貪る荼枳尼
貪る荼枳尼
── 嘆く声 其は我が肉 血潮は我が心
【エントリー1】
君は旧世代の連続殺人犯を捕まえ、警察へと引き渡したヒーローだ。 自宅の冷蔵庫に大量の臓物を蓄えた男は、それは荼枳尼への供物なのだと証言した後、取り調べ中に不審な発狂を遂げた。 刑事からの非公式な依頼を受け、君は教団『マンダラ』の調査へ乗り出すことになる。【エントリー2】
『やあ、元気?』 最近会ってなかった友人が、久々に君へ連絡を入れてきた。 と思ったら宗教の勧誘だった。【エントリー3】
君は傾きかけた神社の中で、小さな白い狐がめそめそと泣いているのを見かける。「ここまでやる気はなかったんじゃぁ〜! どうしよぉ〜!」【エントリー1:狂信と供物】
【状況1】
君はとある連続殺人事件を解決したヒーローだ。 犯人は通り魔的に殺人を行い、被害者の内臓を持ち去っていた。 君は調査の末、犯人を捕えることに成功した。犯人は旧世代の一般人だった。 以後の捜査は警察の手に委ねられたのだが、翌日、ダニーという刑事が君を犯人の自宅へ呼び出す。「よう、来てくれたか。とりあえず中へ入ってくれ」【状況2】
家の中はまだ捜査中らしく、テープなどの鑑識の調査の痕跡が多く残っている。 冷蔵庫の中には、犯人が持ち去った被害者の臓器が、日付の書かれた密閉容器の中に保存されていた。 ダニーが君へ告げる。「この件のホシなんだが、取調中に急に発狂し廃人になった」「犯人が最後に証言していたのは『この臓器は荼枳尼(だきに)様への供物なんだ』って話だ。調べによれば、ヤツは『マンダラ』っつー宗教団体にお熱だったらしい」「だが、それきり奴は白目をむいて泡吹いて、あとはアッパラパーさ。件の宗教団体のことは警察でも調べてみるつもりだが……十中八九超人種絡みだ。俺たちだけじゃこの件の調査は不十分に終わるだろう。それで、お前にも動いて欲しいと思ってな」 君はダニー刑事の依頼を受け、この事件について調べる事にした。【エンドチェック】
□宗教団体『マンダラ』について調査することにした【解説】
PC1が宗教団体「マンダラ」の調査に乗り出すシーン。 PC1が捕まえた殺人犯は旧世代なので、本来は警察が一般的な刑事処理を行って終了するはずだった。しかし犯人の背後に超人種がいる可能性が高くなったことから、ダニー刑事は既存の警察組織だけでは真相に辿り着けないと判断し、ヒーローであるPCへと非公式に調査を依頼する。 マンダラと殺人犯の関係や、犯人の変死については、この時点では一般には公表されていない情報である。【エントリー2:再会、ところが】
【状況1】
君の元に電話が入る。『やあ、久しぶり。元気してた?』 古い友人が、久々に君へ連絡を入れてきた。 身辺に変化があり、最近キミの住んでいる街の近くに引越してきたようだ。『ひさびさに食事でもどうかな』 誘いを受けて、君は友人に会いにいくことにした。【状況2】
君は友人と再会し、近場のファミレスへ向かった。 久々に会った友人は、少しやつれているように見える。 互いの近況について簡単に話し合う君たち。 話を聞いて察するが、どうやら友人はセカンド・カラミティで近しい家族を全て喪ったようだ。「だいぶ落ち込んださ。でもようやく、立ち直れてきたんだ。それで心機一転して、こっちに引っ越したんだよ」 友人は憑き物が落ちたように笑いながら、世間話のように切り出した。「ところでお前、マンダラって知ってる?」【エンドチェック】
□友人と再会した□おや? 友人の様子が…?【解説】
PC2が久しぶりに再開した友人から宗教勧誘を受け、マンダラのことを知るシーン。詳しい勧誘を受けるのはクエリーシーンとなる。 友人との関係性については自由に設定して構わない。友人は、若ければ両親や兄妹を、年嵩であれば配偶者や子供を全て失っている。【エントリー3:白狐の泣き言】
【状況1】
君はヒーロー活動の中で、いつもは訪れない山中に足を踏み入れていた。 目的を終え、帰路につく君。慣れない山道を進んでいると、森の向こうから誰かのすすり泣くような声が聞こえてきた。 遭難者でもいるのかもしれない。様子を見に行ってみよう。【状況2】
