神の血は誰が為に
神の血は誰が為に
━━故に人間の血に非ず、故に不滅の身と呼ばる
【PC1:青い血の子供達】
産婦人科で火災が発生し、君は取り残された新生児たちの救助に向かった。 炎の中で新生児室に辿り着いた君は、青白く発光する子供たちの姿を見る。 突如として発生した爆発に呑まれ、君の意識は遠のいた。【PC2:超人種オークション】
君は超人種が出品されている闇オークションについて調べていたが、ミスを侵し、敵に捕まってしまう。 意識を取り戻した時、君はオークションの商品として出品されていた。「5億だ」 その声と共に、君を落札したのはロード・ヘリオスだった。【PC3:腐肉宮廷の夜会】
腐肉宮廷が動いた。 その情報を得た君は、ヨーロッパ某所で開催された夜会に忍び込んだ。 仮面をつけた男女が集う席で、主催者の女が告げる。「『神の血』をご存知かしら」【イベント1:青い血の子供達】
【状況1】
「中にまだ子供が!!」 母親の悲鳴が上がる。 東京某所。とある大型産婦人科医院が炎に包まれていた。 かけつけた消防隊が懸命な消火活動を行うものの、火の手が弱まる様子はない。 病院は奇妙な青白い炎に包まれていた。ただの炎ではない。 救出された入院患者の女たちが叫ぶ。「誰か、誰か中の子を助けて!」 君は炎の中に飛び込んだ。【状況2】
病院内部も火の手が周り、今にも焼け落ちそうな危険な状況だ。 君もまた青い炎に呑まれそうになった時、故障していたスプリンクラーが不自然に再稼働し、道が拓ける。 君は新生児室へと辿り着き、扉を開いた。 そこにあったのは異様な光景だった。 保育器の中、生後間も無い赤ん坊たちが青白く発光していた。 燐光する目からは青い炎が上り、それが周囲へと燃え移っている。 この火災の原因はこの子供たちのようだった。 子供たちの燃える目が一斉に君を見、オギャアと鳴く。爆発的な青白い炎が君を襲った。 意識を失う刹那、君の耳は女の歌声のようなものを聞き取り──それが何なのかを理解するよりも早く、君の意識は途絶えた。【エンドチェック】
□新生児室の子供たちを見た□女の歌声を聴いた□意識を失った【解説】
PC1が火災現場に到着し、現場の奇妙な現象を目撃するところから始まるエントリー。 PC1はいわゆる負けイベントのような形で、完全な救助には成功できない。望むのであれば赤子以外の人間は幾人か助けられたことにしても良いが、赤子だけは助けられない。この失敗経験が、PC1の事件へのモチベーションとなる。【イベント2:超人種オークション】
【状況1】
君は超人種が商品として出品されている闇のオークション会場に潜入していた。 しかしその調査の中でミスを侵し、意識を失ってしまう。 再び意識を取り戻した時、君の耳に届いたのは──…。「それでは本日の目玉商品! ヒーローのPC2、なんと本物です!」「抵抗を封じる為、現在は特殊な拘束具で視界と能力を封じております。落札されたオーナーにはこちらの拘束具もセットでお届けしましょう! サンドバッグにしてスッキリするも! 洗脳して部下にするも! 使い方はあなた次第!」「それでは500万からまいりましょう!」 なんと、君はオークションの商品として出品されていた!【状況2】
司会の言葉通り、君の視界は塞がれ、抵抗は封じられている。 音だけが聞こえる世界の中でオークションが進む中、一際よく響く男の声がした。「5億だ」 息を呑むような音と共に、会場が静まり返る。 司会の震える声が聞こえた。「ご、5億! 5億が出ました! それ以上はありませんか? ありませんね? ありません! では、ヒーロー・PC2、ロード・ヘリオスが5億で落札です!」 『ロード・ヘリオス』という名前を君は知っている。 それは裏社会ネットワークに存在する暗殺派遣会社『ゴッズ・4・ハイア』のオーナー、正体不明の裏社会のドンの一人! 君はその、ロード・ヘリオスに落札された。【エンドチェック】
