青き城と宝石
青き城と宝石
━━幻想物語組曲
【PC1:呪われし宝石】
アーガット・オン・ザ・ゲームの予告状が届いた。 君はアメリカ・スミソニアン博物館から、宝石の護衛を頼まれる。 依頼された品物は、スミソニアン博物館に展示されている45カラットのブルーダイヤモンド。 通称『ホープ・ダイヤモンド』。数々の所有者を死に追いやってきたという呪いの宝石だ。 しかし護衛を開始した君は気付く。ダイヤモンドは既にすり替えられている!【PC2:宵闇の唄】
ある月のない真夜中のことだった。 君のもとに、一人の奇妙な女が現れ、頼みがあると君に告げる。 「このままでは夫は人を殺してしまうでしょう。どうかその前に、彼を助けて」 女はそれだけを告げると、宵闇の中へと姿を消してしまった。【PC3:青き城の伯爵】
君はとある田舎町を訪れていた。 曰く、町外れにあるという山の中に、見知らぬ洋城が生まれているというのだ。 迷い込んだハービンジャーか、ヴィランが作り出した違法建築か? 君は調査の為、城へと向かう。【イベント0:〈ハジマリ〉のクロニクル】
【物語】
むかしむかしあるところに、青い髭を生やした金持ちの男がいました。 男はその風貌から「青ひげ」と呼ばれ、恐れられていました。 また、青ひげは、これまで六度結婚しながら、その妻たちはことごとく行方不明になっていました。 青ひげは、七人目の妻に、家を留守にする際、鍵束を渡してこんな約束をします。「どこにでも入っていいが、この鍵束の中の小さな鍵の小部屋にだけは絶対に入ってはいけない」 しかし七人目の妻は好奇心に負け、小さな鍵の小部屋を開けてしまいます。 そこには、六人の妻の亡骸が! 七人目の妻の裏切りに激怒した青ひげは彼女をも殺そうとしますが、間一髪のところでかけつけた兄たちに彼女は助けられ、怪物・青ひげは殺されたのでした。 七人目の妻とその兄弟たちは、青ひげの遺産を手に入れて、幸せに暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし。【解説】
このシナリオの下敷きどなる、童話「青ひげ」のあらすじ。 PCたちは童話のことを知っていてもいいし、ファースト・カラミティで喪われた物語として知らなくても良い。どちらのパターンでもこのシナリオを楽しむことができるだろう。【イベント1:呪われし宝石】
【状況1】
君は依頼を受け、アメリカ・スミソニアン博物館の一つ、国立自然史博物館を訪れている。 今朝、そこにアーガット・オン・ザ・ゲームからの予告状が届いた為だ。 小洒落た装飾が為されたカードには、モリアーティの簡易な似顔絵と共に、キザったらしい文言が踊っていた。『一週間後、殺戮の女王にベーゼを贈りに参上す。──ジェームズ・モリアーティ』【状況2】
モリアーティが来るのは一週間後、しかし事前に何らかの仕込みがされないとも限らない。君は夜を徹して警備にあたった。 かくして人気のない真夜中のこと。君はただ一人、展示室でその宝石と向き合っていた。 ホープ・ダイヤモンドは青く美しい光を放っている。だが、君はその輝きに違和感を覚える。なんだか、資料で見聞きしたよりも、チープでしょぼい気がする。 君がもう少し詳しく調べようと展示ケースへと近づいた時、偶然にも近隣でザ・カーニバルが爆発テロを引き起こしていた。衝撃は地響きとなって博物館へも伝わり、展示ケースへも伝わり、そして……。 パキィッ! なんと、ホープ・ダイヤモンドが真っ二つに割れてしまった! ……いや、違う、これは、ガラスで作られた偽物だ!!【状況3】