森の奥には、すっかり放置されて久しい荒れ果てた神社があった。泣き声はその中から聞こえてくるようだ。 社の隙間から中を覗き込めば、そこには……。「うええ〜んここまでやる気はなかったんじゃぁ〜! どうしよぉ〜! どうしよぉ〜!!」「嫌じゃーッ、人の子になど討たれとうないーッ!」 頭を抱えて丸くなる、小さな白狐の姿があった。【エンドチェック】
□白狐と出会った【解説】
PC3がマンダラの創設者である白狐と出会うシーン。詳しい情報はクエリーで明かされる。 この白狐は神社の本尊である稲荷狐だが、長年の忘却と信仰の喪失によって力を失い、か弱い小狐のような姿になっている。簡単な変化の術ぐらいしか出来ない、か弱い妖怪(神様)だ。【クエリー1:救いはどこにある】
【状況1】
友人は君に、彼が参加している『マンダラ』なるグループについて熱心に話した。「まあ、ちょっとした集まりだよ。社会人の部活動とか、サークルみたいな感じ? うん、ほんと大したもんじゃなくてさ。みんなで集まって、心身をデトックスするんだ。ほら、辛いこととか悲しいこととか、誰かに吐き出したり共感したりしてもらえるとすっきりするだろう? で、感謝の心とか、誠意とかみたいな、大人になると忘れちまいそうになる人として当たり前のことを導師さまの説法を聞いて改めて思い出すんだ」「ああ、導師さまっていうのはマンダラの立ち上げ人みたいなひとでさ。もとは京都のどこそこのお寺のお坊さんだったんだって。でもほら、今って色々大変な時期だろ? それでマンダラを立ち上げたんだって、慈悲深いことだよ。不思議な方さ、聖なる人っていうのはみんなそうなのかもだけど、あの人と話してると心の中の重いものがスーッと消えていくんだ」「宗教? いやいやいや、そういうんじゃないよ。俺たちに寄り添ってくれる居場所みたいな感じさ。強引なお布施とかもない、いやまあこういうのは気持ちだから否定もしないけどさ、まあとにかく金儲けのための組織じゃなくて、これは導師さまの受け売りだけど、まさに魂に救いを与えてくれる場所っていうか」 聞けば聞くほど、そのマンダラという組織は胡散臭いように思える。「今度、集まりがあるんだ。お前も一緒に行ってみないか?」 熱心に宗教勧誘を続ける友人に、君は何と言うだろう。【状況2(PCがマンダラに否定的な場合を想定)】
「何でそんなこと言うんだ? これを信じて、俺が救われてるならそれで良いじゃないか!」 友人は君に腹を立て、立ち去ってしまう。「お前が救ってくれるわけじゃない」 最後に吐き捨てられた言葉が虚しく響いた。【エンドチェック】
□友人の言葉に答えた□グリットを1点得た【解説】
PC2が本格的にマンダラの勧誘を受けるシーン。 セリフが長いので一気に出すか、PCとやりとりとしながら情報を出していくと良いだろう。 状況2は否定的な場合を想定しているが、PC2が友人の信仰に肯定的である場合は、満足げに語り終え、マンダラの場所を教える。あるいは共に集まりに行こうと誘ってくるだろう。【クエリー2:お狐様の懺悔】
【状況1】
君の存在に気付くと、白狐はヒィ!と悲鳴をあげ、崩れかけた祭壇の裏で尻尾を抱えて丸くなってしまう。「あああ! もう! もうヒーローが討伐に来おった! おしまいじゃ! ワシ悪いことしてな、いやちょっとはしたけどでも、そんなに悪いことはしてないんじゃ! お助けーっ!!」 後ろ暗いことがあるのか、すっかり怯えきっている白狐。 詳しく話を聞いてみる必要がありそうだ。【状況2】
「出来心だったんじゃ……ちょっと信仰とお賽銭とお揚げが欲しかっただけなんじゃよ……」 白狐は事情を説明する。 信仰を取り戻すため、白狐は人間に扮して、自身を本尊とする宗教団体「マンダラ」を立ち上げた。しかしなかなか信者が集まらず困っていたところ、とある男が力を貸そうと接触してきた。 しかし男は徐々にマンダラを乗っ取ってしまい、白狐の意図と外れた扇動をし始めた。信徒の信仰も過激化し、先日はついに、信徒の中に教団のために人殺しをした者がいたことまで発覚した。 今や白狐は名前だけの本尊となってしまった。しかし間違いなく、始めたのは自分なのだと狐は怯える。「ワシ、ワシ、ヴィランとして討伐されてしまうんじゃろか……」 べそをかく白狐に、君は何と言うだろう。【エンドチェック】
