スリーピー・ホープ



──夢想家の谷の望みは何処なりや

1.シナリオ概要

■【想定プレイヤー数】

3〜4名

■【シナリオの背景】

 ホープ・ダイヤモンドと呼ばれる血塗られたダイヤがあった。それは類希な美しさから人々の手を点々とし、いつしか呪いのダイヤと囁かれるようになったツクモガミだった。 歴史の中、ホープ・ダイヤモンドは二つに分割される。そして歴史の闇の中に消えた、傷ついたダイヤの片割れを愛した騎士が居た。騎士はダイヤのツクモガミを女性として愛し、守り、共に生きる事を望み各地を転々とした。 しかしそのダイヤは美しすぎた。やがて騎士は立ち寄った村でダイヤに目が眩んだ村人達に、自らの刃で首を落とされ死亡する。しかし騎士の亡骸をいかに探れどもダイヤは見つからず、やがて伝説は歴史の中に消えていった。首無し騎士の亡霊の都市伝説だけを残して。 時代は巡り、やがて血塗られたダイヤが再び世に解き放たれる。歴史を知って騎士の亡骸を漁った富豪が、欲に塗れそのダイヤを奪ったからだ。 地獄の底から首なし騎士はアンデットとして蘇る。 愛しい女性を、強欲の輩の手から奪い返す為に。

■【シナリオ難易度】

GM難易度:★☆☆☆☆PL難易度:★★★☆☆

■【シナリオ傾向】

 切ない/恋愛/海外都市伝説
このシナリオはシェアワールド企画『メイガスソウル』の世界観・TRPGルール(Night Hunters ver2.0)に従って制作されました。

2.オープニングフェイズ

【夢シーン】

 どこかの豪華な一室。豪華な服を着て、沢山の装飾品を身につけた肥えた中年男性が、ガラスケースの中からペンダントを取り出し、嬉しそうに眺めている。 そのペンダントもまた豪華なものだったが、何よりも目を引くのは、そのペンダントトップになっている大きな青いダイヤだ。赤子の掌ほどもあるそれへ、富豪の男は愛おしそうに口付け、自らの首へとかけた。 次の瞬間、突如部屋の電気が消え、室内は暗闇に包まれる。「おい、どうした! 停で」 男の言葉はそこで不自然に途切れ、ごとり、と何かが床へ落ちる音がする。 やがて、床の一角からじわじわと赤い光が広がり始める。それは先程男が首に付けていたダイヤだった。青かったダイヤは赤い光を発し、周囲を照らす。 切り離された富豪の胴体と生首が照らされる。 そしてその赤いダイヤを拾い上げる手があった。大剣を構えた漆黒の鎧を着た騎士の姿が、赤い光に映し出される。 その騎士には、首がなかった。

3.メインフェイズ


3人の場合:5ターン4人の場合:4ターン

【◎赤いダイヤ】

 この情報は最初から調査項目にある。
 ホープ・ダイヤモンドの異名を持つブルーダイヤ。特殊な構成要素から、通常は青い光を、紫外線に晒される事で暗闇で赤い光を発する。 持ち主を次々と破滅させながら、歴史の中で人手を転々としていく『呪いの宝石』として有名。 現在はアメリカのスミソニアン博物館の一つ、《国立自然史博物館》に保管されている。メイガス達の間ではツクモガミの巣窟として有名な博物館だ。
 →調査項目に《国立自然史博物館》を追加する。

【◎首無し騎士】

 この情報は最初から調査項目にある。
 各地で伝えられるデュラハン伝説に登場する怪異。 首の無い鎧を着た騎士の亡霊。死期が訪れた者のもとに現れ首を狩るといわれている。 アメリカのニューヨーク市《ウエストチェスター郡》を舞台としたスリーピー・ホロウという題名の小説、及び都市伝説が存在する。
 →調査項目に《ウエストチェスター郡》を追加する。

【国立自然史博物館】

 ツクモガミのホープ・ダイヤモンドを有する。美しい女性の姿をしたツクモガミ。現時点では人類に敵対する意志は無く、スミソニアン博物館での穏やかな隠居生活を楽しんでいる。無論、再び誰かの首を飾る機会があれば、その限りではないらしいが…。
 ホープ・ダイヤモンドはフランスのルイ14世の手元に渡った際、当時の権力者の欲望よって二分割された。《片割れ》は歴史の動乱の中ではぐれ、今何処に居るのかは彼女には分からないという。 片割れは消えた。少なくとも“表の”歴史からは。
 →調査項目に《消えた片割れ》を追加する。

【ウエストチェスター郡】

 アメリカニューヨーク市ウェストチェスター郡。 伝統的な田舎と金持ちの別荘地、双方の面を併せ持つ広い地域。西隣のロックランド群とはハドソン川という大河を挟んで面している。 アメリカには珍しく日本人街が存在し、そこには《ホンダ》という情報屋が住んでいるという。
 →調査項目に《日本人街のホンダ》を追加する。

【日本人街のホンダ】

 ウエストチェスター郡に存在するミニ日本人街の元締め。ウエストチェスターの事に関しては誰よりも詳しいと豪語する情報屋のソウルレス。ソウルレスだが情報屋だけあってメイガスに関する知識も有する。 首無し騎士の伝承に関しては、スリーピー・ホロウ村に住んでいる《墓守のウエス》という老人が詳しいという事を教えてくれる。 また最近、スリーピー・ホロウ村を、《富豪ロックフェラー》が供を連れて狩りに訪れたという事を教えてくれる。
 →調査項目に《墓守のウエス》《富豪ロックフェラー》を追加する。