ホープ・ダイヤモンドは、何者かの手によって既にすり替えられていた。 モリアーティが行ったのだろうか? しかし予告状が届いたのは今朝、犯行予定は一週間後。こんなにすぐ気づかれる雑なマッチポンプを、あの犯罪王が仕組むだろうか? 幸い、宝石がすり替えられてから、まだ然程の時は経ってはいないようだ。 かけつけた学芸員が慌てて言った。「えー! そんな、困ります! もう『モリアーティvsヒーロー・PC1! 世紀の対決を見逃すな!』って宣伝出しちゃったし!」「どうにかモリアーティが来るまでに見つけて取り戻してください、そして対決を実現させましょう! よろしくお願いします」 なんだか妙なことになってしまった。 対決はともかく、君は消えた宝石の行方を追うことにした。【エンドチェック】
□ホープ・ダイヤモンドの呪いの逸話を知った□博物館から依頼を受けた□ホープ・ダイヤモンドは既にすり替えられている【解説】
ホープ・ダイヤモンドは実在する同名の宝石の逸話を参考にしている。 宝石を盗み出したのはモリアーティではなく青ひげだ。しかし金に任せて盗難を働いた彼の手口は杜撰であり、すぐに露呈するものである。 モリアーティがそのことを知っていた上で予告をしたのか、それともモリアーティが予告を出すことを知っていたから青ひげが先んじて宝石を盗み出したのか、因果関係はページの外側だ。【イベント2:宵闇の唄】
【状況1】
それは月のない真夜中のことだった。 君の自宅でのことだったかもしれない。夜遅くのパトロールの最中だったかもしれない。眠りに落ちる夢現の半ばだったかもしれない。 いつの間にか、君のそばに一人の女がいた。 照らされることのない女の容姿は定かではなく、暗がりの中から、ささやくような声が願いを紡ぐ。「──このままでは夫は人を殺してしまうでしょう。どうかその前に、彼を助けて」【状況2】
君がはたと我に返った時、女の姿はもうそこにはなかった。 夢だったのか、それとも……。怪しむ君の足元に、一枚の写真が落ちている。 写真の中には、どこかの田舎の山の頂きに建つ、立派な西洋建築の青い城が写っていた。【エンドチェック】
□女の依頼を受けた□城の写真を拾った【解説】
この女の正体はホープ・ダイヤモンドの精霊だが、この時点ではそれが明らかとなることはない。青ひげの物語の女たちか、実在する人物なのか、答えが出ないよう曖昧で謎めいた演出にすると良いだろう。 状況1で、PCは女と会話を試みても構わない。【イベント3:青き伯爵の城】
【状況1】
それは分厚い雲が空を覆っている、ひどく曇った日のことだった。 君はとある田舎町を訪れている。その町が有する山の頂に、三日前から突然、不審な城が現れたという相談を受けた為だ。 君は街の駐在や、噂好きの住民たちから話を聞いた。「あそこはスミスさんちの山なんだがなあ」「山菜を採りに行こうとしたら、とんでもねえもんがあったって、血相変えて通報してきたんだ。そしたらあんなもんがあって、ああこりゃわしらの手には余るぞと思いましてね」【状況2】
町の人々は、突然現れた城を恐れ、この三日間遠巻きに見ていることしか出来なかったという。城から害を与えられてはいないが、城の中で何が起きているのかも、彼らは知らなかった。 それは迷い込んだハービンジャーか、それともヴィランが作り出した違法な一夜城なのか? 君は真相を求め、その城を目指してみることにした。 それは分厚い雲が空を覆っている、ひどく曇った日のことだった。【エンドチェック】
□空が曇っている□田舎町に立つ青い城の話を聞いた□城へ向かった【解説】
この城は青ひげの城であり、アレイスター・クロウリーの手によって城ごとプライムバースへと召喚された。クロウリーはその拠点ごと青ひげをアーガットの一員とするつもりだったが、彼に加えた設定改変の影響で青ひげの人格が変質していたことで、プランの変更を余儀なくされている。 その間に青ひげはこの世界のことや自らのことを調べ、物語に則った自死と自罰を試みる為、ホープ・ダイヤモンドへと手を伸ばした。 導入の時系列としては、エントリー3が最も新しい時間軸であり、展開フェイズのイベントと直結するものである。【クエリー1:歓びと哀しみの葡萄酒】