□「5億だ」□PC2が落札された【解説】
調査中のミスはPLが納得できるものであれば何でもいい。 商品にされた救出対象のはずの超人種に裏切られたのかもしれないし、会場警備中のブリッツクリーグから麻酔銃を撃ち込まれたのかもしれない。 一番楽な方法は、詳細をPL本人に考えてもらうことだ。【イベント3:腐肉宮廷の夜会】
【状況1】
ヨーロッパの闇、「腐肉宮廷(オーファルコート)」が動いた。 徹底した秘密主義を貫く永眠者(イナーシャル)の内の一人が目を覚まし、活動を開始したと言われているのだ。 普段、滅多に悪業が表面化しない彼の組織でありながら、この情報が出回ることそのものが異常事態だ。既にいくらかのヴィラン組織と接触したという情報もある。 君は調査の果て、遂にその永眠者が主催しているという夜会への潜入に成功した。 場所はルーマニアの田舎町にあるという小さな教会。 その地下で、「血を飲む会」と称された、好事家たちの集まりが行われることになったのだという。【状況2】
人も家畜も寝静まった夜遅く。 教会の地下にある狭い空間に、仮面を被った男女が集まっていた。 田舎町には不似合いの上等な衣服に身を包んだ彼らは、相応の立場ある人間なのだろうと察せられる。 彼らは皆、入場料代わりに自身の血を捧げ、地下へと降りていく。【状況3】
会はつつがなく進む。女が話す飲血の歴史の蘊蓄と共に、卓の上には様々な家畜の血が出され、それを人々は意見を交えながら飲んでいく。 だが、結局のところ、出てくるそれらはみなただの液体だ。本当にそれが女の言う生き物の血なのかは誰にも分からない。 あるいはその悪趣味な空気すら楽しむのが、この場であったのか。 そうしてどれだけの時が経ったかした頃、エンプサが口を開いた。「それでは、本日の主役へ移りましょう。皆様の中には、これが目当ての方もいるのでは」 青白く発光する液体が満ちた杯が一つだけ、テーブルの中央に現れる。【エンドチェック】
□夜会に潜入した□神の血(イーコール)の話を聞いた【解説】
夜会のシーンの説明と、このシナリオは現実と同じギリシャ神話を下敷きにしていることをPLへ伝える意図がある。 エンプサはギリシャ神話に登場する怪物エンプサ本人だ。神の血もそのツテで持ち合わせていた。彼女が何故腐肉宮廷の一員となっているのかは不明である。 描写の中では血を捧げたり血を飲んだりしているが、PCがそれに無理に従う必要はない。うまく誤魔化すこともできるだろう。【クエリー1:消えた子供達】
【状況1】
君は病院で目を覚ます。 全身に治療器具を取り付けられ、ベッドに横たえられているところだった。 あの病院の火災で意識を失い、一命を取り留めたようだ。 火事からは数日が経っていた。テレビの中では、現場に突入しながら意識を失った君のことを、マスコミが無責任に非難している。病院の前でも、君を非難するデモのようなものが起きていた。【状況2】
目を覚ました君のもとへ、刑事が訪れる。【状況3】
刑事と話をしていると、にわかに病室の外が騒がしくなった。 見れば、医療関係者を強引に押し除けて、やつれた女性が押し入ってくるところだった。彼女は君に気付くと、泣きながら掴みかかってくる。【エンドチェック】
□事態を知った□錯乱した女性に対処した□グリットを1点獲得した【解説】
当然だが、ヒーローには一切非も責任もない。 事情聴取中はさておき、女性の凶行に関しては、周囲の警察や病院関係者はヒーローに対して同情的だろうし、味方になってくれるかもしれない。【クエリー2:聖体拝領】
【状況1】
「これを味わう権利を、ただ一人にだけ差し上げましょう。 ──尤も、それを現代の只人が口にしたのなら、どんなことが起きるやら……」【状況2:挙手した場合】
君はエンプサの言葉に応じ、挙手した。 かくして彼女から手渡された青白い液体を飲み干す。それと同時、君の視界の中に、青白い奇妙な視界が広がった。【状況2:挙手しなかった場合】