□白狐の問いかけに答えた□グリットを1点得た【解説】
悪いことをするともっと悪いやつに目をつけられる。 接触してきた男(=葬送法師)のことを、この時点での白狐は顔や詳細を思い出せなくなっている。葬送法師に術をかけられており、妨害されている為だ。白狐はそのことに自覚的であり、相手は強力な妖怪に違いないと相手にも怯えている。【チャレンジ1:マンダラへの潜入】
【状況1】
PCたちはそれぞれの状況から、「マンダラ」について調べた。 「マンダラ」はここ1年で急速に信者を増やしており、もともとは荼枳尼天を祀る仏教系団体であったようだが、今はセミナーのような形で幅広い活動を続けているようだ。 活動内容にも不審な点はなく、信者たちの中から行方不明者が多く出ていた。裏で何かをしているのは間違いない。 君たちはマンダラに潜入し、調査することにした。【エンドチェック】
□チャレンジを終えた□導師は葬送法師だ【解説】
マンダラはエントリー1の殺人事件に関しては関与を否定しており、警察も現時点では決定的な証拠を得られずにいる。警察だけで調査を行ったとしても、葬送法師の術に惑わされ、地下にたどり着くことはできない。 PCの判定結果によってルートは分岐するが、どこかのタイミングで合流シーンを作るとこの後の流れがスムーズだろう。おすすめは地下室を発見して降りていくタイミングだ。【クエリー3:歪んだ慈悲】
【状況1】
葬送法師はPCへ、特にPC1へ視線を向けながら問いかける。「先にお伝えしたとおり、其奴らは自ら望んでここに来たのです。これは彼らにとっては穢れた身を濯ぐための修行。ならばその身を受け取った拙僧が、どのように扱おうと自由でございましょう」 欺瞞に満ちた言葉だ。そうなるよう人々に思い込ませたのは間違いなくこの男なのだから。【状況2】
反論は葬送法師も想定通りだったのだろう。「ま、そうなりましょうな」とあっさりと己の非を認めた葬送法師は、なおも言い募った。「この施設はいわば、我々妖怪にとっての牧場でございます。畏敬の念を集めた後、信仰が冒涜され裏切られる恐怖を効率よく搾取するための。天然モノには劣りますが、養殖には養殖なりの需要というものがございます故」「あなた方も食らう用の家畜と野生の獣は区別なさるでしょう? 線引きは双方の為でもございます。それともこれにもご不満が?」 側で呻く人間の小腸を抜き取り、葬送法師はそれをパクリとつまむ。 異なる道理を生きる妖怪の主張に、君は何と返すだろうか?【エンドチェック】
□葬送法師の問いかけに答えた□グリットを1点得た【解説】
人間から効率よく恐怖を回収するため、葬送法師はいくらかの計画を並行させている。その中の一つがこの「マンダラ」による人間の家畜化・愛玩動物化だ。宗教という依存先で安心を与え思考停止させた後、それを覆すことで恐怖を生み出すという手法である。【チャレンジ2:生血啜り肝を食め】
【状況1】
「ああ〜、実に傲慢。まこと救えぬ、欲深い魂たちであることだ」 君たちの言葉を聞き届け、葬送法師は一つ柏手を打つ。 その瞬間、周囲の信徒たちの目が一斉に君へ向けられた。「マ、もとより長くは続かぬと思っていた試しの場。明かされた以上は長居は無用、拙僧も撤収するといたしましょう。彼らの始末はお任せいたします」 操られている彼らは、いずれもただの人間だ…!【状況2】
信者たちを押し付け、その隙に撤収しようとする葬送法師。 しかし、そこに女の声が割って入った。「コソコソと何かをしてると思ったら、こんなことやってたのかい葬送法師」 リンと鈴の音が鳴り、生臭い獣臭がどこからともなく漂ってくる。「撤収? ヌルいこと言ってんじゃないよ。いい機会だ、ヒーローどもも集まった信者どもも、全員まとめて血祭りにあげてやる!」 現れたのは百寄夜會の頭目・カシャネコ! カシャネコの出現と命令に、葬送法師は困ったように頭を掻いた。しかし結局はその言葉を受け入れたようで、恭しくカシャネコへと頭を垂れ、甘い言葉を囁いた。「おお、可愛い私の夜叉……畏まりました。全て貴女の仰せのままに」【エンドチェック】
□チャレンジを終えた【解説】