【状況1:PC1】
PC1は調査の果てに、スミソニアン博物館から宝石を盗み出したという悪党を捕まえる。 しかしその男は、金で雇われただけの三下であった。悪党は言う。「雇い主の居場所を知っている! 宝石はもうそいつに渡しちまった! 金払いのいいおっさんだったぜ、それを教えるから俺を見逃してくれよ、なっ? なっ?」 見逃さずとも、聞き出せば良いだけの話。そしてそれは不可能ではあるまい。 君はどうやって彼とお話をしようか?【状況2:PC全員】
かくして、ヒーローたちは、山の頂に建つ青き城の入り口で出くわすことになる。 君たちが互いの情報を共有し、城へと呼び掛ければ、やがて一人の男が姿を現す。 それは青ひげを生やした、恰幅の良い男だった。どこか陰鬱な雰囲気をした男は、訝しげに君たちを眺めながら尋ねる。「私の城に何か御用かな」【状況3】
男は君たちを城へと招き入れる。 城は非常に豪華な作りで、城内の調度品も信じられないほど高価なものばかり。しかしこれだけ大きな城だというのに、使用人の気配はどこにもなかった。 男はPCたちを来賓室へと招き、葡萄酒を振る舞う。そして自らの事情を語った。「三日前、気付いたら、城の外の景色が変わっていた。城の中は変わりないが、使用人たちもおらず、この先をどうしたものかと考えながら過ごしていたのだ。どう生きていけば良いのか……あるいはこれは私への罰なのか、と」 城主の男は昏い光を宿した目を伏せ、ぽつりぽつりと、自らの罪を打ち明ける。「故郷で妻を殺した。娶っては殺し、殺しては娶った。大勢の妻をだ」「誓いを破られたことに腹を立てたからなのか、愛していたからなのか。今ではもう分からない」「私の望みは、同じ罪を繰り返す前に、この運命を終えたいということだけ」「罪には罰を。咎には報いを。私はそれが与えられることを望んでいる」「……この世界に渡ってくれば、全てがなかったことになるとでも?」 強い悔いを滲ませ、罰を求める異世界からの来訪者。 その言葉に、君たちは何と答えるだろう?【状況4】
話を終えると、城主はPC1へ「君と話をしたい」と申し出る。 その間、PC2とPC3には、城の中を好きに見て回ってくれて構わないと、鍵束を渡す。 城主は言った。「どこにでも入っていいが、この鍵束の中の、小さな鍵の小部屋にだけは絶対に入ってはいけないよ」──と。【エンドチェック】
□城にたどり着いた□城主の問いに答えた□PC2とPC3が鍵束を渡された□グリットを1点獲得した【解説】
青ひげとPC達が対峙し、このシナリオに於ける青ひげのキャラクター性を示すシーン。 青ひげが妻殺しを悔いているのは真実だ。だが彼はこのシーンで嘘を吐いている。実際には自らに罰を与える為、彼はすでに行動を起こしている為だ。 PC1がそれを指摘しようとした場合、青ひげは穏やかに遮りながら、「その話は、後で、君と二人きりでさせてほしい」と望む。 彼にとって、城を訪れた三人のPCたちは、物語における妻の兄たちとして見立てられている。すなわち、自らの栄華を滅ぼし、自らを罰する為の英雄だ。 城主は自ら名乗りはしないが、名を問われれば「青ひげ」と名乗るだろう。【クエリー2:書の魔獣】
【状況1】
PC1は男と共に庭へと出る。「ここならば、誰の耳にも我らの会話は届くまい」 男はそう切り出し、断罪を求めるように君へ視線をむける。君はどう話を切り出すだろうか。【状況2】