【消えた片割れ】

 ホープ・ダイヤモンドがまだただのブルー・ダイヤモンドと呼ばれていた頃、ルイ14世の手元に渡り、ハート形に加工される為に分割された。 分割されたものは現存するホープ・ダイヤモンドと異なり、加工の際に傷がついてしまった事から、宝石としての価値・及びツクモガミとしての魔力が現存品よりも劣っている。ツクモガミとしての姿は、ホープ・ダイヤモンドと同じ容姿で、喉に大きな傷があるものとなっているようだ。 そののち、傷ついた彼女に極めて愛情深く接する《一人の騎士》が居た事が確認されている。
 →調査項目に《一人の騎士》を追加する

【墓守のウエス】

 スリーピー・ホロウ村に住んでいる老人。村の教会の墓守として生活している信心深い男。代々スリーピー・ホロウ伝説の真相を語り継いで来たらしい。 本来の伝承では首無し騎士は残虐なドイツの傭兵であり、暴虐の限りを尽くした事から村人の反感を買い、自らの剣で首を落とされたとされている。 実際は、村へ一晩の宿を求めた騎士が持っていた巨大な宝石に目が眩んだ村人が、騎士を追い詰め殺してしまったというのが真相である。しかし、騎士の死後、奇妙な事に宝石は見つからなかったようだ。 追い詰められた騎士は《森の奥の教会》で殺害されたと言われ、遺体は今もそこに残されているとされる。しかし実際に森のどこに当時の教会があるのかは分からないらしい。
 →調査項目に《森の奥の教会廃墟》を追加する。

【一人の騎士】

 傷ついたホープ・ダイヤの片割れを女性として愛し、騎士として忠誠を誓っていたという一人の騎士。名は残されておらず、メイガスだったのかソウルレスだったのかも記録には残されてはいない。 フランスの市民革命の折、ホープ・ダイヤの片割れを持って、当時敵国であったドイツへと亡命したという。
 →この調査項目から派生する情報は無い。

【森の奥の教会廃墟】

 スリーピー・ホロウ村の森の中にある教会の廃墟。 森に隠されるようにひっそりと佇む、崩れていながらも荘厳な建物。 廃墟の中には多くの人々の足跡の他、つい最近何か重いものが動いたような痕と、馬の蹄の痕が残されている。
 →この調査項目から派生する情報は無い。

【富豪ロックフェラー】

 ウエストチェスター郡に別荘を持つ宝石商の富豪。 最近何かとても良いものを入手したという事で、極めて上機嫌だとのこと。 明日の夕刻、所有する豪華客船《レディ・セルリアン号》で晩餐会を開き、そこで入手したものを公開するのだという。
 →調査項目に《レディ・セルリアン号の晩餐会》を追加する。

【レディ・セルリアン号の晩餐会】

 富豪ロックフェラーが所有する豪華客船。地上部でパーティを行う事が出来る。ハドソン川に停泊し、晩餐会はここで行われる。 ロックフェラーから招待状を貰った者だけが乗船する事が出来る。 船の下層部にはロックフェラーの私室があり、重要なものはここに保管されているのだという。
 →この調査項目から派生する情報は無い。

4.クライマックスフェイズ

【阻止シーン】

 レディ・セルリアン号下層部、ロックフェラーの私室にて。豪華な服を着て、沢山の装飾品を身につけたロックフェラーが、ガラスケースの中からブルーダイヤのペンダントを取り出す。赤子の掌ほどもあるそれへ、ロックフェラーは愛おしそうに口付け、自らの首へとかけようとした。 次の瞬間、突如部屋の電気が消え、室内は暗闇に包まれる。  どこか遠くで馬の嘶きが聞こえ、暗闇からずしん、ずしん、という重い足音が聞こえてくる…。
《阻止シーン》阻止難度:15必須情報:《富豪ロックフェラー》無効情報:なし判定結果: 成功すればロックフェラーを助けられる。ちゃんと「金なら払う!」って言いたい所。助けたあとの扱いはメイガス達次第。 失敗した場合は首無し騎士は綺麗にロックフェラーの首を跳ね飛ばす。 そして晩餐会の出席者達を惨殺して回る。 必須情報が得られていない場合はニュースで大惨事を聞き、遅れて現場に到着する事になる。

【戦闘情報】

■登場エネミー

・ツクモガミ《首斬りダイヤ》・アンデッド《首無し騎士》

【ボスの補佐役:ツクモガミ《首斬りダイヤ》】

エネミーレベル:6支配力:8キャスト能力:2d6+3ガード能力:2d6+3脅威度:1スロット数:6レシピ:《カースガード》《ガードアップ》《人類の敵》《ヒーラー》《ボディガード》
設定: 美しい女性の姿をしたツクモガミ。 喉に大きな傷があり、首から本体であるブルーダイヤのペンダントを下げる。 死後も自らを守り助ける首無し騎士のアンデッドを助け、支えようと援護する。彼女もまた彼を愛しているのだ。 全ては再び彼の傍らで眠る為に。

【シナリオボス:アンデッド《首無し騎士》】

エネミーレベル:10支配力:12キャスト能力:2d6+9ガード能力:2d6+1脅威度:5スロット数:6レシピ:《装甲》《形態変化》《剛力》《カース耐性:炎上》《カース耐性:幻惑》《カース耐性:魅了》
設定: 漆黒の鎧と漆黒の大剣を持った巨大な騎士のアンデッド。 嘗て人間として死亡したが、富豪ロックフェラーによって愛する女性である首斬りダイヤが持ち去られた事により、あの世から蘇った。 彼女へ忠誠と愛情を捧げており、その強い意志は死後も幻惑や魅了といった味方への攻撃への耐性となる。 彼女が沈んだ暁には、怒りから狂戦士と化し、更なる脅威となってメイガス達へ襲い掛かるだろう。 全ては再び彼女と共に在る為に。