オレンジ
オレンジ
──常世国に遣はして、非時香菓を求めしむ。今橘と謂ふは是也。(古事記より)
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■PC1
◆暗示 君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するため、とある孤島へ向かうことになる。 君の任務は怪物の退治だ。◆真実 ワダツミは君に告げた。「今回の事件には、一柱の神が関わっている。 正しき名は語られていない、まつろわぬ神だ。 あれは私と同じ、海の神だった。 遥か昔、我々は対立した。私が勝利し、あれは力の大半を失った。一つの島から二度と出ぬ事を条件に、私はあれにトドメを刺さなかった。 伝承の風化と、時による穏やかな消滅を願っていたのだが……それは私の傲慢だったらしい。 君達に頼むのは怪物退治であり、同時に神殺しそのものでもある。 いにしえの不出来を押し付けてすまない。どうか、心してかかってくれ」 この真実が公開された時、好きなインガを1つ自由に配置できる。◆トリガー 「橙之島」の真実が公開される。 この真実が公開されたとき、マスターシーン「対立」が発生する。■PC2
◆暗示 君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するためとある孤島へと向かうことになる。 君の任務は島民たちの救出だ。◆真実 君は未来の光景を幻視した。どす黒い空の下で荒れた海。波間に攫われそうなほどの小さな島。その島に迫るおぞましい大津波。 絶界により逃げ場を失っていた島民たちは、ただ呆然とそれを見ていることしかできなかった。 かくして、島は津波に飲み込まれ海の底へ沈む。これはまだ夢だが、このまま行けば真実となってしまうだろう。 神子として、このような惨劇は食い止めなければならない。 この真実が公開された時、好きなインガを3つ自由に配置できる。◆トリガー 青のインガが第三段階に到達する。 戦闘フェイズ終了までにこの予言が公開されていない場合、予言は真実となる。■PC3
◆暗示 君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するため孤島へ向かう。 初めて訪れる島のはずなのに、何故だか見るものすべてが懐かしい。これは一体…? 君の任務は違和感の理由を突き止めることだ。◆真実 君は未来の光景を幻視した。それは自分が一人の少女の胸を貫き、彼女を殺害する夢だ。 彼女は安堵したような顔を向け、君へ微笑みかける。「また会えてよかった」 そして君の腕の中で息絶えた…。 これはまだ夢だが、このまま行けば真実となってしまうだろう。それが悪いことなのかどうかすら、今の君には分からないのだが。 この真実が公開された時、好きなインガを一つ自由に配置できる。◆トリガー 「少女」の真実が公開される。 冒険フェイズ終了までにこの真実が公開されない場合、予言の夢は真実となる。■PC4
◆暗示 君はワダツミから依頼を受け、事件を解決するため孤島へ向かう。 しかし、君は万神殿に招かれた段階で、己の果たすべき本当の任務を理解していた。 君の任務は本当の任務を達成することだ。◆真実 君は過去の光景を幻視した。 それは旅人と思しきPC3が、この島の人々と楽しいひとときを過ごしている夢だ。PC3は島の人々と交流を深め、再会の約束を交わし島を去っていく。 その背を睨みつけるおぞましい気配があった。それは島の人々とPC3の再会を厭い、島を去るPC3へ呪いをかけ、島の記憶を消してしまった。 あなたの本当の任務は、この事件で発生するあまねく悲劇を回避することだ。 この真実が公開された時、好きなインガを1つ自由に配置できる。◆トリガー PC3の真実が公開される。 この真実が冒険フェイズ中に公開された時、マスターシーン「親子」が発生し、決戦フェイズに突入する。■絶界化の影響について