「……如何にも。あの宝石を盗むよう指示を出したのは私だ」「全ては、その呪いを以て、自らの身を滅ぼす為に。我らは書に拠って、断罪を約束されし者」 男は自嘲的に笑い、城を見上げながら言う。「〈物語〉は改竄を許さない。加害者は誰で、被害者は誰だ? 定められた物語を【否定】すれば、そこに歪みが生じ、書は魔獣へと転じるだろう。頁の外側をも巻き込んで……」「〈物語〉の改竄は許されない。それは〈創り出した者(神)〉への冒涜だ。なればこそ、『書に記された運命』を上手く使わなければ、我々は自死すら儘ならぬ」 不可解なことを意味深に告げる城主。 彼は曇天の空から君へと視線を移し、告げる。「あれは、おれがおれを終わらせる為の行い、おれが自らに科した罰なのだ。強欲の末に身を破滅させる、殺人鬼には似合いの末期だろう」「お前があの宝石の回収を望むなら、おれの身に破滅が訪れたその後に、好きに拾え。だが、それまでは……見届けてはくれまいか」 君はその言葉に何と答えよう?【エンドチェック】
□城主の価値観を聞いた□問いに答えた□グリットを1点獲得した【解説】
このシナリオにおける青ひげの考えを示すシーン。 PC2とPC3は同タイミングで城の中を調べているとしているが、望むのであれば物陰などからこの会話を聞いていても構わないだろう。女の影に導かれるPC2はさておき、PC3は自由に動き回れるだろう立場だ(その場合、チャレンジ1の判定にはGMの工夫を要する)。 青ひげがヴィクトリアン・エラの出身者であることに、PCたちは気付いてもいいし、気付かなくてもいい。 青ひげの発言は、ただ彼自身がそうと信じている為のものだ。実際には物語と異なる結末を歩むことも、自らの手で終止符を打つことも出来るだろう。罰を望んでいる心は確かだが、その在り方は臆病で傲慢と断罪することも出来る。情けをかけるも、切って捨てるも、ヒーロー次第だ。【チャレンジ1:檻の中の遊戯】
【状況1:PC2・PC3】
PC2とPC3が城の中を捜索すれば、城の中は城主の言葉通り、豪華絢爛ではあるが、人の気配がない空間だった。まるで物語の中から抜け落ちてきたように。 そんな時、君たちは少し離れた廊下を歩く、美しいドレスを身につけたひとりの女の姿を見る。 女は誘うように城の中へと消えていく。 城主はかつて妻を殺したといい、この城には自分しかいないと言っていた。であれば、あの女は何なのだろうか。 女の後を追えば、PCたちは城の頂き、尖塔にある、鍵のかかった小部屋へとたどり着く。その部屋の鍵は、禁じられた小さな鍵だった。 君たちは好奇心に耐えられるだろうか、それとも…。【状況1:PC1】
一方、庭園で話をしていたPC1と城主。「そろそろ戻ろう。PC2とPC3にも、この話をするべきかもしれないな」 そう告げ、城へと戻ろうとする城主。しかし彼はPC1を見ると、驚きに目を見開き、鋭い声を放った。「避けろ!」【状況2:PC1】
PC1は辛うじて不意打ちを躱す。 背後からPC1を不意打ちしようとしていたのは、一人の魔術師だった。それは、アーガット・オン・ザ・ゲームの魔術師、アレイスター・クロウリー! しかしPC1がクロウリーに気付いた直後、PC1は背後から衝撃を受け、意識を失う。 薄れゆく意識の中、クロウリーが地団駄を踏みながら城主を青髭と呼び、何故最初に警告などしたのかとなじる様を見る。君の傍の青ひげは、君の胸を貫いた剣を呆然と、恍惚と衝撃が滲む表情で見つめていた。「違う! こんなつもりは……ああああ!!」 最後に耳に届いた叫びは、深い絶望を感じさせるものだった。【エンドチェック】
□PC2・PC3が部屋へと入る/入らないを選択した□PC1が意識を失った【解説】
PC2とPC3は選択に応じてこのあとのクエリーが変化する。二人が同じ選択をする必要はない。別々の選択をするのであれば、次のクエリー二種をそれぞれの選択PCに対して適応すると良いだろう(その場合、公平を期す為、グリット合計数に変更は生じさせない方が良いだろう)。 PC1のチャレンジ判定では、青ひげがPC1を攻撃したのは青ひげ自身の意志によるものではないと、PC・PLに伝わることが望ましい。【クエリー3-A:屋根裏の少女】