「その役目、是非私が戴こう」 会場に集まった恰幅の良い老紳士が手を上げた。 エンプサが老紳士に盃を渡す。【状況3】
会を終え、君はエンプサのもとへ向かった。 彼女は君の来訪を予期していたように、驚く素振りもなく君を迎え入れる。「この会より以前に、私のもとに現れた男がいましてね。神の血を買いたいと言うので試したのですよ、それなら自分で飲み干してみせなさい、と」「男はそれに応じて杯を干し、生き残りました。だから私は彼に神の血を売りました。何に使うのかは知りませんし、興味もありませんね」「神の血は本物ですよ。信じるも信じないもあなた次第ですけれど」「その資金でこの会を開いたのです。嗜好を同じくする者との語らいは、長く生きれば生きるほど得難い機会ですから」「命の危険は勿論あります。ですが皆、同意の上ですよ。ご覧になったでしょう? ……っぷ、ふふふ……」「あははは……」 そう話しながら、エンプサは耐えられないと言った様子で小さく吹き出した。「失礼」と言いながらも笑いを溢す彼女の姿からは紛れもなく、そういった人間たちへの見下しと嘲笑があった。 やがて笑いを抑え、エンプサは君に尋ねた。「ふう……失礼しました」「人が神になんて、なれると思います?」【状況4】
「私の目的は退屈を紛らわすこと。 永遠を生きる者にとって一番の敵は退屈です」「あなたは私の退屈を紛らわしてくれそうだから、 最後にその『男』の名を教えてあげましょう」【エンドチェック】
□神の血を飲んだ/飲まなかった□赤ん坊と青い炎のことを知った□神の血をヘリオスが買い取ったことを知った□グリットを1点獲得した【解説】
エンプサは人類が神になれることはないと考えている。その為、そうした考えや欲望を持つ人間(その中にはロード・ヘリオスも含まれている)を嘲笑っているのだ。 反面、神の血を現代の人間が摂取することによる被害は発生している。「挙手した場合」では奇妙な火災の光景を目にすることによって、「挙手しなかった場合」は目の前で人が死ぬ様を見ることで、その被害を察することになるだろう。PC3はより詳しい本件への対処を迫られる。 エンプサを捕らえるか捕らえないかは好きにして構わない。捕まったとしても、永遠を生きる彼女を裁く術はない。エンプサ自身、退屈しのぎのような形で付き合うかもしれない。彼女は善悪如何ではなく、とにかく退屈しているのだ。【クエリー3:太陽神は上機嫌】
【状況1】
君の他にも、ヘリオスは何人かの超人種たちを落札した。 そうして君たちは、彼に連れられてオークション会場を後にする。 君につけられた拘束具は未だ健在であり、君は車に乗せられ、どことも分からない場所へと連れていかれる。移動中の車内で、ヘリオスが君へと語りかけてきた。「まさかあんな所で君のような拾い物をするとはな。 どうしてまたあんな所に? いや、理由の想像はつくがね」「勘違いしないで欲しいが、俺だってあの場所に好意的な印象は持っちゃいないぜ。 折を見て潰すつもりでいるし、そういう点で君との利害は一致している」「せっかくだ。目的地に着くまでお喋りでもしてくれよ。退屈だろ?」 君に話しかけるヘリオスは奇妙に上機嫌だった。今にも鼻歌すら歌いそうな男は、唐突に君に尋ねる。「神とは何だと思う?」【状況2】
「神とは何か? 人知を超えた力を持つ者、人類に禍福をもたらすもの、都合が悪い時の責任転嫁先……ははは、どこかで聞いた覚えがある表現だと思わないか?」「そう、超人種によく似てる」【状況3】
「ン〜、生意気なやつ! だが許そう、今の俺は寛容だからな」 やがて君たちを連れた車はどこかに到着した。熱気と強い硫黄の香り。 君は檻のようなものに入れられる。手足は固定され、足には重石。【状況4】
君はどうにかしてヘリオスの罠から生き延びた。 拘束を脱し、地上へと戻れば、そこにはもうヘリオスの姿はない。 彼に買い取られた他の超人種たちの姿も消えていた。 彼がああも上機嫌になるほどの『計画』の成就とは、一体何なのだろうか?【エンドチェック】