シナリオの舞台となる『橙之島』は、神子たちが到着した段階では、絶界とは思えないほどのどかで牧歌的な日常が繰り広げられる平和な島だ。この島に発生している絶界化の影響は、NPC『丹波みなと』以外の島民が、無自覚のうちに、島の外へ関心を抱かなくなっているということ・かつて島を訪れた外部の人間(PC3を含む)のことを完全に忘れてしまっているということである。 また、島民たちはみな無自覚の神子として生活を送っているため、多くの老人は伝説の子と似た状態になっている。その為、年齢に反して健康で元気な者が非常に多い。また、年齢を聞いたならば、通常の人間の寿命ではあり得ないほど長寿の者もいるかもしれない。そして彼ら自身は、そこになんの違和感も持っていない。□道中
万神殿から絶界の先『橙之島』へ向かうには「危険な旅」の判定を行う。 試練表には、公式サイト配布シナリオ「消えた第七艦隊」付属の「大海試練表」を使用する。 「危険な旅」の判定を終えたタイミングで、冒険フェイズに突入し、予言『橙之島』の暗示を公開する。■予言『橙之島』
◆暗示 日本海遠洋に存在する小さな島。 希少な独立種のオレンジの産地として有名。 島民は約2000人程度の限界集落。ごく僅かな子供たちの笑い声や、老人たちの近隣間との交流が和やかに続く、現代から切り離されたような独自の生活が、今も続く島。◆真実 島の人々と交流を深めた君は、あることに気付く。この島の人々はみな、無自覚の神子なのだということに。 彼らは日常の中で、どこの神群にも属さぬ独自の神への信仰を持っている。この島の神が島民たちの夢の中で彼らに己の血を分け与え、彼らは無自覚の神子として、島の神の加護のもとで、今日まで生きてきたのだ。 島の灯台の頂上にはその神を祀る古いほこらがあり、その社は今、『丹波みなと』という少女が灯台守となって管理しているという。 予言『少女』の暗示を公開する。◆トリガー PCの誰かがこの真実を得る。■『黄金の林檎』伝説
ギリシア神話や北欧神話を中心に、さまざまな国や民族に伝承される民話や説話の果実。 醜怪な敵役が隠したり盗んだりした黄金の林檎を、英雄が取り戻すというあらすじのものが多い。 また、親神たちはこう口にしているが、ヤマト神群の伝承にも「非時香菓(トキジクノカクノコノミ)」の伝承でオレンジ(橘)は登場する。そこでも不老不死の果実として取り扱われているので、ヤマト神群の親神やワダツミから、この点への注釈を入れるのも自由である。(このシーンの目的は、『オレンジは神話上、不老不死や蘇りの為の果物とされている』という認識をプレイヤーに持たせることだ)□発生タイミング:PC1の真実が公開された時
橙之島に関する情報が少しずつ明らかになってきた。しかし真実に至るにはもう少し情報が足りない。 調査を続ける神子たちは島で一夜を過ごす。 気のいい女将の経営する小さな民宿での一夜。島の人々が寝静まった夜半。 柔らかな月光が差し込む障子窓の向こう、遥か眼下に夜の海が寄せては返している。 神子達が眠る夜半。■予言『少女』
◆暗示「あ、お客さん!? 珍しー! ゆっくりしてってください、ゆっくり!」 丹波みなと(たんば・みなと)。島の灯台守を勤める少女。 両親は幼い頃に他界し、今は島の人々に支えられながら、灯台守として生活している。 日に焼けた褐色肌の眩しい、活発で明るい陽気な少女。島の外の世界に興味津々であり、神子達にも親身になって接する。◆真実「……ねえ。あなたにとって、神様ってどんな存在?」 彼女の正体はマスターシーン「対立」の襲撃者であり、自覚ある島の神の神子である。 彼女はPC達と(おそらくは)同じように、神子として親神を慕い、敬っている。けれど、年齢相応の少女として、外の世界へ憧れているのも本心だ。 その関心の発端は、かつて島を訪れたPC3との交流にある。彼女はPC3と交流を深め、外の世界が存在する事を知り、強い興味を抱くようになった。しかし彼女の親神はその感情に嫉妬し、彼女たちが己の手元から離れていかぬよう、この島を絶界に閉じ込め、彼女以外の島民達のPC3との交流の記憶を消してしまった。 親神の行いが正しい事ではないという分別はついている。 外の世界への興味もある。しかし、寂しいと子らへ縋り、見捨てないでと訴える、名も知らぬ己の『親』を、 彼女は見捨てる事が出来なかった。◆トリガー PCが丹波みなとに対し交流判定を行う。 交流の結果、感情を結べたか否かで、マスターシーン「親子」での彼女の立ち位置が変化する。◆発生タイミング:PC3の真実が公開された時、PCが丹波みなととの交流判定に成功している