【状況1】
PC2とPC3が城の扉を開けば、その先からむせかえるような血の臭いが溢れ出す。 足を踏み入れれば、部屋の中には、吊られた『七人』の死体があった。……いいや、それは死体ではない。マネキンだ。マネキンたちは、時代錯誤な中世ヨーロッパのような華美なドレスを身につけている。 吊られているものこそマネキンだったが、その室内に沁みついた、血と死臭は本物だ。おそらくそこには、本当は死体があったのだろう。それが、世界を渡ってきたことにより、死体が消え……模すようにマネキンを残したのは、城主の男自身の判断か。『この世界に渡ってくれば、全てがなかったことになるとでも?』 あの時の城主の言葉が君たちの脳裏を過ぎる。 罪の痕跡を目の当たりにした君たちは、この部屋でどんな会話をするだろう。【状況2】
そんな部屋の中央に、美しいブルーダイヤが鎮座していた。 陰惨な部屋の中、そのダイヤだけが異質で、ひどく魅力的だ。〈意志-20%〉で判定。失敗で無自覚の内にダイヤに手を伸ばし、触れてしまう。成功で、寸でのところで耐えられる。 それと同時、突如として城が激しく揺れ始める。 その揺れで机の上のホープ・ダイヤモンドが転がり落ち、眩い光を放ちはじめた!【エンドチェック】
□小部屋を見つけた□ダイヤを見つけた□グリットを1点獲得した【解説】
PC2とPC3(あるいはそのどちらか)が小部屋に立ち入った場合のクエリー。 罪の証を言葉ではなく目の当たりにし、城主の言葉が謙遜や自虐ではなく紛れもない事実であることを知った時、改めてPCたちは何を思うだろうか? それがクエリーだ。 ダイヤモンドを発見した際の判定はあくまでフレーバー的なものであり、その宝石に不思議な力が宿っていることを示すためのものである。この時点ではメリットやデメリットは存在しないことはあらかじめ伝えておくと良いだろう。 状況2で突如として発生する揺れは、クエリー3ーBで発生している、クロウリーが創り出したポータルによるものである。【クエリー3ーB:人生は入れ子人形】
【状況1】
君たちは部屋を開けることを避けた。 君たちは城主を探し、尖塔を降りて庭園へと向かう。【状況2】
庭園へと向かった君たちが目の当たりにしたものは、胸から血を流して倒れるPC1と、血に濡れた剣を手に立ち尽くす城主、其の傍らでヒステリックに叫ぶアレイスター・クロウリーの姿であった!「まったく、とんだ失敗作だ! せっかく『最後の妻も殺したことにしてあげたのに』!」「やり直せる世界をくれてやったというのに、こンの恩知らずの駄作め! そんなに罰が欲しいなら、お望み通り白紙に戻してやりますよぉ!」 クロウリーの叫びと同時、城の上空にポータルが開き、凄まじい揺れが周囲を襲う。「さあ、消えろ青ひげ!」 君たちはこの瞬間、どう動くだろうか? 傷ついたPC1を助けるか? アレイスター・クロウリーを攻撃するか? ポータルの魔術へと干渉するか? 決めるのは君たちだ。【エンドチェック】
□クロウリーの行動に対応した□グリットを1点獲得した【解説】
PC2とPC3(あるいはそのどちらか)が、アレイスター・クロウリーの関与と、青ひげの身に起きていた物語の改竄を知るシーン。 このイベントを経由しなかったとしても、青ひげの設定改竄に関しては、後のイベントで言及することになる。経由した場合は、チャレンジ2【状況2】の同じ台詞は割愛しよう。【チャレンジ2:恋人を射ち堕とした日】
【状況1】
