた。 絶叫は徐々に弱くなっていく。その間に、ぐちゃりぐちゃりという、粘着質な音が混ざっている事が分かる。 ぶちりと何かが千切れた音がした。「おめでとうございます、元気な男の子ですよ!」 場違いに明るい狂った男の声が、高らかな快哉をあげ、その手にした肉塊を地面へと叩き付けた。 女の最も悲痛な絶叫が虚しく響く。

3.メインフェイズ


3人の場合:2ターン4人の場合:2ターン

【◎被害者の妊婦】

 この情報は最初から調査項目にある。
 マリー・ジェーン。妊娠9ヶ月目の臨月を迎えた妊婦。 アメリカのバージニア州在住。 敬虔なキリスト教徒であり、出産に備え、《聖ヴァージニア・マリア教会》で毎週日曜は遅くまでお祈りをしていくという。
 →調査項目に《聖ヴァージニア・マリア教会》を追加する。

【◎妊婦殺害事件】

 アメリカのバージニア州で二週間前に発生した事件。 分娩室で妊婦が生きたまま腹を裂かれ、殺害されたという陰惨な事件。 犯人は事件現場である大学病院に勤めていた若い医師、《ミリアム・アッカーマン》。しかしミリアムは大勢の警官隊に囲まれた状態で、突然ぐにゃりと姿を歪め、その場から忽然と姿を消してしまったのだという。 現地の警察がその足取りを追っているというが、行方は未だに分かっていない。
 →調査項目に《ミリアム・アッカーマン》を追加する。

【聖ヴァージニア・マリア教会】

 バージニア州に存在する聖母マリアを祀った教会。 併設して「マリアの家」という孤児院を運営している。 近所の大学病院に勤める《ミリアム・アッカーマン》という男もこの孤児院の出身であり、ミサには度々顔を出していたという。しかし、一ヶ月前に《薄汚い娼婦》が彼のもとを訪れてからというもの、彼は姿を見せなくなったのだという。
 →調査項目に《ミリアム・アッカーマン》《薄汚い娼婦》を追加する。

【ミリアム・アッカーマン】

 「マリアの家」で孤児として育てられた若者。 孤児という逆境にも負けず、真面目で優秀な青年として成長し、今年の春から大手大学病院へ勤務していた。 幼い頃から聖母マリアに対し強い信仰心を持ち、同時に母親という存在を神聖視し、非常に強い憧憬を抱いていたという。そんな彼が何故あんな事件を起こしたのかを疑問視する声は多く、まるで何か悪いものになってしまったようだと噂されている。 一ヶ月前に病院に現れた《薄汚い娼婦》と、暗い顔で何かを話していた事が確認されている。
 →調査項目に《薄汚い娼婦》を追加する。

【薄汚い娼婦】

 本名マリア・アッカーマン。一ヶ月ほど前に腹を裂かれた状態で川に遺棄されているのを発見される。しかし警察が到着する頃には死体は現場から忽然と消えていたという。 酒、薬、ギャンブルに溺れる典型的な社会の底辺であり、売春行為によって日銭を稼いでいた。しかし最近では歳のせいもあり、稼ぎは芳しく無かったようだ。 遠い昔に捨てた息子が医者になったという事を聞き、金をたかるために接触。ついでに客と妊娠した子の堕胎を依頼しようとしていたという噂がある。
 →この調査項目から派生する情報は無い。

4.クライマックスフェイズ

【阻止シーン】

 暗い夜道。人気は少ないが、周囲の家々には団欒の灯りがともっている。 聖ヴァージニア・マリア教会から、マリーが帰路へとついていく。彼女は膨らんだ腹を愛おしげに撫で、寒さに負けぬようストールを着直す。 その前にふらりと男が現れる。男は白衣を着ていたが、その白衣は血で染まっていた。 マリーが息を呑む。しかし彼女が悲鳴をあげるよりも先に、周囲の景色が歪み、やがて温かな夜道だった筈のそこは、迷宮現象の力により血染めの分娩室へと変わっていた。 分娩台から独りでに伸びたベルトがマリーの手足を拘束し、無理矢理にその上へと乗せようとする。母親は悲鳴を上げた。 変わり果てたライカンスロープ、ミリアム・アッカーマンは、母親が腹の子を守ろうともがく様を、虚ろな目でじっと見つめていた。
《阻止シーン》阻止難度:11必須情報:《被害者の妊婦》無効情報:なし判定結果:被害者の妊婦、マリー・ジェーンの救出の是非。

【戦闘情報】

■登場エネミー

・ライカンスロープ《マザー・マーダー》(NPC型と通常型どちらを使うかは任意とする)・アンデッド《アンデッド・マミー》

【ボスの補佐役:《アンデッド・マミー》】

エネミーレベル:6支配力:8キャスト能力:2d6+3ガード能力:2d6+3脅威度:2(4)スロット数:6レシピ:《範囲攻撃》《タフネス》《剛力:5》《人類の敵》
設定: 腐敗し腹を裂かれた娼婦、マリア・アッカーマンのアンデッド。 ライカンスロープである《マザー・マーダー》をおざなりに守ろうと動く。 基本的にはひたすら全体攻撃をしかけるマシーン。 このエネミーはマザー・マーダーが先に倒された場合、1d4ターン後に逃亡する。それを防ぐか見送るかはPC達に委ねるといい。また、《足止め》のカースを受けている場合、アンデッド・マミーは逃走が出来なくなる。

【シナリオボス:ブギーマン《マザー・マーダー》】

エネミーレベル:NPC形式エネミー支配力:イニチアシブ判定を行う(2d6)キャスト能力:2d6+2ガード能力:2d6+4脅威度:0スロット数:6レシピ:《棘:4》《毒:3》《行動制限:5》《ガードダウン:4》《キャストダウン:4》マナ:5
設定: 変わり果てた産婦人科医、ミリアム・アッカーマンの成れの果て。ダウン(行動制限)押し付け型。 こいつが下げてアンデッド・マミーが仕留めるスタンス。通常エネミー型とどちらを採用するかはGMが自由に決めて構わない。 また、ファクター・マナを用いて攻撃を行う。 ファクターは以下の5つ。「ライカンスロープである」「母親に対する異常な愛情と執着を持つ」「生命に対する異常な絶望と憎悪を持つ」「医師としての正確な知識を有する」「形振り構わぬ捨て身の攻撃を行う」

【シナリオボス:ブギーマン《マザー・マーダー》】

エネミーレベル:9支配力:11キャスト能力:2d6+5ガード能力:2d6+4脅威度:4スロット数:6レシピ:《キャストダウン》《ガードダウン》《範囲攻撃》《カース耐性:炎上》《ヒーラー》《ブレスの破壊者》
設定: 変わり果てた産婦人科医、ミリアム・アッカーマンの成れの果て。基本戦法はNPC型と同様。 NPC型とどちらを採用するかはGMが自由に決めて構わない。