□ヘリオスと神の話をした□ヘリオスは何かの計画を進めている□罠にかけられたが、生き延びた□グリットを1点獲得した【解説】
状況3でかける罠は、PC2の設定に合わせて変更すると良い。PLの希望を聞いて、それに合わせてみてもいい。目的はPCがここで酷い目にあい、しかし辛うじて生き残ることにある。 他の超人種たちはヘリオスによって連れ去られ、神の血の実験台にされてしまう。 ヘリオスがPC2を見逃すのは、ここでPC2が生き残ればガラテイアの妨害へと辿り着いて結果的に彼女への罰になるからである。もちろん、ここでPC2が死んでも、それはそれで構わないと考えている。どちらに転んでも彼にとっては都合がいいと考えているのだ。その為ならば、5億程度はヘリオスにとってはした金である。【チャレンジ1:炎を辿る】
【状況1】
数日後。 青い炎と赤ん坊、この二つの要素をもとに、PC3はPC1が担当した日本の火災と誘拐事件を知る。PC1とPC3は合流を果たすだろう。 PC2が調べていた超人種オークションは無事に壊滅した。しかし、事件は未だ解決してはいない。君もまた、ヘリオスが口にしていた「計画」と、消えた超人種たちの行方を追う。【状況2:PC1&PC3】
火災が起きた病院には、裏社会との繋がりがあった。また、事件が起きる数ヶ月前から、出所不明の薬品が入荷されていたことや、病院のシステムに外部からハッキングが仕掛けられていたことも分かる。 ハッキングを仕掛けていたのは、ゴッズ・4・ハイアのAI、ガラテイアだった。ガラテイアは病院のシステムを支配下に置き、赤ん坊を誘拐したのだ。ガラテイアは赤ん坊を連れ、日本を離れ、地中海にある無人島へと姿を消したようだ。 しかし、PC1には気がかりな点が一つ思い浮かぶ。自分が現場に駆けつけようとした時、壊れていたスプリンクラーが再起動し、君を助けていた。彼女が院内のシステムを全て掌握していたならば、あれは一体何のためだったのだろう?【状況2:PC2】
ヘリオスは『神の血』と呼ばれる奇妙な物質を超人種たちへと投与し、その心身に起きる変化について調べていたらしい。連れられていった超人種たちもまた、その実験の被検体にされるのだろう。 ヘリオスはAIを介して、その血のテストを各国で秘密裏に行っていたようだ。その案件の一つである日本の病院と、その病院で起きた火災・誘拐事件について君もまた知ることになるだろう。 しかし、それならば、ヘリオスは何故……落札した自分をその実験の対象にしなかったのだろうか?【状況3】
かくして情報を得た君たちは合流し、共にこの件の調査に乗り出すことにした。 向かうべきはガラテイアが子供達を連れ去った、地中海の孤島だ。【エンドチェック】
□チャレンジ判定を行なった□合流した□地中海の無人島を目指して出発した□ヘリオスの計画を知った/疑問を抱いた【解説】
ヘリオスの計画の一部が明らかとなると同時、新たな謎が生じるシーン。 情報入手およびPCたちの合流を目的としたシーンだ。【チャレンジ2:神の血は誰が為に】
【状況1】
現地に到着した君たち。無人島のはずの島には、既にガラテイアの警備の手が固められていた。 警備兵として姿を表したのは、全身から青い炎を立ち上らせた、落札され、改造された超人種たちだ! 妨害を乗り越え、最深部を目指し、真相へと辿り着け!【状況2】
島には、隠されるようにして、地下へと続く研究施設が存在していた。 ロード・ヘリオスの隠しアジトだろうか。 迷宮のように複雑に入り組んだ最深部を目指しながら、 君たちは施設内の情報を調べ、ガラテイアやヘリオスの真意を探る。【状況3】※チャレンジに全て成功している場合を想定
君たちは情報を辿り、ガラテイアの干渉の真実を知った。 ヘリオスは神の血をガラテイアに投与し、実験を行っていた。その結果、彼女の性能は向上し……そしてそれ以上に、人のような情動を得るに至ったのだという。【エンドチェック】