夢の中、PC1は美しい女と対峙していた。 見惚れるほど美しい女は優雅に足を組みながら君へ言う。「まだ眠っているおつもり? わたくしをがっかりさせないで」「レッテルに塗れた呪いの物語はもうまっぴら。 呪いを祝いへ書き換えるのが、あなたたちの役目ではなくて?」「愛とは褥に仕える為の奴隷ではないわ。まして子を孕むための道具ではない。 女王と謳われるだけの物言わぬ石くれを、あの人は別の名で呼んだ。 それは打算の上の、仮初の見立てだとはわかっています。 けれど《呪いの宝石》でも《血塗れの女王》でもない、私は一人の女。 つまり……」「……罪な人。でも愛しい人よ。女は、己を必要とする男に弱いのです」 女はひととき悲しげな、けれど優しい表情を浮かべた。 目を伏せ、それを振り払うと、彼女はPC1の胸に手を当てる。そして美しく、凛として命じた。「さあ、お征きなさい。《英雄よ(ヒーロー)》!」 君の胸から光が溢れ出す。 PC1は目を覚ます。そして…!!【状況2】
「まったく、とんだ失敗作だ! せっかく『最後の妻も殺したことにしてあげたのに』!」「やり直せる世界をくれてやったというのに、こンの恩知らずの駄作め! そんなに罰が欲しいなら、お望み通り白紙に戻してやりますよぉ!」 クロウリーの叫びと同時、城の上空にポータルが開き、凄まじい揺れが周囲を襲う。「さあ、消えろ青ひげ!」 しかしその瞬間、城の頂き、尖塔の小部屋から眩い光が迸る。 それを見たアレイスター・クロウリーは目を丸くした。「な、なんだ!? あなた、何を!」 その輝きを目にし、青髭は狂ったように高らかと笑った。「ああ! そうだ! ようやくか! 呪いのダイヤよ、殺戮の女王よ!」「そうだ、呪え! 強欲と放蕩の散財に身を委ね、貴様を手にしたのはこの青髭だ! 貴様の所有者はこのおれだ! おれを裁け! おれを呪え! おれを殺せ! 我が〈最後の妻〉よ!!!!」 その絶叫と同時、天を覆う雨雲から稲妻がほとばしり、ひときわ眩い閃光が、城の頂きの小部屋を貫いた。 尖塔は崩れ落ちながら、一直線に、青髭目掛けて落下する!【エンドチェック】
□チャレンジ判定を終えた【解説】
アレイスター・クロウリーの悪意、青ひげの目的、そしてホープ・ダイヤモンドの呪いが発動するシーン。 ホープ・ダイヤモンドの呪いは、周囲に無差別に不幸を撒きちらすようなものだと考えれば良い。青ひげは気づいていないが、彼女は呪いごと自らを求め、妻と見立てた青ひげに対し好意を抱いている。しかし周囲に無差別に呪いを撒き散らすことしか出来ない彼女では彼の力になることが出来ない為、ヒーローたちの介入を望んだのだ。 かくして、この物語には、介入を許された三人の英雄が生まれた。傲慢、冒涜、呪いに満ちた物語を、君たちの手で書き換える時は今だ!【決戦:Nein】
【状況1】
PCたちの攻撃により、尖塔は砕け散り、その中から七人の女のマネキンが飛び散る。 それと共に転がり落ちてきたホープ・ダイヤモンドを目にし、クロウリーが息を呑み目を剥いた。「貴ッ様…! なんっちゅーおぞましいものに手を出しやがったのですか、この野郎! そんな呪いの塊をワタシに向けるんじゃあない! いや! それよりも!」 彼は集まったPCたちや、周囲に散らばる惨状を見て頭を掻きむしる。「あ”あ”あ”あ”あ”こンの疫病神! いいでしょうこの分からずやッ! あなたがそれほど罰を望むなら与えてやりますよ、他ならぬこの創造主様がねェーッ!」 その叫びと共に、青髭の体に青白い光が現れる。それはページに文字を書き加えるように、彼の体に魔法陣を描き出した。 理性を失った青髭の絶叫が迸り、周囲でくずおれていたマネキンたちが、腐り果てた本物の死体へと形を変え、ひとりでに立ち上がりはじめる。 その女の亡骸は、何も映さぬ濁った瞳の中、断罪するように青髭を映していた。【戦闘情報】
【エネミー】