葬送法師の牧場は、カシャネコにとっては気に食わない手法でもある(「束の間だろうと奴らに安寧などくれてやりたくはない!」)。葬送法師はこの計画をカシャネコに黙って進めていた。いわば私腹を肥やしていた形だ。 ヒーローの襲来により、カシャネコにもそれがバレてしまったので、葬送法師は撤収を諦めてカシャネコの意に従う。【クエリー4:救いなき世界】
【状況1】
いつの間にか周囲は夜となっており、空には月が登っていた。 瓦礫の上にぴょんと飛び乗りながら、カシャネコがヒーローたちを嘲笑う。「守ったつもりか? 助けたつもりか? バカバカしい!」「そいつらは稲荷でも、葬送法師でも、お前らでも、助けてもらえりゃ何でも良いんだよ!」 君たちが助けた人々を指し、カシャネコは悪辣な罵りを向ける。「お前らが一丁前にそいつらを助けた所で、その場だけ都合よく感謝されてあとはポイさ。ここを凌いで、また違う所で酷い目にあった時、そいつらは口を揃えてこう言うぞ。『どうして今度は助けてくれなかったの!』ってな!」「命を救おうとも、心までもを救えるものか! 救いなんて、どうせ此の世にゃ存在しない。それならここで楽にしてやった方がよっぽどましだ、そいつらの腸(はらわた)と引き換えにな! きゃーはははは!!」 救いを求める人々を見下し、嘲笑う邪悪な化け猫。 その言葉に、君たちは何と答えよう?【エンドチェック】
□カシャネコの問いに答えた□グリットを1点得た【解説】
信仰に対するカシャネコのクエリー。 ヒーローたちがここで信者たちの命を助けても、信仰に縋るに至った信者たちの心は救えないとカシャネコは罵る。その主張に対し、ヒーローたちはどう答えるか? というクエリーだ。 ヒーローそれぞれの理念や回答が想定されるだろうが、少なくとも、騙された末の死を肯定することにはならないはずだ。その啖呵を以て、決戦フェイズへ移ろう。【決戦:貪る荼枳尼】
【状況1】
猛るカシャネコの背後で、むくむくと影が巨大化していく。月をも飲み込み、ぎろりと巨大な目が君たちを見下ろして、ニヤリと三日月に歪められた。 カシャネコの背後、葬送法師が扇動するように朗々と言葉を放つ。「鬼と呼べ、夜叉と呼べや、其れこそ我らが定め。命とは喰らうもの、何にも代え難き供物なり」「欲深き者どもよ、愚鈍なる衆生どもよ。穢土の糧と成り果てよ。……さあ、阿鼻叫喚の中で朽ちて逝け!」 言葉に応じるように、周囲に人魂が灯り始める。 つんざくような化け猫の咆哮が、戦いの火蓋を切って落とした。【戦闘情報】
【エネミー】
・カシャネコ・葬送法師・人魂×3【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:葬送法師 エリア3:カシャネコ、人魂×3【勝敗条件】
勝利条件:エネミーの全滅敗北条件:PCの全滅【シナリオの結末(一例)】
【PC3】
戦いは終わった。妖怪たちは退けられ、後に残るのはマンダラであった施設の成れの果てと、呆然とする救出された信者たち。 民衆の中から白狐が駆け出し、君の元へとやってくる。「PC3殿! お見事でございます! なんと感謝を申し上げれば良いものか!」「……けれども、この人の子らは……ああ、なんと……ワシはなんと酷いことをしてしまったのじゃろう」「ワシに出来る償いはあるのじゃろうか……何か……何かございませぬか!?」 信者たちを見て、白狐は頭を悩ませながら君へと問いかける。 君は白狐に、どんな言葉を向けるだろうか?【PC1】
戦いは終わり、君はマンダラの真相を突き止めた。 事情を報告されたダニー刑事は君に礼を言う。「やれやれ、妖怪だなんだと言われちゃ、こっちに出来ることはねえな。クソッタレめ。ヒーロー様様だ」「っと、こういう頼り切りの物言いは良くねえな。感謝するぜヒーロー、礼に飯でも奢らせてくれや」 礼を言う刑事。さて、なんと答える?【PC2】
君の友人はマンダラの犠牲になることはなく、事態の真相を知った。 落ち込む友人だったが、事件後、再び君に連絡を入れてくる。「久々に、夢に死んだ家族が出てきたんだ」「何やってるんだって叱られちまったよ」「……もう少し、頑張ってみるよ。話を聞いてくれてありがとう。また……今度は普通に、食事に誘ってもいいか?」 その言葉に、君は……。