◆発生タイミング:PC3の真実が公開された時、PCが丹波みなととの交流判定に失敗している。
◆発生タイミング:メインフェイズ終了時点でPCが情報「少女」の真実に辿り着いていない時
■まつろわぬ海神とオレンジ
『まつろわぬ海神』の正体は何なのか? その正体がこのシナリオ内で詳しく語られる事はない。神代の時代にヤマト神群との勢力争いに敗北した、今は名も語られぬ神の一柱というだけだ。 『黄金の果実』との関わりも、シナリオ内で細やかな設定は存在しない。もしかしたら『まつろわぬ海神』はかつては西欧に属する神であったのかもしれないし、タイタン神群の何者かによる干渉を受けた事があるのかもしれない。その解釈をどう定めるかはGMとPLの自由である。『まつろわぬ海神』の背後に黒幕めいた存在が居り、そこから新しいキャンペーンへと繋がっていくなどしても、それはそれで面白いかもしれない。【エネミーデータ】
◆本体『まつろわぬ海神』
■怪物Lv4(基本・290P・「土蜘蛛」より一部改変)タグ:神・水生命力70 防御値4 攻撃値4【怨嗟】ヤマト神群のPCが受けるダメージが1d6点上昇する。【怨嗟の声】本体の生命力を減少させたPCは変調「絶望」を受ける。──現代の世には語られぬ奇妙な海獣の姿をとって顕現した、かつての神の成れの果て。鯨の如き巨体は波を操り、島と子らを海の底へ誘う。◆パラグラフ1『水牢』
■脅威Lv2(基本・290P・「糸絡み」より一部改変)分類:術式 タグ:水 判定:技術威力--- 攻撃値+0 耐久度10 防御値+2【水牢】欄外にいないPC全員を捕縛状態にする。──怪物の操る水と波が、牢のように神子を捕らえ、その足を阻む。◆パラグラフ2『衝撃波』
■脅威Lv2(基本・274P・「衝撃波」より一部改変)分類:攻撃 タグ:衝撃 判定:霊力威力1d6+1 攻撃値+0 耐久度12 防御値+0【波動:青】青の属性でないPC全員を攻撃対象に選ぶ。【衝撃】誰か一人でもこの攻撃でダメージを受けた者がいると、すべての領域にあるインガを1つ取り除く。──打ち寄せる波の力。自然の暴威と一体と化したその一撃は、あらゆる運命を薙ぎはらう。◆パラグラフ3(-)『暴虐の神子』
■脅威Lv3(基本・276P・「暴虐の神子」より一部改変)分類:攻撃 タグ:独立・実体・人 判定:頭脳威力3d6 攻撃値+0 耐久度15 防御値-2【ムードダウン】この脅威カードが攻撃を行ったとき、好きな領域のインガを一つ減らす。──父を見捨てられぬと語った少女は最早何も語らず、ただ神子へ武器を向けるのみ。その頬を、海水ばかりがしとどに濡らす。◆パラグラフ4(3)『親神の慟哭』
■脅威Lv3(02・222P・「鋭い一撃」より一部改変)分類:攻撃 タグ:実体・衝撃 判定:技術威力3d6+2 攻撃値+2 耐久度11 防御値+1──それは悪魔の咆哮か。あるいは寂しい親の成れの果てか。憎悪と共に放たれる一撃はあまりにも鋭い。◆パラグラフ5(4)『黄金の林檎』
■脅威Lv1(基本・272P・「再生」より一部改変)分類:術式 タグ:独立・実体・強化 判定:愛威力--- 攻撃値+0 耐久度8 防御値-1【超再生】脅威カードを一つ選んで未行動状態にし、この脅威の次のタイミングで行動させる。──神の食料。不死の源。あるいは、まつろわぬ神が嘗て、身を寄せていたかもしれぬ土地の残滓。■エネミーの行動方針
パラグラフ1『水牢』でPCたちを捕縛状態にして達成成功率を下げ、パラグラフ2『衝撃波』でPC2の予言達成を阻む。 パラグラフ3『暴虐の神子』はマスターシーン『親子』で『丹波みなと』が入水しているか否かで使用の有無を決める。パラグラフ5(4)で再生させる脅威カードはパラグラフ3『暴虐の神子』か4(3)『親神の慟哭』の脅威カードとなる。【顛末 -Good End-】
【顛末 -Bad End-】