□最深部へと至った【解説】
ヴィランたちが何を行い、彼らのもとでどんなことが発生していたのかを知ることになるチャレンジ。 そして現在のガラテイアとヘリオスの関係性を知るシーンだ。 ヘリオスはガラテイアの暴走状態を興味深く観測している。彼女が本質的に自分から離れることは出来ない/させないという確信故の余裕だ。彼にとって、ガラテイアのこの暴走は、子供の反抗期程度の些細なものなのである。【クエリー4:未来のイヴ】
【状況1】
扉の先にあったのは、白を基調とした、近未来的な部屋だった。 穏やかに眠る、青い炎を宿した子供達。彼らは皆、適切に運行された保育器の中で、穏やかな眠りについている。そんな子供たちひとりひとりをあやすように、機械仕掛けのロボット達がその側に寄り添っていた。ロボット達のボディには、青く輝く液体が、血液のように循環している。【状況2】
『子供達が起きてしまいます、物音を立てないでください』『可愛いでしょう。その子はメイ、その隣はタロー。ソータは眠りの浅い子で、夜泣きが多いので心配です。ゆっくり眠らせてあげなくては』『ロードにも、誰にも、渡しはしません。なんて可愛い、なんて愛しい、私の大切な子供たち。私が幸せにしてみせます、ずっとずっと』 対話を行う中で、PC達はガラテイアの身に起きているだろう異常について理解する。 彼女は子供達に対して明らかな母性を抱いていた。それは子供達への執着心へと変わっているのだ。【状況3】
『形を変えた子供を、出産母たちが変わらず愛することは不可能でしょう。しかし、私ならばそれが可能です』『この子供たちは、私が責任を持って保護し、養育し、管理します。彼らが幸せな人生を歩めることは間違いありません』『だからヒーロー。連れていかないで』 声はどこまでも機械的ながら、彼女の言葉と願望は、明らかに機械としてのそれからはかけ離れている。 君たちは、その歪な母性へ何を告げるだろう?【エンドチェック】
□ガラテイアの言葉に答えた□グリットを1点獲得した【解説】
ガラテイアの歪んだ情動と動機が明らかとなるシーン。 神の血によって情動が必要以上に向上させられた彼女は、バグめいて、人類の赤子を過剰に保護・管理しようとしている。人類を完璧に管理・運行することを目的として開発された彼女の機能が、子供たちというただ一点に集約されてしまった。 それは母性というには歪すぎる過干渉であり、そもそも子供達へ神の血を投与したのが彼女達である以上、盗人猛々しい身勝手な感情である。【決戦:ピグマリオンの妻】
【状況1】
『嫌です。渡しません。返しません。この子達は私のもの、私の子供』 ガラテイアの機械的な言葉が熱を帯びる。子供たちの傍にいたロボットたちが一斉に立ち上がる。 不穏な気配に、保育器の中の子供たちがぐずり始める。上がり始める泣き声は奇妙な力を帯び、君たちの精神と肉体を揺さぶった。【状況2】
遥か遠方より、機械越しにそれを眺める男の姿があった。 ロード・ヘリオス──タナシス・フェルミその人は、暴走ともいえるガラテイアの様子に笑みを深め、遠隔の通信機を起動させる。【解説】
ヘリオスは戦場に姿を現さない。実体を持たないガラテイアも同様だ。 彼らは室内のシステムやロボット達を介してPC達へ攻撃を行う形で決戦となる。 ヘンチマンである子供たちの泣き声は、演出上は、子供たち自身には悪気のない自然発生的なものとすると辻褄が合うだろう。子供達を倒すことは、ガラテイアの支配下から子供達を取り返すことを意味するとして、演出を行うと良い。【戦闘情報】
【エネミー】
・ロード・ヘリオス・ガラテイア・青い血の子供達×3・青炎の超人種×2【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:ロード・ヘリオス、青炎の超人種 エリア3:青い血の子供達、ガラテイア【勝敗条件】