・青ひげ×1・アレイスター・クロウリー×1・殺された女たち×7【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:アレイスター・クロウリー エリア3:青ひげ、殺された女たち×7【勝敗条件】
勝利:エネミーの全滅敗北:PCの全滅【備考】
・エリア1〜4にいるキャラクターには、ラウンド開始時にランダムで『ホープ・ダイヤモンドの呪い』が発動する。■『ホープ・ダイヤモンドの呪い』
エリア1〜4にいるキャラクターいずれか1体にランダムで発動する。 目標となったキャラクターは〈生存〉で判定を行う。 この判定に失敗したキャラクターは、全てのエナジーを1d6点失う。──望む望まざるとに関わらず、彼女の呪いは全てを巻き込む。■ヘンチマン:殺された女たち
【エナジー】ライフ:3 サニティ:2 クレジット:2
【能力値・技能値】
【肉体】20 技能値なし 【精神】4 技能値なし 【環境】4 技能値なし【移動適正】地上
【パワー】
■死の接吻属性:攻撃 タイミング:行動 判定:なし射程:1 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は〈生存〉で判定を行う。この判定に失敗した時、1d6点のダメージと[毒2]を受ける。──死んだ女が絡みつき、呪いの口づけを送る。■ボス:青ひげ
【エナジー】ライフ:70 サニティ:50 クレジット:100
【能力値・技能値】
【肉体】25 白兵70% 射撃70% 運動70% 【精神】35 霊能85% 【環境】80 経済100%【移動適正】地上
【パワー】
■小さな鍵の小部屋属性:妨害 タイミング:特殊 判定:なし射程:3 目標:1エリア 代償:クレジット20効果:行動順ロール直後に使用できる。目標のエリアに、そのラウンドの間「封印結界:生存」を付与する。ラウンド終了時、この封印結界は解除される。──その鍵穴に挿れたら回せばいい。【シナリオの結末(一例)】
【PC1の結末】
無事に宝石は取り戻され、当日を迎える。 現れたモリアーティは高らかと笑う。「おやおや、殺戮の女王の手を取りに参上したはずが、無粋な邪魔者がいるようだ。 いいだろう、私と君と、どちらが彼女の寵愛を受けるに相応しいか。今宵審判を下すとしよう!」 かくして君とモリアーティの戦いの火蓋は切って落とされる。どちらが勝ったのか、ホープ・ダイヤモンドがどうなったのか、好きに演出して構わない。【PC2の結末】
君は無事に女の依頼を達成した。 あの女は一体何者だったのか? ホープ・ダイヤモンドの呪いは実在したのか? 考える夜更け。君の元に再びあの女が姿を現した。「ご存知かしら? わたし(ホープ・ダイヤモンド)は、最初はもっと大きかったのよ」「働きには報酬を。英傑には称賛を。あなたの優しさに敬意と感謝を。……ごめんなさいね、私が差し上げられるものは、やはりこれしかないのです」「その欠片にどんな物語を与えるのか、それはあなた次第」「しあわせにおなりなさい」 女は消える。そして女がいたはずの場所には、小さな、けれど美しいダイヤモンドが置かれていた。【PC3の結末】
(青ひげにトドメを刺した場合) 雨は止んだ。「これでいい、これでいいのだ」 末期、わずかな理性を取り戻した青ひげは、PCへと礼を言う。「我が城は、その中の財宝は、君に譲ろう。なに、物語の顛末と同じことだ。誰も咎めまい──」「私を止めてくれてありがとう。これでようやく、めでたし、めでたし、だ…」 青ひげはそう言うと息を引き取り、その亡骸を消滅させる。 彼の残した城や、城に残った財宝は、PCたちの好きにして構わない。【シナリオ経験点】
事前グリット…3点クエリーグリット…3点リマークグリット…3点(想定)--------------------------------------------------=合計:9点