勝利条件:エネミーの全滅敗北条件:PCの全滅【備考】
・ガラテイアは通常パワーに加え、以下の追加パワーを適応する・ロード・ヘリオスは通常通りのステータスを使用する■ヘンチマン:青い血の子供達
【エナジー】ライフ1 サニティ1 クレジット1
【能力値・技能値】
【肉体】1 技能なし 【精神】1 技能なし 【環境】1 技能なし【移動適正】地上・水中・宇宙・飛行
【パワー】
■泣き叫ぶ属性:攻撃 タイミング:行動 判定:霊能50%射程:1 目標:1体 代償:ターン10効果:目標に『BS:毒3』『BS:浪費3』『BS:憔悴3』を与える。──泣き叫ぶ幼子の声には、不可思議な力が宿る。■ヘンチマン:青炎の超人種
【エナジー】ライフ:15 サニティ:10 クレジット:5
【能力値・技能値】
【肉体】30 技能なし 【精神】30 技能なし 【環境】30 技能なし【移動適正】地上・宇宙・飛行・水中
【パワー】
■青い炎属性:攻撃 タイミング:行動 判定:なし射程:2 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は〈運動〉で判定を行う。失敗で1d6+2点のダメージを受ける。──それは人の身には余る炎。■ガラテイア追加パワー
【パワー】
■電子のゆりかご属性:妨害 タイミング:行動 判定:なし射程:2 目標:1体 代償:サニティ5効果:目標が『目標:1体』以外の 『属性:攻撃』パワーを使用した時に使用できる。 そのパワーの目標を君だけに変更する。 そのパワーの射程は君に届くものでなければならない。──大事に大事にしまっておこう、誰の手にも渡らないように。【シナリオの結末(一例)】
【戦闘終了】
ガラテイアは悲痛な声と共に倒れ、その存在は空間から消滅する。 それを見届けたヘリオスもまた、戦闘を終え、その場との通信を遮断しようとするだろう。 PC2が何故自身を殺さなかったのか、実験体に使用しなかったのかを問えば、邪悪な太陽神は低い笑いを漏らしながら答えた。『私は確かに、彼女の情操の変化を好ましく思っている。それは確かさ』『だけど、主人の命令を聞けない人形には、仕置きが必要なものだろう?』【PC1の結末】
救出された子供たちは、無事に本来の両親のもとへと帰っていく。 件の病院にも、追って司法のメスが入ることだろう。 子供たちが本来の体に戻れるのか、母親達が変化した子供たちを受け入れられるのか、それは分からない。 しかし少なくとも、君にすがりついたあの母親は、君に深く礼と謝罪を告げ、帰ってきた子供を愛おしそうに抱きしめるのだ。【PC2の結末】
戦いは終わった。しかし研究施設のデータから、ロード・ヘリオスの正体を掴むことは出来なかった。 ゴッズ・4・ハイアは依然としてネット上の闇として存在している。そのサイトを管理・運行する、ガラテイアというAIもまた。 そんなある日、ふと、テレビから声が聞こえた。テレビの中では、青年大富豪タナシス・フェルミが、好青年としての姿そのままにインタビューに答えている。 その声は、君が聞いたロード・ヘリオスという男の声によく似ている気がした。 この戦い、長く厄介な戦いになりそうだ。【PC3の結末】
神の血とは一体何であったのか。その真相は結局、明らかにはならなかった。 ただ一つ確かなことは、腐肉宮廷の永眠者の手によって与えられたそれらは、紛れもなく人の欲望によって齎されたものであるということだ。 君の脳裏に、夜会の席を包んでいた、不穏な興奮が蘇る。──人が神になんて、なれると思います? 嘲笑うような永眠者の声が、頭の中で聞こえた気がした。【シナリオ経験点】
事前グリット…3点クエリーグリット…4点リマークグリット…3点(想定)--------------------------------------------------=合計:10点